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東南アジアへの投資が過熱している要因とは?

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海外直接投資(FDI)政策の改善、インダストリー4.0への移行や、注目度が増している電気自動車(EV)に関わる新たな域内合意、そして再生可能エネルギーとサプライチェーンの強靭化などの要因がとりわけ大きいという。「ASEAN投資レポート2023」から、8つの注目すべきポイントを紹介する。

2022年、世界のFDIはパンデミック後の東南アジアにおいて加速し、過去最高の2,240億米ドル(約33兆8,240億円)に達した。

こうした動きの中心となったのがシンガポールで、FDIの約60%を受け入れている(p.5:「ASEAN 投資レポート」における出典ページ。以下同様)。また、マレーシアやベトナムにおいても投資額が過去最高となった。こうした投資トレンドを強力に牽引するのは、主に製造業の力強い回復、デジタル経済の急成長、サプライチェーンの戦略的強化といった要因だ(p. 8, 11)。多国籍企業(MNCs)もまた、ASEAN地域全体で積極的な拡大に向けた事業展開を引き続き行っており、その詳細は2023年12月20日に発表されたASEAN投資レポートに記されている。

 

「ASEAN投資レポート」における8つの注目ポイント:

1. ASEANにおける投資政策環境の改善:2021年から2022年にかけて、 ASEAN加盟各国は投資政策措置を24件講じ、うち16件はFDI促進に向けたものであった。この中には、保険、再生可能エネルギー、通信といった分野において、自由化を進める政策や完全な外国資本による事業所有を認めるものなどが含まれている。例えば、ベトナムは保険分野を外資に完全開放し、フィリピンでは再生可能エネルギー分野における外資の出資制限が撤廃された。インドネシアは投資省を設立して同国内での事業展開が容易になるよう支援している(p. 31)。

2. FDIを加速させる新たな域内合意:デジタル経済、インダストリー4.0への移行、電気自動車(EV)エコシステム構築・投資促進に関する新たな域内合意が、域内全体にわたって経済協力の原動力となり投資を促進する中軸となっている(p. 33)。

3. FDIの大部分を惹きつける主要産業:製造業、金融、卸小売業、デジタル経済関連分野がFDIを主に受け入れ、受入額の86%を占めた。製造業への投資だけで史上最高の620億米ドル(約9兆3,620億円)に上り、同産業の堅調な回復と強靭性を示した(p. 8)。

4. 主要投資国は米国、英国、日本:米国が首位に立ち、ASEAN域内からの投資と日本がそれに続いた。最も増加したのは英国からのFDIで、2021年のマイナス30億米ドル(約4,530億円)から100億米ドル(約1兆5,100億円)となり、特にシンガポールの卸小売業、金融、専門・科学サービスの各分野で急増した。上位10の国と地域からのFDIがASEANへの投資全体の71%を占めた(p. 11-12)。

5. あらゆる形態での投資を推進:投資プロジェクト数は、国際投資における3つの参入形態(公表された「グリーンフィールド投資プロジェクト」、「国際プロジェクトファイナンス」、「海外企業買収(M&A)」)すべてにおいて増加した。公表されたグリーンフィールド投資のほとんどがサービス業や製造業を対象とし、国際プロジェクトファイナンスの大半はインフラ関連企業にかかる取引、M&Aの圧倒的大多数はサービス業に集中していた(p. 19-22)。 

6. 再生可能エネルギーサプライチェーン―FDIの新たな柱:これには再生可能エネルギー発電だけでなく、送配電やテクノロジーソリューションに関する投資も含まれる(p. 47)。例えばカンボジアにおいては、太陽光発電設備の製造に関連する投資が6倍に増加し、2022年には約1億米ドル(約151億円)に達した(p. 24)。

7. EVサプライチェーン投資の急成長:ASEANのEVセクターに対する投資は、2022年には180億米ドル(約2兆7,180億円)に急増した。前年から6倍の伸びを示し、インドネシア、マレーシア、タイが主要な投資先として注目を浴びた(p. 66)。FDIを後押しした要因として、主要原材料が容易に利用可能であること、サプライヤーと近接していること、さらにエネルギー移行関連政策に重点が置かれていることなどを挙げることができる(p. 79)。

8. ASEANにとっての新たな国際サプライチェーンの好機:近年の地政学的情勢やパンデミックに関連する混乱、そしてコストの上昇も相まって、グローバルサプライチェーンに変化が生じている。投資先を求める企業は、リスク管理のためにエレクトロニクス産業などで生産拠点を分散・拡大しつつあり、ASEAN地域に著しい利益をもたらしている。例えばグーグル(米国)は、Google Pixelスマートフォンの生産を域内で拡大し、インフィニオン(ドイツ)は、インドネシアのバタム島においてサプライチェーン施設を拡充し輸出能力を向上させている。HP(米国)もタイで引き続き事業を拡大している(p. 41)。 

2022年にFDIを惹きつけたASEANの素晴らしいパフォーマンスは、この地域の明るい見通しを示している。グローバル経済は依然として不確実ではあるものの、投資環境を改善し、サプライチェーンの変化を見極め、持続可能な産業分野に注力するよう引き続き取り組んでいくことで、ASEANは国際投資家にとって魅力的な投資先としての地位を確立することができるだろう。
 

東南アジアについて、そして域内でどのような事業展開が可能かについてのインサイトが詳細に解説されているガイドブック「A SEA of Opportunities」(英語)はこちらからダウンロードできます。

*1米ドル=約151円(2024年3月22日時点)

主力産業一覧

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  • 「未来の航空宇宙都市」と呼ばれるシンガポールは、130社を超える航空宇宙業界の企業を擁し、アジア最大級で最も多様なエコシステムを誇ります。一流企業や宇宙産業スタートアップ企業をはじめとして成長を続ける企業が拠点を置いています。

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  • シンガポールは、アジア市場への玄関口であり、世界トップクラスの消費者向け企業の多くが、環太平洋の拠点としてシンガポールを活用しています。

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  • 今日、主要なガジェットにはシンガポール製の部品が使用されています。エレクトロニクス産業の一流企業は、シンガポールで未来を設計しています。

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  • シンガポールの洗練された精密工学(PE)の能力と先進の製造技術で主要分野である高度な製造な地域ハブとしての強みを反映しています。

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  • シンガポールは、プロフェッショナル・サービス企業に最適なハブであり、国際的な労働力と信頼できる規制と枠組みを提供します。

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  • アジアは世界的な都市化のメガトレンドの中心であり、人口集中や公害、環境悪化などの都市問題の軽減を目指して、各国政府はスマートで持続可能なソリューションの開発を推進しています。大企業のいくつかはシンガポールを拠点として、アジアのために持続可能なソリューションを商業化すべく、革新、試行、連携を進めています。

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