シンガポール発、未来のリーダーを育成するプログラム
NECが新たに開発した人材育成プログラム「TDP」は、NECとシンガポール経済開発庁(以下EDB)との戦略的なパートナーシップの中から生みだされたものだ。具体的にはEDBが選んだシンガポール新卒者をNECが雇用し、2年間かけて未来のリーダー候補となる人材を育成していく。NEC Asia Pacificの人事部長ジョナサン・タン氏は、このプログラムについてその役割と目的をこう語っている。
「『TDP』では今回26名の新入社員が選ばれました。彼らはジョブローテーション3カ月間の海外研修ののち、2年間かけて6つのビジネスユニットをローテーションしさまざまなビジネスを行います。このプログラムの目的は、NECとこの業界を担う、将来のタレントを育成していくことです。」
新卒者が選ばれる理由とは
それではなぜこのプログラムは経験豊富な人材ではなく、新卒者が対象となるのだろうか。「TDP」の担当者ロビンソン氏は選考基準についてこう語る。「基本的に成績などで選ばれるわけではありません。最も重視しているポイントは、NECが大切にしている4つの価値観を基準にしています。それはリーダーシップ、コミュニケーション、やる気、信頼の4つです。この4つの価値観を備えた人かどうかで判断しています。」
また、新卒者を対象としている理由について、ジョナサン氏は「新卒者をこのプログラムに入れることによって、学生たちの持つ新たな視観点や新たなテクノロジー、フレッシュな感性を活用したいと思っています。新卒者は、非常に大きなポテンシャルを秘めている人たちです。将来のNECのリーダー候補になるためには、新卒の時点から育成していき、どんどん成長していけるような機会を提供していくことが重要だと考えています」と語っている。変化が著しいIT分野では時代に対応する新たな感性が最も重要となる。また、社会的な価値を創造するためには、柔軟性があり多様性を受け入れられるリーダーが必要だ。
従来の教育プログラムとの違い。NECの経営と文化を実践から学ぶ
「TDP」は、これまでNECが行ってきた一般的な教育プログラムとは何が異なるのだろうか。
「日本で行う教育プログラムは1年間です。1年間のうち最初の6カ月は仕事をしないで勉強を行います。ICTを中心にNECのトータルビジネスを論理的に勉強していく。その後の6カ月間は仕事をしながら学んでいくものです。一方、シンガポールでは違います。6カ月間のジョブローテーションと3カ月間の海外研修を行い、その後、6つのビジネスユニットで実務につきます。ここではマーケティングや人事、会計などコーポレートマネジメントも経験します。2年間のプログラムが終わった時点で、研修生はNECの会社の運営や事業全体を知り尽くすことになるのです」とジョナサン氏は語っている。最大の違いは、その期間や内容もさることながら、NECの事業全体と経営、文化を理解することができる点にある。まさに未来のリーダーを育成するための教育プログラムなのだ。