アジアは、人口の高齢化が進み、富裕層が増加して、新たな成長のチャンスが生まれています。国連は、アジアの60歳以上の人口が2050年には1億人を突破すると予想しています。このような状況を背景に、アジアの購買力は増大し、より高品質の医療システムへの需要が喚起されると考えられます。拡大するアジア市場は、医療技術企業にとって、新開地、新しい地域へ進出するチャンスを提供する窓口なのです。
一方、医療費は世界、特に西洋諸国で急増しています。この現状は、政府、企業および個人からも注目されています。人口の高齢化、非効率的な病院経営システム、医療スタッフの不足が相まって、今後も医療費は上昇し続けるでしょう。このような課題の中で、アジアは、医療技術企業が現在の医療システムの非効率性を改善できるソリューションを開発するための新しい地盤となっています。
アジア市場進出の信頼の足掛かり
シンガポールは、大手医療技術会社から、アジアをはじめとして世界中に向けて革新的な製品の開発・製造を行うための、信頼できる、競争力の高い土地として認知されています。
シンガポールは、飛行機で片道7時間以内のところにある主要市場とのネットワークが十分に整備されています。さらに、国際的な都市国家のシンガポールは、アジア最高の生活水準とされ、世界と地域の双方から優秀な人材が集まってきます。アルコン、ボストン・サイエンティフィック、エドワーズ・ライフサイエンシズ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ロシュ・ダイアグノスティクス、シーメンズ・メディカルインスツルメンツ、ジマーなど、大手医療技術会社10社以上が、シンガポールに地域本部を開設しています。
世界の優秀な人材を確保
シンガポールに、世界のトップ科学者やビジネス人材を惹きつける力があることはよく知られています。チャールズ・ズコスキ(イリノイ大学アーバナシャンペーン校研究部担当副総長)、キース・カーペンター(イギリス、マンチェスター工科大学、前産業諮問委員会委員)、ジョージ・ラッダ卿(メディカルリサーチカウンシル、前チーフ・エグゼクティブ)、シドニー・ブレナー(ノーベル賞受賞者、ソーク生物学研究所)は、シンガポールの研究機関、協会、研究所を率いるためにシンガポールにやってきた著名な科学者です。現在、シンガポールには世界各地からの2,000人を超える研究者が暮らしています。
シンガポールは、専門職の人々にとって魅力的な環境であり、生活の質では常にアジア最高レベルにランクされ(マーサーHR、ECA インターナショナル)、優れた教育システムを有しています。シンガポールは、その人口の4分の1を外国人が占め、英語が通じ、娯楽やリクリエーションの種類が豊富です。2008年、シンガポールは、シンガポールグランプリ期間中にフォーミュラワンの世界初夜間レースの開催地となりました。今後2年間で、ホテル、会議場、娯楽施設、カジノを1カ所にまとめた総合リゾートを2カ所完成させる予定です。これらのリゾート開発は、ラスベガス・サンズおよびゲンティング・インターナショナルが担当します。また、シンガポールは、地域内で数多くの観光地(例えば、カンボジアのアンコールワット、インドネシアのバリ島、タイのフアヒンやプーケット、中国のシャングリラなど)まで飛行機で片道7時間以内、かつ、接続性が優れているという便利な場所に位置しています。
シンガポールは、次世代の科学者を育てる必要性も認識しています。2001年以降、シンガポールの科学技術研究庁(A*STAR)は、2015年までに世界のトップクラスの大学でシンガポール人の博士課程修了者を1,000人育成しようと、国民奨学金プログラムを開始しました。A*STAR は、現在まで約800人に国民奨学金を付与してきました。
加速する医療技術の革新
革新的なシステムおよびソリューションで地域ならびに世界の医療ニーズに対応しようとする企業に、シンガポールはワンストップのロケーションを提供しています。革新的なアイデア、技術、試験のインフラを確保できるのです。
実際には、企業は公的研究機関の科学者とパートナーを組み、新規のアイデアや技術革新の研究を行うことが可能です。マイクロエレクトロニクス研究所(IME)は、その典型的な一例です。IME は、ワイヤレスおよびセンサーの設計ノウハウを確立し、圧力センサー、加速度計、ブルートゥース、無線自動識別装置(RFID)および通信機器用超広帯域などの開発で企業と協力しています。
企業は、このようなアイデアを商品化する過程で、IC 設計、ソフトウェア開発から試作品の製造にいたるまでのエンジニアリング・製造サービスを利用することができるのです。
医療技術企業は、自社の革新的システムおよびソリューションを試験するために、病院と連携することも可能です。シンガポールはアジアの縮図として、地域および世界の市場向けの新しいソリューションやシステムの試験・開発のための理想的な基地を企業に提供しています。
医療機器の世界大手企業は、R&D 事業でシンガポールに投資を行っています。そのうち、フルイダイムとヒルロムは、それぞれ研究用器具や病院ベッド用電子システムのアジア初の R&D 施設をシンガポールに建設しました。さらに、キアゲンは、バイオ*ワン・キャピタルとのパートナーシップで、シンガポールに分子診断学の R&D センターを開設しました。パーキンエルマーは、アジア向け研究用器具および診断の R&D 基地として、自社の研究センターをオープンしました。
プラグ・アンド・プレイの R&D キャンパス
バイオポリスは、シンガポールにおける R&D 成功の証です。公共部門の研究機関と企業の研究室が同一の敷地内にあり、一つ屋根の下で研究機関や企業組織が協力する風土を培っていけるよう計画されたものです。研究者は、最先端の設備、科学的インフラ、特別なサービスを利用することができます。その結果、企業は R&D 費用の大幅削減と開発スケジュールの迅速化が実現できます。さらに、会議設備と会議室があり、企業はこれらを利用することができます。
研究者の間で活発な意見交換ができるよう、「仕事、生活、娯楽」の環境を生み出すカフェ、ショップ、娯楽設備が施設の中に配置されています。バイオポリスは面積が約24万平方メールあり、ほとんど全部のスペースが入居済みです。第3期の建設は、2008年4月に始まりました。これが完成すると、生物医科学の R&D 用地が2009年初に4.4万平米増えることになります。
2008年10月、物理化学および工学分野を専門に研究するシンガポール公共部門の研究機関が入っているフュージョノポリスが、正式にオープンしました。フュージョノポリスは、ワン・ノース内のバイオポリスに隣接し、生物医科学企業や研究機関とともに学際的な研究を進めることになっています。これにより、シンガポールの医療技術の革新能力がさらに強化されると考えられます。
世界的な重要製造拠点
今日、国際的な医療技術企業30社がシンガポール商業規模な製造工場に投資をしています。そこでは、コンタクトレンズ、分析機器、埋め込み型機器、注射器、ステント、カテーテル、補聴器、研究用器具などさまざまな医療製品を開発・製造しています。研究用器具および診断用器具では、シンガポールは、世界のDNA マイクロアレイの70%、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)器具の世界需要の50%を供給する製造拠点の一つとなっています。
シンガポールは、知的財産について優れた保護策を掲げてそれを実施しており、投資企業に対して、プロセス開発および外注製造で信頼できる継続サポートを保証しています。製造企業は、シンガポールの世界的なロジスティクス能力、ネットワーク、自由貿易協定の包括的ネットワーク、競争力の高い税制を背景に、事業費用競争力の強化およびアジア太平洋市場への事業拡大を達成できる好立地で事業を行うことができるのです。
実際に、企業が電子製品メーカーや精密工学企業へ製造を外注するなら、シンガポールの地元サプライヤーの能力とノウハウがあります。これらのサプライヤーは、米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品審査庁(EMEA)の定める厳格な知的所有権の保護基準や規制要件を遵守しています。また、ISO13485認証を受けており、大手医療技術企業の中で十分な実績を挙げています。能力面では、電子製品の構想・製造およびサプライチェーン・マネジメント、プラスチック部品の成型、金属の成型および鋳造、セラミクス、表面処理、洗浄、パッケージング、消毒を行うことが可能です。
シンガポールで商業ベースの製造設備を設立した大手医療技術企業として、アフィメトリックス、バクスター、ベクトン・ディッキンソン、バイオ・ラッド、バイオセンサーズ、チバビジョン、エドワーズ・ライフサイエンシズ、フリューダイム、ジェイ・エム・エス、MDS サイエックス、パーキンエルマー、シーメンズ・メディカルインスツルメンツ、ウォーターズ、ウェストファーマがあります。
戦略的パートナーシップの構築
シンガポールは、地域および世界の市場向けに革新的な製品およびソリューションを設計、開発、試験、発売するにはアジアにおいて理想的なロケーションです。生物医科学の製造および R&D において、十分な実績と基盤を確立しています。シンガポールは国際都市であり、英語(科学の言語)を共通語として使い、アジアの中心ともいう戦略的な位置にあります。さらに、シンガポールは主要な地域市場とうまく結ばれており、国民は中国人、インド人、マレー人の3つの主要アジア民族で構成されています。地理的特徴と社会文化的な特徴以外に、シンガポールは公共部門の研究機関、大手製薬およびバイオテクノロジー、IT、エレクトロニクス企業ならびに公立病院との多様なパートナーシップ構築の機会を提供しています。
生物工学・ ナノテクノロジー研究所(IBN)および材料工学研究所(IMRE)は、その顕著な一例です。微小水溶性バイオアッセイ ( miniaturised aqueous bioassays) (DropArrayTM) のIBNの革新的技術とIMREの改良型顕微針設計のプラットフォームには、それぞれナノスタート AG およびアジア住友商事が投資を行っています。新製品の試験には、インテルがチャンギ・ゼネラル・ホスピタルとパートナーシップを組み、自社のモバイル・クリニカル・アシスタントという、多忙な介護人に患者の容態とテスト結果を知らせる軽量移動型機器を開発しています。
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