医療

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医療機関 業界概要

世界水準の医療ハブ

優れた医療を提供する強力なファンダメンタルズが整ったシンガポールは、世界第4位を誇る医療インフラを備えています(出展:国際経営開発研究所IMD刊『世界競争力レポート2010』)。医療保健歳出はGDPの4%未満ながら、シンガポールは国民健康保険制度を導入、あらゆる保健サポートを提供し、その医療水準は世界最高レベルと評価されています。国際医療水準認証機関ジョイントコミッション・インターナショナル(JCI)の認証を受けたシンガポールの医療機関は11の病院と3つの医療センターにのぼります。

シンガポール保健省(MOH)は医療制度の見直しを行い、患者に総合的な医療を提供する統合医療モデルを再構築しました。これは一次医療、二次・三次医療や急性期医療、慢性期医療・介護分野に従事する地域医療機関や、患者本位の介護支援サービスを主体とする6領域の医療制度に分かれています。統合医療の推進を目指して設立された医療グループには、北部のクー・テク・プアット病院を主体とするアレクサンドラ・ヘルス、東部のチャンギ総合病院を主体とするイースタン・ヘルス・アライアンス、中部のタン・トクセン病院を主体とするナショナル・ヘルスケア・グループ、国立大学病院を主体とする国立大学ヘルスシステム、西部に開設されるジュロン総合病院を主体としたジュロン・ヘルス、そしてシンガポール総合病院主体のシング・ヘルスなどが含まれます。統合ケア機関AICは、特定の医療サービスから異なる医療サービスへの患者の移送を、国家レベルで円滑に進めることを目的として設立されました。保健省が開発に取り組む全国統一の電子カルテシステム「National Electronic Health Records」がAICの活動をサポートしています。

包括的なサービス

公立病院、私立病院、専門医療センターから成るシンガポールの医療機関は、基礎的な健康診断から口腔外科、超高度医療に至るまで、包括的な臨床サービスを提供します。

質の高い医療サービス機関

シンガポールの主だった公立病院としてナショナル・ヘルスケア・グループ(National Healthcare Group)などが、そして私立病院としてはパークウェイグループ、ラッフルズ・メディカル・グループ、トムソン・メディカルなどがあります。 また、ジョイント・コミッション・インターナショナル、IMSヘルスアジア、インターナショナルSOS、フォルティス・ヘルスケア・インターナショナル、国際糖尿病学会議(IDF)、医療情報管理システム学会(HIMSS)など著名な医療機関が、アジア事業の展開に向けて地域本部または国際本部をシンガポールに設立しています。

優位性

アジアの医療ビジネス市場を把握する最適地

企業に有利なビジネス環境、アジアとの近接性、豊かな人材基盤、生物医科学産業の強力な連携システムといった利点を活かし、アジアに点在する医療ビジネス市場を理解して地域へ事業展開する玄関口となるのがシンガポールです。

革新的医療ソリューションの推進と展開

世界中に広がる医療システムのコスト増大と非効率性に対処するため、シンガポールはイノベーションの推進に力を注いでいます。水準の高い医療を適正な費用で提供し、人口の高齢化対策に取り組むことを目標に掲げた総合的な医療アプローチを採り入れることで、臨床成果の向上、医療制度の費用効率と運用効果の改善を可能にするイノベーションの推進を目指しています。

ヘルス・ウェルネス推進室(HWPO)

シンガポールはEDBと保健省の共同プログラム「ヘルス・ウェルネス推進室」(HWPO)を通して、医療サービス企業向けにプラットフォームを開発しました。シンガポールの医療サービス関連企業はこのプラットフォームを利用してITシステム、医療機器、医薬品、栄養食品、日用品といった異業種の企業と連携し、新製品やソリューション、ビジネスモデルの開発や試験に取り組むことができます。また、生体医科学の基礎研究とトランスレーショナル臨床研究の堅固な基盤や、科学・医療における優れた実績を有効利用することが可能になりました。アジアの縮図でもあるシンガポールは、アジア太平洋地域や国際市場向けの新しい医療ソリューションやシステムのデザイン、開発、実証、導入のための進出拠点として理想的といえるでしょう。

連携企業パートナーの強固な拠点

シンガポールは科学・臨床医学において優れた実績を築いてきました。様々な公的研究機関や国際企業の拠点であるという利点を活かして、医療サービス企業が革新的な医療ソリューションやシステム開発を行い、実証するための戦略的な連携体制を提供することができるのです。

ワン・ノース

住・働・学・遊のインフラ

シンガポールが知識・技術革新集約型経済へと発展したことを象徴するのがワン・ノースです。 生活・仕事・学習の場であり、世界中から集まる一流の科学者、研究者、ハイテク起業家らの刺激を受ける研究、技術革新、実証のための活気あふれるホットスポットです。

ワン・ノースは3つの目的、すなわちバイオポリス(バイオメディカル研究開発施設)、フュージョノポリス(情報通信、メディア、科学・エンジニアリング各産業の研究開発専用施設)、メディアポリス(必要な設備を完備したデジタル・メディア・クラスター)に特化した拠点として機能し、主だった公的機関や民間研究施設が入居しています。

こういった産業の成長はワン・ノースの主要インフラ開発に支えられています。民間研究施設と公的研究機関、三次医療機関や大学が同じ敷地内に入居するワン・ノースでは、施設を共有することによって立ち上げ期間の短縮や、官民の研究者間の連携が促進されます。 バイオポリスは、シンガポールにおける研究開発の成功の証といえるでしょう。公的研究機関と民間企業の研究所が同一の敷地内にあり、一カ所で共に協力する風土を培うことができるよう設計されたものです。 バイオポリスでは科学者、技術系起業家、研究者が出会い、パートナーシップを築き、集約的研究と大学院研修プログラムを通じて名高い科学研究機関とともに成長を遂げています。

研究者たちはバイオポリスの最先端設備や科学的インフラ、専門分野に特化したサービスを利用することができます。結果として企業の研究開発費の大幅削減と開発スケジュールの期間短縮につながります。 また、会議施設や会議室も設けられています。2013年までにバイオポリスは生物医科学の研究開発活動に30万平方メートルを越える敷地を提供しています。

バイオポリスは公立の医療機関・大学医学部があるケント・リッジ・キャンパスに隣接する戦略的な立地にあって、トランスレーショナル・リサーチと臨床研究を推進しています。 ケント・リッジには、ハーバード大学のDaniel Tenen教授率いるシンガポール癌科学研究所(Cancer Science Institute of Singapore)などの専門研究機関が設けられています。 アストラゼネカやバイエル・シェリング・ファーマなどの医薬大手企業がケント・リッジのNational University Health System(国立大学ヘルスシステム)の研究ユニットとパートナーシップを組み、トランスレーショナル癌研究を行っています。

フュージョノポリスは、ワン・ノース初の住・働・学・遊一体型の開発拠点として設立されました。総面積30ヘクタールのフュージョノポリス・クラスターは、情報技術、メディア、物理科学、工学産業の発展に適した環境や設備インフラを導入するために段階的な開発が行われています。最先端のインフラと設備を備えたこの複合施設は、相乗効果を生む共同研究や実験、官民研究機関の連携を促進するための理想的な環境を提供します。

新技術の壮大な実証の場となるフュージョノポリス・フェーズ2Aでは、実験・コンピューター解析用研究室、クリーンルーム、振動感知式テストベッド設備を装備しています。フェーズ2Aはシンガポール最大の研究開発用クリーンルーム施設を目玉とし、2014年の竣工時には103,635平方メートルのビジネスパークと研究開発施設が整備される予定です。

ワン・ノースには、国際市場向けに最高品質のコンテンツを制作するデジタル・メディアの中枢「メディアポリス」が誕生します。
完成時には、デジタル制作、放送施設、双方向デジタル・メディア(IDM)、研究開発拠点などグリーンスクリーン機能を備えたサウンドステージのメディア各種連携システムや、その他多様な施設が整備される予定です。 メディアポリスのITインフラと技術基盤は、高速ブロードバンド接続を利用してデジタル・メディアのコンテンツやサービスを処理、管理、配信するメディア企業にとって魅力的な要素となるでしょう。シンガポール初となるサウンドステージ施設の建設にあたって、メディアポリスの投資・入居・開発には、受賞歴のある地元メディア制作会社インフィニティ・フレームワークス(Infinite Frameworks)が携わっています。

ヘルス・ウェルネス推進室(HWPO)

EDBとMOHによって設立されたHWPOはシンガポールの医療制度上の問題解決を目指し、医療関係者と企業によるソリューションの共同開発と実証を推し進めています。シンガポールの医療制度の向上のみならず、企業がアジアや国際市場に向けたソリューションの開発を促進することができます。この革新的な連携を通して、HWPOはシンガポールを最先端市場の先がけとして確立し、アジアおよび国際市場の満たされていない医療ニーズに対応するソリューションを共同開発、企画、実証することを目指します。

ヘルスケア・イノベーターズ・フォーラム(HIF)

医療関係者間のイノベーション推進を目的として、HWPOは規格生産性革新庁(SPRING Singapore)、シンガポール情報開発局(IDA)、デザイン・シンガポール(DSG)などの公的機関と連携して、医師、病院管理者、政府機関、企業が一堂に会し、シンガポールの医療制度における主要問題とその対策となる潜在的なソリューションを話し合う「ヘルスケア・イノベーターズ・フォーラム(HIF)」を毎年開催しています。

4度目の開催となる2012年HIFは2日間にわたり、約350人の参加者を集めて、開催されました。

医療制度におけるイノベーション促進のための取り組み

シルバーコミュニティ実験プログラム

地方自治開発省(MCYS: Ministry of Community, Youth & Sports)が手がけるシルバーコミュニティ実験プログラムは、企業や公的機関、教育機関が高齢者向けの家庭用介護用品や介護器具の実証試験を行うプラットフォームを提供するものです。実証プロセス促進事業の助成金として2008年(第1回)、2009年(第2回)の公募に対し、総額300万シンガポールドルを拠出しています。2回の公募イベントでは、シニア参加者が介護ロボットやタッチパネル式通信機器、遠隔健康管理システムといった最先端技術を体験する機会もありました。

健康保険・社会保険にまたがる一連のサービスとして、高齢者が今まで暮らしていたコミュニティで暮らし続けられるよう、革新的で低コストのソリューション開発を提案する企業の支援を目的に、2010年7月、MCYSは第3回助成金公募を開始しました。この助成金によって中小企業(SMEs)各社が開業資金を確保し、顧客と連携して高齢者のニーズに応える製品開発と実証試験を行うことができました。

グランド・チャレンジ健康増進委員会(HPB; Health Promotion Board)は2010年、国家プロジェクトとしてグランド・チャレンジの発足に着手しました。

HWPOの支援を受けて肥満・前糖尿病の予防とコントロールのため、参加企業に新たなソリューション開発の提案を求めました。これに対して大手多国籍企業(MNCs)と中小企業(SMEs)の双方がシンガポールの公共医療システム関係者と連携して、この国家プロジェクトとなる重要課題に対処する革新的技術とビジネスモデルの開発と実証を行いました。

スーパープラットフォーム設立

HWPOは革新的な医療ソリューション開発を促進することを目的に、アレクサンドラ・ヘルスとイースタン・ヘルス・アライアンス(EHA)の医療クラスター2社とともに「スーパープラットフォーム」を設立しました。イノベーション専門チームと専用インフラで構成され、一貫した治療の流れの中で新規ソリューションの試作と試験を実施するものです。専門チームは各地域医療システムを活用して、患者数から罹患率の高い疾病を特定し、その対策を立てる企業チームを支援する役割を担っています。そして医療産業のパートナーたちとともに一貫性のある医療全体にわたり、革新的かつ包括的な医療ソリューションの共同開発と実証試験を運営していきます。

2012年11月23日、EHAはイノベーション・センター「CFI」とチャンギ・シミュレーション・インスティチュートを開設しました。CFIは医療提供の革新を推し進めることを目的とし、EHA内の「イノベーション文化」の発展に貢献するとともに、協同して革新的アイデアを開発、促進、そして定着、実施まで推進するイノベーションチームを設けています。さらに重要な機能として、CFIは病気と慢性的な健康障害を予防・管理する技術とサービス、そしてビジネスモデルから成る包括的ソリューションの共同開発能力を備えた企業を取り込むことによって、医師と企業パートナーとの架け橋としての役割を果たしています。

イノベーション・センターとチャンギ・シミュレーション・インスティチュートについて詳しい情報は、こちらをご参照ください。

http://www.easternhealth.sg/Pages/eha-launches-innovation-simulation-hubs-improve-healthcare-delivery.aspx (英語)

シンガポールとの連携による医療イノベーション

企業は様々な戦略や「リビングラボ(生きた実験室)」であるシンガポールを活用して、アジア向けの新しい製品やビジネスモデルの共同開発と実証を行っています。このような活動を行っている企業例をご紹介します。

ヒルロム (Hill-Rom): アジア太平洋のイノベーションを推進するシンガポール拠点
米国を本拠とするヒルロムは、同社の新しい治療用ベッドの開発に不可欠なマイクロエレクトロニクス、組込みソフトウェア、電気機械システムの応用開発に重点を置くアジア・太平洋イノベーション・センター(Asia-Pacific Innovation Center)をシンガポールに設立しました。 これは、ヒルロム製品をグローバルに応用する研究開発プロジェクトを展開する拠点となっています。

2010年にはシンガポールに患者支援開発センター(Patient Support Development Center)を設立しました。 同センターではシンガポールやアジアの医療機関と連携してアジア地域向けの新製品を開発しています。同社はまた、グローバル市場向けの革新的な呼吸器疾患治療製品を特定し開発をめざす目的で、シンガポールに呼吸器疾患治療開発センターを設立しました。

ホコマ(Hocoma AG): 医療ロボット用アプリケーションの開発2010年、スイスの医療機器企業ホコマは、シンガポールの医療機関であるタン・トクセン病院(TTSH:Tan Tock Seng Hospital)リハビリテーション・センターとパートナーシップを組んで臨床・機器アプリケーションの開発および最適化を行うことを発表しました。 TTSHリハビリテーション・センターはホコマ社のアジア太平洋地域研修センターとしての役割も果たしています。

TTSHは病院開設以来、アジア太平洋地域で初めて、最新型ロボット支援歩行治療装置「LokomatPro」を導入しています。従来の治療と同時にロボット工学やバーチャルリアリティ・プログラムを提供しているTTSHのアジア初となる高度リハビリテーション治療センター(CART)は2011年、患者のリハビリ効果を最大限に引き出すためにLokomatProを導入しました。

TTSHリハビリテーション・センターとホコマは、アジア太平洋地域における双方の革新的リハビリテーション技術利用の新領域を定めた覚書(MOU)を交わし、両社のパートナーシップは更新されました。

シンガポール科学技術研究庁・フィンランド技術庁(A*STAR-Tekes): オンライン・ヘルス・モニタリング・プラットフォームの開発
2010年1月、シンガポール科学研究庁(A*STAR)とフィンランド技術庁(Tekes:フィンランドの技術・イノベーション研究資金提供機関)は、医療、健康、高齢化などの分野における初めての2国間共同公募(JCP:Joint Call for Proposals)を発表しました。JCPは研究開発および科学における連携を推進するために両国が交わした第2次覚書(MOU)の一環として計画されました。

これは高齢患者の睡眠行動を追跡調査する遠隔医療監視システムのプラットフォーム開発をはじめ、第1次MOUのもとで実施されたプロジェクトの成功に続くものです。 このプラットフォームはシンガポールの介護施設で実証されました。介護士は患者の様子を観察し、インターネット接続環境にあれば世界中のいかなる地域からも患者に助言することができるシステムです。

アジアの中でも都市化と高齢化が急速に進むシンガポールは、その優れた医療水準を活かして最先端の「リビングラボ(生きた実験室)」としての役割を果たしています。企業はこの特性を活用して技術革新のプロセスの迅速化を図り、将来性の高いソリューションを開発することで急増するアジアの医療ニーズに対応することができます。

シンガポールの医療機器産業についての詳しい情報はこちらをご覧ください。


統計データ

  • シンガポールは世界水準の医療を実現し、医療インフラ整備は世界第4位に評価されています(IMD国際経営開発研究所『世界競争力ランキング2009』)。乳児死亡率の低さにおいては世界第3位、長寿国としては世界第7位(WEF世界経済フォーラム『世界競争力レポート2009〜2010年』)にランキングされています。
  • 国際医療水準認証機関ジョイントコミッション・インターナショナル(JCI)は、シンガポールにアジア太平洋統括本部を設立しました。以来、JCIの認証を受けたシンガポールの医療機関は11の病院と3つの医療センターにのぼっています。
  • シンガポールには、国際糖尿病連合(IDF)、ジョイントコミッション・インターナショナル(JCI)など、主だった国際医療機関の地域事務局が置かれています。 また、医療情報・管理システム学会(HIMSS)のアジア太平洋事務所もシンガポールに設立されています。
  • 2012年HIMSSアジア太平洋会議がシンガポールで開催され、産業界、政界、学界から1,900人を超える参加者が集結して、アジア太平洋地域そしてグローバルな医療IT動向、重要課題に関する議論が交わされました。シンガポールでHIMSSアジア太平洋会議が開催されるのは2度目となります。
  • 米国癌学会、デューク大学、ジョンズ・ホプキンス大学といった国際研究機関も、シンガポールでその存在感を確立しています。企業や科学者はこれらの研究機関と連携して、満たされていない医療ニーズに対応するため創薬の期間短縮と画期的治療法の開発に取り組んでいます。
  • シンガポールは、トラベルウィークリー(アジア)インダストリー・アワードの「ベスト・メディカル / ウェルネス・ツーリズム・デスティネーション」を2007年、2008年の2年連続で受賞しました。

注目の人、場所

Barry Halliwell

バリー・ハリウェル(Barry Halliwell)、シンガポール国立大学生物化学科教授

バリー・ハリウェル教授は生物学から神経科学、薬理学、毒物学まであらゆる分野を専門とする生化学者です。英国オックスフォード大学で博士号を取得し、アルツハイマー病や癌などの病気における遊離基、抗酸化物質の役割に関する膨大な研究に貢献してきました。現在は、抗酸化物質の脳卒中治療への活用、外傷治癒への影響、老化との関連など、多数のプロジェクトで研究を行っています。シンガポール国立大学(NUS)では、研究課題の計画、プログラムの推進、そして学内研究機関の監督を行っています。ハリウェル教授はこのように述べています。「ここシンガポールで非常に素晴らしい研究チームを築くことができた。研究費の支援も極めて良好で、現在進められている優れた研究すべてを支援するシステムをシンガポールは整備しており、資金投入も申し分ない。」

NUSで現在進められているその他の注目すべきプロジェクトには、これまで研究されてこなかったテーマとして、西洋人と比較してアジア人に多く見られる癌の研究、あるいは大手製薬会社が中国などで販売している医薬品に大きな影響を及ぼすことから他の人種とは異なるアジア人特有の薬物代謝の研究基盤の確立などがあります。少年のようにお茶目な雰囲気をあわせ持つハリウェル教授。彼は先頭に立って今後シンガポール発の製品やモデルをアジア太平洋地域へ展開して行くことでしょう。

Ranga Krishnan

ランガ・クリシュナン(Ranga Krishnan)、デューク・シンガポール国立大学医科大学院学部長

「私たちは考える人を必要としている。問題に目を向け、興味を持ち、答えを引き出そうと挑戦する人。重要なのはクリティカル・シンキングだ」とランガ・クリシュナン氏は述べています。デュークNUS医科大学院の学部長として、クリシュナン氏は米国ノースカロライナ州に本部を置くデューク大学のシンガポール校でキャンパス展開を監督しています。

デューク大学とシンガポール国立大学の提携(デュークNUS)は、「アジアに高水準の医科大学を設立する」というデューク大学の構想の一環として2005年に着手しました。今日、デュークNUSは毎年56人の学生が入学、研究機関スタッフ数は103人に拡大して、癌や幹細胞から神経細胞、心臓血管、代謝まで幅広い研究に取り組んでいます。これまで既に18の特許を申請していますが、新しい学習方法も同校の画期的なイノベーションの1つです。


デュークNUSには講義室と講堂がありません。学生はオンラインで講義を受け、教室ではディスカッションと問題解決だけが行われます。シンガポールキャンパスで開発されたこの画期的学習モデルを、おそらく自国で再現しようと世界中から視察団が訪問し、シンガポール陸軍も教育の仕組みを見学するために訪れました。クリシュナン氏はこの新しい学習方式のリーダーとして話すときには極めて熱く語り、将来的にはデュークNUSがアジア全域で医学大学カリキュラムの未来型モデルとなるであろうことを喜んでいます。

Jackie Ying

ジャッキー・イン(Jackie Ying)、バイオ工学・ナノテクノロジー研究所エグゼクティブ・ディレクター

運動靴を履いて少女のような笑顔を見せるジャッキー・イン氏。その気さくでのんびりした人柄に相反して、数々の輝かしい業績の上では厳格を重んじる人物です。米マサチューセッツ工科大学化学工学科の非常勤教授であるイン氏は、2003年にシンガポールのバイオ工学・ナノテクノロジー研究所(IBN)を設立しました。イン氏の指導の下、複合型研究施設であるIBNは150人の生物学者、医師、化学者、エンジニアを抱える研究機関に成長し、空港などで感染症対策に使用される簡易ウィルス検査キットや、診断と予後に素早く対応出来る腫瘍と血液細胞の分離装置などの発明に取り組んでいます。これまでに申請した技術特許は合計300を上回っています。

航空機や装置類の動力となる金、銅、白金ナノ粒子を使った燃料電池の技術開発や、再生医療や細胞工学向けの生体材料の開発を行うプロジェクトも進められています。イン氏は、「シンガポールは研究と開発に重点的に取り組み、企業誘致に成功したことによって、特定の研究分野を急速に発展させ、優れた人材を獲得しています。つまり、与えられた資産と新しいアイデアが一つとなることによってイノベーションを推し進めることができているのです」と述べています。
イン氏は活動時間の大半をIBNで過ごしていますが、時には休暇を取ってレクリエーションを楽しみます。そんな時に一番リラックスできる趣味はシュノーケリングだと語っていました。

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