Pepperl+Fuchs

これにより生産性は飛躍的に向上し、サプライチェーンそのものの構造が変わるとされている。今回はIIoT化と自動化により、生産性を400％も向上させ、グローバル流通センターに進化したPepperl + Fuchsのシンガポール工場をご紹介しよう。

“完全自動化”とIIoTで“世界のコントロールタワー”を実現

まず初めに、このグローバル流通センターでは、“完全自動化”による生産性の向上が行われている。原材料と完成品の輸送は、自律型ガイド付き自動車両（AGV）の導入によって完全に自動化されている。これは、自動保管システム（ASRS）と倉庫との間の生産ラインに導入されている。第二に、この自動化された工程は、IIoTによって、より効率化され、革新的な機能を生み出している。Pepperl + Fuchsは、全世界に15000種類以上もの製品を供給しているが、顧客の場所や要望は多岐にわたる。この“世界市場のコントロールタワー”では、各製品の在庫状況を、倉庫管理ソフトウェアシステムに生産段階から統合することによって、ジャストインタイムの生産と供給を可能にしてくれる。これはグローバルレベルで管理され、アイテムを補充する必要がある場合には、製造を開始する製造施設に対して追跡、配布、警告などを行い、顧客のさまざまなニーズに合わせて、製品や技術をカスタマイズし効率的に生産供給することができるのだ。
これがグローバルサプライチェーンにおける世界的なコントロールタワーと言われる所以である。
また、各工程のデータは倉庫管理ソフトウェアシステムに統合され、コスト効率やリードタイムが改善され、生産性の向上が状況に応じて行われる。この2つの機能“完全自動化生産”と“IIoT”が連動することで、Pepperl + Fuchsは“世界市場のコントロールタワー”を実現し、生産性を400％向上させることに成功している。
Pepperl + FuchsのCEO グンター・ケーゲル博士は、IIoTと自社のセンサー技術について「私たちのデバイスの大部分は30年以上前からデジタル化されています。しかしそれが”つながる“ことに意味があるのです。IIoTでは、すべてのデバイスがお互いにつながる存在となり、このようにして生成されたデータは私たちの活動を効率化してくれるのです」とIIoTの可能性について述べている。また、この“世界市場のコントロールータワー”であるグローバル流通センターについて「この新たな工場は、ビッグデータと自律型車両による自動化された生産プロセスを持つ、インダストリー4.0を体現した最初の工場です。1つのデータベースに各製造現場を統合することで、各製造プロセスのデータを追跡することができます。ただし、今のところは、自律型ロボットは、そのタスクを実行できるかどうかを評価するにとどまっており、依然として人間が精密機械を取り扱っている状況です。」

IIoTがもたらす新たなビジネスモデル

IIoTのもたらすメリットは、効率化や生産性の向上だけではない。IIoTを導入することで新たなビジネスモデルを生み出すことも可能になる。IIoTはセンサーを通じてあらゆるデバイスや工程のデータが集められるが、この集まったビッグデータを利用することで企業は様々なビジネスを生み出すことができる。例えば、IIoTとビッグデータが生み出す新たなビジネスモデルについて、グンター・ケーゲル博士はメンテナンスビジネスの可能性についても言及している。「企業は、不具合などの原因について、何が原因かを理解する必要はなく、ビッグデータが指し示す異常を探すだけで、原因を特定することができます。しかし、IIoTではこのビッグデータの利用を更に一歩進めて、“予防保守”に利用することができます。
例えば、工場に取り付けられている避雷器がありますが、この避雷器をIIoTに接続することで、避雷器のプロテクターの状態をモニタリングする診断機能を搭載できます。プロテクターは落雷が発生するたびに影響を受ける部品ですが、IIoTでは、落雷がどのくらいの被害をもたらすかを正確にデータとして特定することが可能で、システムの老化や、部品の交換時期や、故障など問題が起きる前に詳細な情報を得ることができるのです。そして、ここで得られたデータを避雷器メーカーは保険会社に販売することで、新たなメンテナンスサービスを提供することができるのです」。まさにIIoTは、製造業にとってあらゆる面からゲーム・チェンジャーとなる存在だと言えよう。

IIoT化は時代の必然

製造業は、Pepperl + Fuchsのシンガポール工場のように、製造現場やサプライチェーンの現場にIIoTを導入することで、生産性を高め、高度に効率化された製造プロセスを得ることが可能となる。特にシンガポールにはIIoTを導入するための環境が整っており、インダストリー4.0に移行する機が熟していると言えるだろう。グンター・ケーゲル博士も製造業を取り巻く環境について、「IIoTを導入するかどうかの選択の余地はありません。我々の周りの全てが変わっていくことでしょう。周囲が変わるか、それとも自らが先駆者となり変化を積極的に取り入れていくしかありません」と強調している。