人材のデジタル化
シンガポールのデジタル化推進に不可欠な要素は人材です。と言うのも、工場が自動化されたとしても工場単独では機能できません。そのため、デジタル化を可能にする上で人材は非常に重要となります。また、たとえデータがあるとしても、プロセスを継続的に改善するためには、その分野の専門知識を持ち最適化する最善策を決定するのは人です。人材は適切な環境の中で適切な訓練を受ける必要があります。
例えば、南洋理工大学(NTU)や南洋理工学院(NP)などの教育機関では精密工学、ロボット工学、付加製造に特化したプログラムを提供し、シンガポール製造技術研究所SIMTech)と再製造(リマニュファクチャリング)技術開発センター(ARTC)は企業との共同研究を行っています。
今日インダストリー4.0の分野で長期的な成功を収めるためには、ソフトウェアの知識またはデータ分析に精通しているだけでは不十分です。また、近い将来、熟練したエンジニアであるというだけでは、もはや十分ではなくなるでしょう。分析スキル(ソフトウェア)と技術スキル(ハードウェア)の両方を備えている必要があります。
そのため、EDBは、ポリテクニック出身のシンガポール人がドイツの中小企業から奨学金を受け、ドイツで学位を取得することができる「デュアルスタディー」プログラムを開発しました。エンジニアとコンピューター科学者が連携して問題解決に取り組む製造現場でのみ、多くの専門知識を得られると考えています。このプログラムでは、学生は学問的知識を得られるだけでなく、実際に現場での経験を通して、現代世界における未来のエンジニアとしてどのような要件を満たす必要があるかを学ぶことができます。
革命ではなく、進化
シンガポールを、全ての製造業務が運用効率、生産性、製造プロセス改善の推進において最高水準である場所にすることが私たちのビジョンです。デジタル化は革命ではなく進化です。エンジニアリングとデジタルを融合させる道程なのです。
本記事は、2017年2月15日発行のProduct Innovation誌に掲載された内容を翻訳したものです。
リム・コックキアン(Lim Kok Kiang)氏は、シンガポール経済開発庁(EDB)エンジニアリング部門担当の副次官です。