医薬品・バイオテクノロジー

医薬品・バイオテクノロジー

医薬品・バイオテクノロジー 業界概要

世界各国の医薬品・バイオテクノロジー企業がR&Dの生産性低下の問題に取り組む中、シンガポールの統合的研究のエコシステムでは、企業が1つの拠点で多分野の能力を利用できることで、R&Dの意思決定が向上し、創薬・開発にかかる期間を短縮しています。 グラクソ・スミスクライン、ノバルティス、武田薬品など世界30社以上の大手バイオメディカル・サイエンス企業がシンガポールをイノベーション推進の主要拠点として活用し、シンガポールのバイオ医薬品産業は2011年には30パーセント以上の成長率を達成しました。

世界的に主要な物流ハブであり、知的所有権保護体制が整備された多民族からなる都市国家シンガポールは、アジアの成長著しいバイオ産業クラスターとして、研究機関、企業の研究所、公立病院と戦略的パートナーシップを結び、アジア地域およびグローバル市場に向けてカスタマイズ可能な新薬や将来の治療法を開発する機会を提供しています。

優位性

地域研究開発拠点

シンガポールは、活力あるバイオメディカル・サイエンス研究体制の発展に重点を置き、臨床科学、ゲノミクス、バイオエンジニアリング、分子・細胞生物学、医学生物学、生体イメージング、免疫学などの重要研究分野で7つの研究機関と5つの研究コンソーシアムを有し、強力な科学基盤を築き上げました。 50社を超える企業が、これらの研究機関と頻繁に連携し、創薬、トランスレーショナル・リサーチ、臨床研究などのR&Dを実施しています。

シンガポールは、トランスレーショナル・リサーチおよび臨床研究においても大きな進展を遂げています。 公立病院で早期段階の臨床試験を専門に行う研究医療ユニットや、後期試験の支援を中心としたシンガポール臨床研究所(SCRI)などの主要インフラを整備しました。 これらの施設では、シンガポールで増加傾向にある臨床医師たちを支援しています。

また、シンガポールの医療機関および国立の専門センターが世界有数の医療機関、医薬品・医療技術企業との連携を通じて取り組んでいる臨床研究によって、新しい治療法・技術を常に提供できる体制が整っています。 さらには、科学技術研究庁(A*STAR)および傘下の生物医科学研究機関が振興する世界水準の科学研究を通じて、患者に役立つ新しい治療法への重要な手がかりが発見されています。

シンガポールは、高度な科学、トランスレーショナル・リサーチおよび臨床研究の能力を基盤としているため、今後数年間にわたって、次世代の技術で創薬プロセスを加速させることに取り組んでいる産業を支援する準備が整っています。同時に、癌、代謝性疾患、神経変性疾患、感染症および眼病などの重要な病気 にも取り組んでいきます。

世界水準の優れた臨床

アジアにおける臨床研究・臨床試験の管理事業において、シンガポールは高い評価を得ています。 医薬品の適正臨床実践基準(GCP)のためのAPEC Coordinating Centre(APEC調整センター)の事務局として、シンガポールはアジアのGCP展開において戦略的な役割を果たし、臨床研究に携わる人材の研修、アジア地域の複数拠点での臨床試験に適した環境の整備などの構想を先導します。

こうした要因によって多くのグローバル医薬品ブランドがシンガポールに魅力を見出し、臨床試験の地域拠点を設立しました。 その主な企業としてサノフィ・アベンティス、グラクソ・スミスクライン、MSD、ノバルティス、サノフィなどが挙げられます。

臨床試験を通じて画期的な治療法を開発しているシンガポール大学癌科学研究所(CSI)は、シンガポールの癌研究の発展に貢献しています。Cancer Therapeutics Research Group (CTRG)では多数の研究機関が連携して研究を行っており、その主な参加機関としてシンガポール国立大学病院 / シンガポール国立大学、シドニー癌センター(Sydney Cancer Centre) / シドニー大学、ジョンズ・ホプキンス・シンガポール国際医療センター(Johns Hopkins Singapore International Medical Centre)、香港中文大学(Chinese University of Hong Kong)、シンガポール国立癌センター(National Cancer Centre, Singapore)などが挙げられます。

また、複数の医薬品開発受託機関(CRO)がシンガポールに拠点を置き、医薬品企業の増大するアウトソーシング・ニーズを支援しています。 コーヴァンス、クインタイルズ、アイコンなどのグローバルCROもシンガポールでアジア地域の臨床試験を管理しています。 これらの国際的CROは第I相試験からファーマコビジランス試験までの幅広いサービスを提供しています。 患者を支援する革新的なバイオマーカー探索やバリデーションなどのサービスを展開しているCROもあります。

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政府の構想

シンガポールでトランスレーショナル・リサーチおよび臨床研究に携わる世界に通用する臨床科学者の採用・育成を目的とするシンガポール・トランスレーショナル・リサーチ研究者賞(STaR:Singapore Translational Research Investigator Award)、医療研究者が研究に割く時間を増やせるように研究資金および給与を給付する臨床科学者賞(CSA:Clinician Scientist Award)などの構想によって、シンガポールの臨床科学者の基盤は築き上げられました。

その他にも臨床科学者を育成するための以下のような構想があります。

  • 「トランスレーショナルおよびクリニカルリサーチ(TCR)旗艦プログラム」は、研究者および臨床科学者が連携して科学的な問題を解決し、患者のための質の高い医療ソリューション(基礎から臨床へのソリューション)に研究成果を転化する基盤を提供します。 TCR旗艦プログラムの受給者には、5年間で最高2,500万シンガポールドルの費用が提供されます。
  • 「競争的研究プログラム(CRP)」は、競争的ボトムアップ・アプローチによって幅広い研究アイデアを支援する基金制度です。 この制度は、バイオメディカル・サイエンスのトランスレーショナル・リサーチおよび臨床研究分野を含む将来の新産業の基幹能力の育成のためにシンガポールが投資することができる新しい有望な戦略的研究領域の発掘に貢献するR&Dプログラムを支援します。 各プログラムの受給者には3〜5年間にわたり最高1,000万シンガポールドルが支給されます。
  • 「ヘルスサービス・リサーチ競争的研究補助金(HSR-CRG)」は、2009年にHSRの実施およびHSRの成果の方策・実践への転化を促進するために保健省(MOH)が定めた研究補助金です。シンガポールの公共医療機関および学術機関の主任研究員(PI)がこの補助金の対象となり、2年間で最高100万シンガポールドルが提供されます。

また、シンガポール製薬企業工場長らと政府機関によって構成される官民団体、「生物医薬品製造業諮問委員会(BMAC)」は、従業員の技能向上、新入社員の研修およびベストプラクティスの推進に取り組み、製造業に携わる熟練労働者、高品質の実績とプロセス開発能力をもとにシンガポールが製造業界を牽引することに注力しています。

規制の枠組み

シンガポールは革新的な治療法の開発を円滑にするイノベーション促進環境を整備し、安全、品質、効用のグローバル・スタンダードを確保することを目指しています。 この目標は、長年にわたるシンガポール健康科学局(HSA)による新しい規制の枠組みの定義への取り組みと規制科学における新しい研究分野の追究によって促進されています。 2009年、多様な科学・生物医学的な機能をもつ政府機関のユニークな組織を通じて相乗効果を高めることを目的に、HSA Academyが設立されました。 同アカデミーはシンガポールで広がりつつあるソート・リーダーシップを具現化する重要な役割も果たします。 また、学会やシンポジウムを組織すると共に、法科学・分析科学、規制科学、輸血医療における最先端の問題に関する議論の促進を目指しています。

2011年にHSAはマサチューセッツ工科大学(MIT)のバイオメディカル・イノベーション・センターならびに5社(ブリストル・マイヤーズスクイブ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ライフテクノロジーズ、ファイザー、クインタイルズの各社)と協同し、規制科学と革新的腫瘍医学における実証プロジェクトNEWDiGs(新薬開発パラダイム)プログラムに参画しました。 NEWDiGSは当初の重点をProgressive Authorisation(段階的承認)に置き、より柔軟かつ適応可能な規制モデルの構成要素の評価も行っていきます。

また、HSAは米国食品医薬品局、中国国家食品薬品監督管理局、イギリスの医薬品医療製品規制庁などの世界各地の主要規制機関と多国間覚書を策定しています。

2009年、シンガポールはOECDの試験結果の相互受け入れ(Mutual Acceptance of Data)フレームワークへの参加も認められました。これにより、シンガポールで実施したGLP準拠の前臨床試験がアメリカ、EU、日本を含むOECD加盟国および非加盟国30カ国によって受け入れられます。

生物医科学研究機関

過去20年にわたり、シンガポールはA*STAR傘下の生物医学研究機関を通じて基礎研究・臨床研究の強固な基盤を着実に築き上げ、世界の科学界から関心が寄せられるようになりました。

バイオ情報研究所
バイオ情報研究所(BII)は計算生物学研究・学卒者研修機関、およびバイオ情報に関する国のリソース拠点として設立されました。 BIIは、生物現象の根底にある生体分子機構の解明、この発見プロセスを支える計算手法の開発、生物化学手法による遺伝子とタンパク質の分子・細胞機能予測の実験的検証を目指した理論的手法に重点を置いています。

バイオ処理技術研究所
バイオ処理技術研究所(BTI)は、バイオ処理産業関連の人材を育成し、最先端技術を確立することを使命としています。 バイオ処理研究開発の陣頭に立つBTIは、プロテオミクスおよびマイクロアレイ・プラットフォーム技術を基礎とした表情工学、動物細胞技術、幹細胞、微生物発酵、生成物特性、下流工程、精製・安定性に関する中核的な専門技術を備えています。 R&Dおよび適正製造基準(GMP:Good Manufacturing Practices)製造の能力を備えたBTIは、創薬、プロセス開発、商用化のギャップを埋める橋渡し役を果たします。

シンガポール遺伝子研究所
2000年6月に設立されたシンガポール遺伝子研究所(GIS)は、ゲノム科学を利用して国民の保健向上と繁栄を目指すグローバルなビジョンを掲げたシンガポールの旗艦構想です。 GISはゲノム発見の拠点として技術、遺伝学、生物学の融合によるオーダーメイド医療を目指します。 また、科学的焦点をポストシーケンスゲノムの研究、汎アジア人の遺伝的構造の解明に置き、癌生物学、薬理ゲノミクス、幹細胞生物学、感染症に重点的に取り組みます。

バイオ工学・ナノテクノロジー研究所
バイオ工学・ナノテクノロジー研究所(IBN)はシンガポールのバイオメディカル・サイエンスの発展を推進しています。 IBNは工学の2つの新領域の仲立ちとして知識の創生と人材の育成に重点を置き、新しい産業の発展を推進する技術基盤の開発を推し進めます。

2003年以降、IBNは影響力のある研究を通じてバイオ工学とナノテクノロジーの両領域にわたるユニークでニッチな分野を開拓してきました。 IBNはJackie Ying元マサチューセッツ工科大学化学工学科教授(1992〜2005年)の指導の下、最先端バイオ工学・ナノテクノロジーの研究を行っています。 工学、科学、医療といった複数の分野にわたる研究によって医療と生活の質の向上を実現する画期的進歩を目指します。

研究分野

・薬物・遺伝子配送
・細胞・組織工学
・バイオセンサー・バイオ機器
・医薬品合成・ナノバイオテクノロジー

医学生物学研究所
医学生物学研究所(IMB)は、基礎科学と医療に関わる重要な接点に焦点をあてた戦略的なプログラム主導型の研究ポートフォリオを用意しいています。 同研究所は臨床科学と基礎科学との架け橋となるトランスレーショナル・リサーチの開発推進を目指して設立されました。

現在、IMBは人の疾病のさまざまな側面に関する研究プログラムを実施しています。 IMBが手掛けている主要なプログラムには、シンガポール癌遺伝子プロジェクト、再生医療、乳頭腫ウイルス、上皮生物学、幹細胞医学コンソーシアム(SSCC)から委託された幹細胞生物学の研究などがあります。 IMBでは、トランスレーショナル・プロセスの効率向上による生活の質の向上を目指して、科学者と臨床医が密接に連携し、相互の強みと専門性を支援、伝達、強化するべく取り組みを行っています。

分子・細胞生物学研究所
分子・細胞生物学研究所(IMCB)は、シンガポールにおける生物医学に関する研究開発を振興・支援するために設立されました。 世界水準の研究機関としての地位を確立したIMCBでは、生物医科学の6つの分野 (細胞生物学、発生生物学、構造生物学、感染症、癌生物学、トランスレーショナル・リサーチ)に重点を置き、細胞周期、細胞シグナリング、細胞死、細胞運動、タンパク質輸送を主な得意分野としています。

IMCBの最近の実績には、世界で初めてフグの遺伝子解明に成功した国際コンソーシアムへの参画などがあります。 また、IMCBは国際的研究拠点へと発展し、世界の産業および研究機関と連携した功績が認められてNikkei Prize 2000 for Technological Innovationを受賞しました。

シンガポール臨床科学研究所
シンガポール臨床科学研究所(SICS)は、特定の疾病領域に重点を置いた疾病主体の臨床研究・トランスレーショナル・リサーチ・プログラムを振興することを使命としています。 SICSの特徴は、人の健康と疾病の有効な研究を可能にする臨床科学と革新的なアプローチ・技術の使用に焦点を当てている点にあります。 同研究所は臨床科学者を招請、研修、育成し、A*STARの研究機関が実施する基礎研究とシンガポールの公立病院、疾患センター、大学における臨床研究プログラムをつなぐ重要な架け橋としての役割を果たすことを目指しています。

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官民連携パートナーシップ

アジア屈指のバイオクラスターを形成しているシンガポールは、生物医科学の製造・研究開発事業において確固たる実績と基盤を確立しています。 さらにシンガポールは公共部門の研究機関、大手医薬品・バイオテクノロジー企業の拠点、病院の臨床研究ユニット、国際的な研究組織との多様なパートナーシップ構築の機会を提供しています。

たとえば、ロシュは、シンガポールの科学・医療機関との連携を目的に30人の科学者を擁するトランスレーショナル医療の拠点をシンガポールに設立しました(投資額1億スイスフラン)。 多分野の人材を集めたチームが創薬・開発にかかる期間の短縮を目指して疾病生物学の研究に取り組んでいます。

バイエル ヘルスケアは、癌の早期診断・治療の向上を目的とした研究開発を進めるために、シンガポールの学術機関との5つのプロジェクトに追加資金1,450万シンガポールドルを投資しました。 さらにグラクソ・スミスクライン(GSK)は同社初の学術研究拠点をシンガポールに設立し、その最初の4つのプロジェクトでは革新的医薬品向けに新しいメカニズムを解明するための眼科・再生医学・神経変性の早期段階の研究に焦点を当てています。

今日、シンガポールは、マウスモデルでの前臨床開発と新規医薬品候補の初期段階の臨床試験を1カ所で実施できる世界水準の科学および臨床研究を確立しています。 2011年、マクシンはA*STARのシンガポールバイオイメージングコンソーシアムと提携を結び、薬剤開発プロセスを強化するための最先端前臨床画像に新境地を開拓するためにトランスレーショナル画像センター(TIIL:Translational Imaging Industrial Lab)を設立しました。

シエナ・ビオテクは、胃癌、白血病、脳腫瘍などの難治性癌を対象とする腫瘍学における主要なシグナル経路の分子阻害剤を開発する目的でA*STARの実験治療センターとパートナーシップを組んでいます。 Humalys SASとサイトス・バイオテクノロジーはシンガポール免疫学ネットワークと連携し、アジアに蔓延する感染症の抗体を利用した治療法を開発しています。

18カ国から集まった100人を超える研究者を擁するノバルティス熱帯病研究所は、A*STAR、研究機関、医療機関とパートナーシップを組んでスイス熱帯公衆衛生研究所およびスクリップス研究所と連携しています。 こうした連携によってマラリア新薬のスピロインドロンNITD609が発見されました。 この画期的な発見の背景には、不適切な薬品投与や粗悪・偽造医薬品が原因で、ある地域に薬剤耐性菌の脅威が増大している状況がありました。

シンガポールの確実に成長を続けているプロセス研究開発能力も、シンガポールに拠点を置く企業が小分子・バイオ医薬品の製造において新機軸を開くために役立っています。 シンガポールの公共機関と大手医薬品企業との主要な連携として、投資額200万シンガポールドルに上るGSKバイオロジカルズとA*STARのバイオ処理技術研究所による官民連携パートナーシップで、ワクチンと補助的薬剤のシステム関連研究プロジェクトに共同で取り組んでいます。 2009年には、シンガポールの化学工学研究所(ICES:Institute of Chemical and Engineering Services)が、プロセス開発における医薬品企業との連携強化を可能にするパイロットスケールの研究施設を開設しました。

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製造拠点

ハード面でも規制面でも整備されたインフラ、世界各地へのアクセスの良さ、熟練労働力に魅力を感じた世界の数多くの大手バイオ医薬品企業(アボット、グラクソ・スミスクライン、ロンザ、MSD、ノバルティス、ファイザー、サノフィ・アベンティスなど)が、シンガポールにグローバル製造拠点を置いています。 これらの企業は幅広い医薬品有効成分(API)、バイオ医薬品、栄養剤の製造能力を備えた多目的工場を展開しています。 シンガポールではバイオ医薬品の製造が拡大し、バクスター、ロンザ、グラクソ・スミスクライン、ロシュは、20億米ドルの資本を投じて大規模なバイオ医薬品製造施設を建設すると発表しました。 現在、市販事業を開始したすべての医薬品製造施設は米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)などの国際規制機関による検査を受けています。

シンガポールの競争優位性を確信した多くの医薬品・バイオテクノロジー企業は、API以外の製造事業にも手を広げるべく長年にわたって事業を多角化してきました。 その主な例として以下が挙げられます。

  • 2011年、グラクソ・スミスクライン(GSK)は「環境に優しい持続可能な製造のためのGSK・シンガポール・パートナーシップ(GSM:GSK-Singapore Partnership for Green and Sustainable Manufacturing)」において、14人の主任研究員に約800万シンガポールドルの研究費を拠出しました。 これは3,300万シンガポールドルを投じたGSMプロジェクトにおける研究資金拠出プロジェクトの第2弾であり、対象となった主任研究員は化学・物理・バイオ変換、設備・サプライチェーン、機器・技術事業、ライフサイクル評価、溶媒選択・最適化の分野で研究を行います。GSMは、グローバル医薬品産業が持続可能性の向上とグローバル事業の最適化の必要性に取り組む中、革新的なソリューションの開発を目指しています。
  • ロンザは2011年、シンガポールでのバイオ医薬品開発サービスの基盤を拡張するために1,000万スイスフランを投資しました。 ロンザの開発サービス事業、バイオ哺乳類カスタム製造プロセスのフロントエンドは、重要なバイオ製造プロセスの開発に使用するカスタマイズされた革新的なサービスを提供します。 シンガポールの施設は最先端研究スペースと関連機器を取り入れるために広さ1,858 m²が増設され、細胞株培養、アップストリーム・ダウンストリーム・プロセス開発、および広範な分析サービスをサポートします。 この施設はシンガポールにあるロンザの生物製剤製造施設と連携し、開発から前臨床まで、そして小規模な製造から大規模な市販供給まで、幅広いサービスを提供する包括的なバイオ医薬品開発・製造拠点になっています。
  • アボットが4億5,000万シンガポールドルを投資してシンガポールに建設した栄養パウダー製造工場は、同社によるアジアで最初の大型投資であり、さらに同社の栄養食品部門で過去最高の投資額となりました。 アジア地域のアボット栄養製品に対する需要増加に対応するため4億5,000万シンガポールドルを投じた最先端施設は2008年4月に完成しました。 シンガポールの施設では、乳児用調製粉乳のSimilac Advance®、乳幼児育児用ミルクのGain®、Pediasure®およびGrow®といった定評あるアボット・ブランドを含む年間4,500万kgの粉末栄養製品を製造する予定です。

シンガポールは将来の製造要件に備えて引き続き人材育成に力を注いでいます。 シンガポールの医薬品・バイオテクノロジー製造産業は、さらに増大傾向にあり現在4,800人を超える熟練技術者によって支えられています。 企業は関連分野(化学、エレクトロニクス、エンジニアリングなど)において30万人を超える強力な熟練労働者層を利用できます。

シンガポールの経済成長に際してめざましい発展を遂げた代表的な産業であるバイオ医薬品産業は、2011年には生産高がおよそ228億シンガポールドルに達し、6,000人を超える雇用を創出しました。 2010年と比較して、バイオ医薬品産業は2011年には30%以上成長し、データモニターによると、シンガポールは2000〜2010年の医薬品輸出における成長率が世界第3位とされています。

グローバルな人材力

現在、シンガポールには世界各地から6,000人を超える研究者が集まっています。 Soo Khee Chee氏(シンガポール国立癌センター創設センター長)、Wong Tien Ying氏(シンガポール眼科研究所所長)、Goh Boon Cher氏(シンガポール国立大学癌研究所血液・腫瘍内科部長兼シニアコンサルタント)らシンガポール出身の精鋭に加えて、世界各国の多数の著名な科学者がシンガポールの研究機関、コンソーシアム、研究所を率いるためシンガポールに移住しています。

こうした著名科学者として、Edward Holmes(米カリフォルニア大学元副総長)、Judith Swain(米カリフォルニア大学元トランスレーショナル医学部長)、George Radda卿(英医学研究協議会元最高経営責任者)、David Lane卿(英国癌研究所元主任科学者)、Axel Ulrich(ドイツ・マックス・プランク生化学研究所元最高経営責任者)、Philippe Kourilsky(仏コレージュ・ド・フランス分子免疫学元教授、議長)、伊藤嘉明(元京都大学ウイルス研究所所長)の各氏の名が挙げられます。

また、臨床研究分野でもRanga Krishnan(元デュークNUS医学大学院学部長)、 Michael Hayden(カナダ・ブリティッシュコロンビア大学Centre for Molecular Medicine and Therapeutics創設者)、Nicholas Paton(英医学研究協議会臨床試験ユニット上級臨床科学者)の各氏のような優れた研究者がシンガポールを拠点として成長めざましい研究分野に貢献しています。

教育・研修

シンガポールは、技術移転を促進するための複雑な製造プロセスに関する研修の必要性と、次世代の科学者育成の重要性を認識しています。

2001年に国家奨学金プログラムを開始して以降、A*STARは世界のトップクラスの大学でシンガポール人の博士課程修了者を1,000人以上育成しました。 A*STARが創設したA*STARインベスティゲーターシップ(A*I)賞は、シンガポールの公共部門の研究機関で独自の研究を行う優秀な若い研究者の招請を目的にしています。

組織レベルでは、シンガポール国立大学(NUS)がデューク大学と提携し、シンガポール初の医学大学院となるデュークNUS医学大学院を設立しました。 2010年、ハーバード大学ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センターは、科学・学術・技術情報を交換し、共通の関心分野における協力、情報交換、共同研究の機会を見出し、学術および科学関連のセミナー・会議を共同で組織するためにNational University Health System (NUHS)と連携することを発表しました。 シンガポールは研究、教育、研修の機能を1カ所に集めた統合施設にも投資しています。 この施設には、SGH Campusに新設されたNUHSトランスレーショナル医療研究所(Centre for Translational Medicine at NUHS)と、デュークNUS医学大学院とシンガポール総合病院も入居しているKhoo Teck Puat Buildingなどがあります。

また、National University of Singapore Academy of GxP Excellence (NUSAGE)は適正製造基準(GMP:Good Practices in Manufacturing)、臨床研究(GCP:Good Clinical Practices)、健康食品安全管理(GVP:Health Product Safety or Vigilance)を推進しています。 業界大手企業や主要政府機関と連携し、NUSAGEは、域内初の全業界対応型研修構想としてシンガポールにおける企業特化型研修センターを補完するものとなり、業界への参入を希望する人々に対する基礎訓練も行っています。 NUSAGEの大学院課程には、製薬・臨床研究に関する研修などがあります。

EDBは、2010年にGSKと連携し、持続可能な製造能力の育成計画に沿って学卒者の公共医療政策の研究を支援するための共同基金など、10年にわたる戦略的ロードマップを立案しました。

専用インフラ

シンガポールの医療の発展は、政府の基礎研究開発・臨床研究開発への注力によって推進されてきました。

バイオポリス

ライフサイエンスの最先端インフラとなるバイオポリス(ワンノース地区)の建設により、シンガポールは医療の発展に貢献するグローバルな生物医科学拠点へと急速に発展することができました。 バイオポリスは公共部門の研究機関と企業の研究所が同一の敷地内にあり、一カ所で研究機関や企業組織の協力関係を培っていけるように計画されたものです。

Tuasバイオメディカル・パーク

政府は、製薬および生物製剤メーカー向けに、Tuasバイオメディカル・パーク(TBP)と呼ばれる面積360ヘクタールの整地・区画された土地を準備しています。

新たな動向

市場調査会社RNCOS E-Servicesが2010年の報告書によると、アジアの医薬品業界は、世界人口の過半数を抱える背景から、1,680億米ドルの価値があり、年率12パーセントを超える成長があると見積もられています。アジア各国が経済成長を遂げるにつれて、その医療費も急激に増加しています。 この地域の中産階級と老齢人口の増加により、普段の治療に対する市場需要が拡大されました。

生活水準の向上と長寿化にともなって、アジア人の脂肪の多い食物の過剰摂取による心臓病や、喫煙による肺がんの増加など生活習慣病の発生率が増加しました。この結果、ますます重要性が高まっている医薬品業界の市場が創出されました。現在では官民両方の機関が健康保険制度を提供していますが、これも医薬品需要が拡大された一因です。

一方、ここ何年かの間にR&D費は非常に増加したことにもかかわらず、製造された新薬の量は大きく増加していません。多国籍医薬品会社は、研究活動によって市場投入予定だった特許取得製品を新薬で補給できていないため、その戦略を改める必要があります。医薬品会社は、政府、規制当局者および医療界との連携をより密にし、患者が本当に必要とする医薬品を製造して、可能な限り迅速で効果的に試験を行い、よりホリスティックな医療サービスを提供する必要があります。

グローバル医薬品会社は、市場投入予定の新薬を強化するために、外部パートナーのノウハウを享受していく方向に移行しています。シンガポールが質の高い基礎研究と臨床研究によって、アジアで有数の共同R&Dパートナーとなっています。2000~2010年の間に、シンガポールのバイオメディカル製造業生産高は、60億シンガポールドルから233億シンガポールドルへと4倍に増加し、この業界はシンガポールのGDPの約5パーセントを占めるまでに成長しました。

バイオメディカルR&Dには、毎年14.9億シンガポールドルを上回る額が投資されています。バイオメディカル・サイエンス部門への進出から10年が過ぎ、バイオメディカルR&Dでの雇用は2000~2010年の間に2,200人から2倍以上増えて5,000人を上回りました。同様に、バイオメディカル製造業生産活動での雇用も同時期に6,000人から増えて14,000人を上回りました。50社を超えるバイオメディカル・サイエンス企業と30ヶ所を超える研究所を抱えるシンガポールでは、2011年に270億シンガポールドルを超える医薬品と医療機器が世界市場向けに製造されました。

シンガポールは2011~2015年の間に研究、イノベーションおよび企業活動を継続的に支援するために161億シンガポールドルを投資します。161億シンガポールドルのうち37億シンガポールドルは、既存のバイオメディカルR&Dインフラの改善、学際的な研究の統合、さらには基礎科学から具体的な成果を生むために投資されます。

注目の製品、場所

シーメンス 補聴器

シーメンス
補聴器

シンガポールで主に製造を行う、シーメンス・メディカル・インスツルメンツは、同社新製品の補聴器「Ace」により業界に新たな風を吹かせようとしています。トップクラスの目立ちにくさを誇る超小型のAceは、若い人や初めての人向けの補聴器として位置づけられています。費用を抑えた外部委託先として誕生したシーメンスのシンガポール部門とドイツのR&Dチームの協力で開発されました。「当社の研究部門はいまや立派なR&Dセンターに成長しました。成功の鍵は、アジアの消費者に向けたイノベーションを行うことだと考えています。シンガポールでは、『バリューチェーンの移行』がよく引き合いに出されますが、当社もその取り組みを行っています。」と同社CEOイェンズ・パッペリツ氏は述べています。

ノバルティス熱帯病研究所 医薬品

ノバルティス熱帯病研究所
医薬品

スイスの医薬品大手ノバルティスとシンガポール政府のパートナーシップにより立ち上げられたノバルティス熱帯病研究所(NITD)はアジアで蔓延している病気の治療法発見の最前線に立っていて、マラリア病原体を排除できる分子の研究において突破口を開いたばかりです。「研究分野で成果を出すのに時間がかかるのは、かなり重要なこと」とNITDを率いるティエリー・ディアガナ氏は述べています。この成功の一要因として、シンガポールのNITDに対する10年間の取り組みにより、長期的な計画が可能となったことが挙げられます。勢い盛んなNITDの研究者たちは、都市国家シンガポールの医学研究拠点バイオポリスに属している他の医学研究者らと、見解についてすぐに議論したり、共有することも可能です。

モノクル誌の協力のもと、EDBは比較的小規模な国土面積や人口をものともせずシンガポールを高水準の国に押し上げている人、場所、製品を紹介します(モノクル誌で出版された内容となります)。