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日本とシンガポールをつなぐ情報誌
Industry Case Studies:シンガポール科学技術研究庁とメガトレンドに挑む

IHIのオープンイノベーション
シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)とメガトレンドに挑む

160年以上の歴史を持ち船舶造船から始まった株式会社IHI(以下、IHI)。造船で培われた製造技術をベースに、
「資源・エネルギー・環境」「社会基盤・海洋」「産業システム・汎用機械」「航空・宇宙・防衛」
の4分野を中心に事業を展開する世界的総合重工業メーカーに成長している。
そんな、IHIが、アジア太平洋地域のグローバル拠点として重要視するのがシンガポールだ。
地域統括会社であるIHI ASIA PACIFIC PTE LTDを設けるだけではなく、
グループのテクノロジー戦略を担う研究開発拠点としてもさまざまな活動を行っている。

半世紀を経て、シンガポールはオープンイノベーションの拠点に

IHIとシンガポールとの協力関係は古く、半世紀以上にも及ぶ。1963年にシンガポール経済開発庁(以下、EDB)と、当時石川島播磨重工業といったIHIとの合弁事業として行われたジュロン造船所の開発が始まりだ。シンガポールは、東アジアと中東、ヨーロッパが行き交う貿易・物流ハブとしての役割を担っているが、それを支えるジュロン造船所の建設に加わったのが最初である。その後、シンガポールのプラントエンジニアリング会社であるジュロン・エンジニアリング社がIHIグループに入り、2012年にはアジア太平洋の統括会社としてIHI Asia Pacific Pte Ltd(以下、IHIAP)が設立された。そして、このIHIAPはグローバル統括拠点としての役目だけではなく、オープンイノベーションによるIHIグループの研究開発を担う存在なのである。

シンガポール科学技術研究庁A*STARとの共同研究開発体制

IHIのオープンイノベーションは、主にシンガポール科学技術研究庁(以下A*STAR)との間に締結されたマスター共同研究契約により生まれた。現在、IHIのOpen Innovationチームは多様な分野において共同研究開発を行っている。その主な目的は、「多様化する社会インフラ」、「加速する高度な情報通信時代」、「ますます複雑化するグローバル経済」という現代の3つのメガトレンドに対し、迅速にソリューションを提供するためである。もともとIHIのはじまりは、幕末の時代にまでさかのぼる。ペリー来航と黒船に衝撃を受けた江戸幕府の命により、1853年、水戸藩が設立した近代的造船所がはじまりだ。その後、IHIは、船舶をつくるための溶接、機械加工、鍛造、配管などの製造技術をベースに、時代の変化に応じて、さまざまな分野に事業を発展させてきた。例えば、IHIの売上の約30%(or 3割)を占める航空宇宙事業では、航空エンジンの国内シェア70%、民間航空エンジン用ロングシャフトでは世界シェア70%を占めている。また、同じく売上の約30%(or 3割)を占める資源・エネルギー・環境分野では、世界的なガス需要の高まりを受けて、LNGタンクの21%を占め世界トップだ。さらに同じく約30%(or 3割)の売上を占める産業システム・汎用機械分野では、車両用ターボチャージャーで世界シェア20%を持つほどだ。このように、IHIは、創業以来、時代のトレンドにいち早く対応することで、事業を発展し、持続的な成長を果たしてきた企業なのだ。

 

情報通信研究所とスマートジャンクションシステムを共同開発

それではIHIとA*STARとの共同研究開発は具体的にどのような分野で行われているのだろうか。ひとつには、三次元レーザーレーダを用いた安全運転支援サービスを始めとしたスマートジャンクションシステムの構築プロジェクトがある。これは、A*STARの情報通信研究所(I2R)との共同プロジェクトで開発されているもので、三次元レーザーレーダを使い、自動車や歩行者の位置を瞬時に検出し、安全・快適な道路交通を支援するテクノロジーだ。三次元レーザーレーダの長所は、悪天候などの環境条件に左右されることなく、リアルタイムに高精度な検出が可能なことである。このように、IHI三次元レーザーレーダを交差点や踏切、高速道路、橋などさまざまな場所に設置することで、交通事故を防ぎ、安全な交通環境を実現することが期待されている。これまでも、交差点を右折する車両へ、死角にいる車両や歩行者の接近を警告する交差点安全システムや、自動で違反Uターン車などを検出し抑制する交通違反検出システムの実証が行われ、その有効性が示されている。これらのプロジェクトは2019年10月21日から25日にシンガポールで開催されるインテリジェント交通システム世界会議においても紹介される予定だ。

 

再製造技術開発センターに参画。自動化の開発に取り組む

もう一つのIHIとA*STARが取り組む共同研究開発の事例は、再製造(リマニュファクチャリング)技術開発センター(ARTC)への参画である。ARTCは産学官が連携して取り組む製造業の持続的な発展を目的とした開発センターだ。創設はIHIに加え、米ボーイング、英ロールスロイス、独シーメンスなどの多国籍企業6社によって設立され、現在は71社がメンバーとして参加している。これらの企業とA*STARは共通の課題のもとに集まり、ARTCは、彼らとテクノロジプロバイダーをつなげるプラットフォームとして機能する。再製造の分野では再利用可能な部品を修理することで、元の製品と同等以上の性能・品質を備えた製品をつくる開発が行われ、次世代製造技術では、自動化によって生産性を高めるための開発が行われる。IHIでは、アディティブ・マニュファクチャリングや表面処理、ロボット工学、切削加工などの研究トピックに参加しており、複数のプロジェクトが進行している。例えば、そのうちの一つが、サンケイイーグルとの自動マスキングソリューションに関する共同開発事業だ。従来マスキング作業は手作業で行われていたが、ARTCではサンケイイーグルの製品をIHIのニーズに合うように改良され、自動化され、マスキング材料の使用量を50%削減することに成功している。

 

イノベーションをスピーディにおこすエコシステム

IHIとA*STARとのコラボレーションはさまざまな分野で動き出している。その範囲は化学や情報通信、生産技術、さらにはバイオメディカルまで多岐に渡っている。これはA*STARの側で、開発の分野に応じて最適なパートナーを選出し、より商品化への実現の精度を高め、スピーディな開発体制の構築を行っていることが大きい。IHIは、シンガポールを製造の検証と改良のためのソリューションにアクセスできる場所ととらえており、同社のものづくりの進化に大きなインパクトを与えている。同様に、シンガポールにとっても、IHIの存在はエコシステムの強化につながっている。IHIの技術がエコシステムを通じて、パートナー企業や組織の技術と合わさることで、商品化が加速され、社会の課題解決に結びついているのだ。

 

この記事は2019年4月にBRIDGE Singapore Business Newsにて配信しました。

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