医療技術

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医療機器 業界概要

アジアの医療技術革新の拡大傾向に乗じてアジア地域のビジネス機会を活かし、グローバル医療技術企業30社(バイオセンサーズ、ベクトン・ディッキンソン、アルコン、ヒルロム、さらにはシンガポールの新興企業であるヘルススタッツやベレダス・ラボラトリーズなど)が技術・製品開発などの分野の研究開発をシンガポールで行っています。 2011年、シンガポールにおける医療技術産業は生産高43億シンガポールドルに達し、約9,000人の雇用創出に寄与しています。

医療技術ハブ(Medtech Hub)、バイオポリス、Tuasバイオメディカル・パークなどの専用インフラは、バイオクラスターにとって事業展開のしやすい環境を提供しています。 また、医療技術企業は、公的機関の研究者や臨床医とのパートナーシップ、大手グローバル企業が提供する先進技術、医療機関の実証用インフラを利用して、革新的なアイデアを取り入れることができます。 医療技術企業がシンガポールに魅力を感じる主要因として、既存のエレクトロニクス・精密工学産業の支援、受託製造サービスの普及、リバースロジスティクスサービス、減菌サービス、および優れた総合的な付加価値ロジスティクス・サービスなどが挙げられます。

優位性

世界的な医療技術ハブ

医療技術におけるアジアの要衝、シンガポールに拠点を置く医療技術企業は30社を超え、商業規模の工場を建設して、アジアおよびグローバル市場向けの医療機器を製造しています。また、世界トップクラスの医療技術企業10社すべてがシンガポールに地域統括本部を設立し、アジア地域の事業拡大を図っています。シンガポールに製造部門、研究開発部門および本社機能をもつ大手グローバル企業として、AB SCIEX、バクスター・インターナショナル、ベクトン・ディッキンソン、バイオトロニック、ホーヤ・サージカル・オプティクス、ライフテクノロジーズ、メドトロニック、シーメンス・メディカル・インストゥルメンツなどが挙げられます。

台頭するシンガポールのバイオメディカル・サイエンス・セクターの中でも、医療技術産業の生産高は2000年の15億シンガポールドルから2011年には約43億シンガポールドルへと3倍近く増加しました。 同時期、労働力はおよそ4,000人から9,000人へと倍以上となりました。 2015年までには、医療技術セクターは製造生産高50億シンガポールドルを達成することを目標にしています。

シンガポールでは、注射器、カテーテル、研究用器具、科学分析機器などさまざまな医療製品が製造されており、コンタクトレンズは国際市場の10パーセント、質量分析装置は世界需要の40パーセント、DNA分析装置のマイクロアレイや熱循環装置は世界総需要の70パーセント以上を当地で生産しています。

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製造拠点

シンガポールは、グローバル市場向けに最先端の装置・医療機器を製造するための拠点として企業から高い信頼を得ています。 2012年、ライフテクノロジーズはシンガポールにGlobal Instrument Centre of Excellence(グローバル・インスツルメント・センターオブエクセレンス)を設立し、次世代シーケンシング・分子診断装置などの設計・製造を行うと発表しました。 また、Ion Torrent社の Personal Genome Machineの製造を、ライフテクノロジーズの米国外唯一の内部装置製造施設であるシンガポールの製造拠点に移転する予定です。世界最大の独立系医療機器メーカー、メドトロニックも、高付加価値の心臓デバイスとリードの製造拠点をシンガポールに置いています。2011年、同社初のペースメーカーとリード製造施設をシンガポールに開設し、同社のアジア初となる心臓デバイスとリードの製造に乗り出しました。

シンガポールは、医療技術企業が製品の再設計や製造事業の拡張を行うために必要不可欠なエンジニアリング能力を提供しています。シンガポールにおける医療技術部門のISO13485認定を受けた高品質かつ堅固なサプライヤー基盤は、医療技術多国籍企業との協業による豊富な経験を有し、米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMEA)の定める厳密な知的所有権保護基準や規制要項を遵守しています。 機能的には、電子製品の構想・製造・サプライチェーン管理、プラスチック部品の成型、金属の成型・鋳造、セラミックス、表面処理、さらに洗浄、パッケージングや消毒等が挙げられます。

OEMとサプライヤーとの連携を促進・強化する目的で、シンガポールはサプライヤー能力を産業ニーズに合わせて向上させるためのプラットフォームを設けました。

  • 一例としては、EDBが2010年に発足した「能力改善のためのパートナーシップ協定(PACT) 」です。この取り組みはLocal Industries Upgrading Programme(地場産業向上プログラム)を包含する施策として、製造品質と認証要件を満たすべく地場OEMおよびサプライヤーの能力を開発するものです。 シンガポール政府は、5年間に2.5億シンガポールドルを拠出し、対象となるパートナーシップの認証費用の一部を負担することを明言しました。
  • シンガポール製造技術研究所(SIMTech)が主導する医療技術製造コンソーシアムは、2009年にシンガポール科学研究庁(A*STAR)傘下の研究機関として公的出資により26社が参加して発足し、研究機関、バリューチェーン・パートナー、多国籍企業との連携による研究開発の成果を活かすことによって、地場産業を強化し、医療技術の技術・知識移転面での研究開発基盤を構築することを目指しています。 対象分野としては、光学・流体力学、新素材(複合材料・合金など)、および小型・大型工作機で構成される先端製造プロセスなどがあります。
産業に適した人材

アジアの医療業界のニーズに適したグローバル指向の人材を求める企業の要望に応える為に、シンガポールは産業に即した人材の育成を目指しています。 そのためには、多分野(エンジニアリング、レギュラトリーサイエンス=規制科学、臨床)に適した性格と経験を備え、企業固有の医療機器開発サイクルを熟知した人材を育成する必要があります。

こうしたニーズに対応するため、次のような主要プログラムを推進しています。

  • EDBの医療技術IDEAS(Innovate, Design, Engineer for Asia in Singapore=シンガポールにおけるアジアのためのイノベーション、デザイン、エンジニアリング): IDEASプログラムでは、エンジニア、VOC=揮発性有機化合物のスペシャリスト、規制専門家の複合的チームが企業のグローバルおよびシンガポール拠点の研究開発施設での実務を通じて価値ある知識を習得できます
  • シンガポール-スタンフォード・バイオデザイン・プログラム: 同プログラムは、EDBと科学技術研究庁(A*STAR)が米スタンフォード大学と提携し、アジアの医療ニーズおよび市場ニーズを熟知したアジア系医療機器メーカーに対する地域の需要に応えることを目的として発足しました。
  • 現在、シンガポールの医療技術製造業部門には9,000人を超える技能労働者が高度で複合的な職務に従事しています。毎年シンガポールの高等教育機関から20,000人以上の科学工学系の卒業生が就職していることで、この数字はさらに増加する傾向にあります。 企業は関連分野(医薬品、エレクトロニクス、エンジニアリングなど)において30万人を超える熟練労働力の豊富な人材基盤を利用することもできます。 同時に、シンガポール労働力開発庁(WDA)や雇用および雇用可能性研究所(e2i)などの政府機関は、産業パートナーと緊密に連携し、独自の研修プログラムや技能向上制度を通じて継続的に人材能力の開発・強化を図っています。
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イノベーション・エコシステム

アジアの縮図であるシンガポールは、企業が新しい技術・製品イノベーションの開発、アジア地域および国際市場を対象に新しいソリューションやシステムの実証、研究開発・商用化事業の育成を図るうえで最適な拠点となります。

シンガポールの医療技術形成と新興企業の成長促進のため、総計7,000万シンガポールドルを投じてSector Specific Accelerator (SSA)プログラムを設けました。Clearbridge BSA、Singapore Medtech Accelerator、Zicom MedTaccとMedtech Allianceの4社が任命され、高い潜在能力を持った医療技術分野の新興企業を発掘、投資し、市場にアイディアを投入します。また、成功するビジネスを生み出す新興企業を支援するため、経営チームを構築し、規制要件を満たし、潜在的な顧客とのつながりを持つ実践的なアプローチの方法をとっていきます。

また、シンガポールの知識およびイノベーション集約型産業に重点を置いたEDBの企業投資部門であるEDBI (EDB Investments)傘下には、生物医科学専門の投資会社、Bio*Oneキャピタルがあります。 Bio*Oneキャピタルは医療関連のIT、サービス、機器、治療学に携わる革新的企業への投資を行い、過去10年以上にわたってシンガポールの生物医科学産業の成長に重要な役割を果たしてきました。 世界中に40社を超える投資先を擁するBio*Oneキャピタルは、明確な出口戦略の基に重要な市場機会の獲得を目指す革新的な急成長企業の支援を続けていきます。

シンガポールが革新的な医療技術の製品開発を後押しする取り組みに着手して以来、さまざまな成功例があり、その一例として、日系企業メニコンによる世界最薄の1日使い捨てコンタクトレンズの開発があげられます。 「Magic」と称されるこの革新技術は、投資総額1,230万シンガポールドルを投じて設立された同社の海外初研究開発・製造拠点にて開発されました。 また、シンガポールに本社を置くヘルススタッツは、ソフトウェア開発大手のヒューレット・パッカードと連携して、医師と患者が血圧を容易にモニタリングできる無線監視機器を製造しました。

シンガポールに拠点を置く企業は、現地の病院と連携してアイデアを実証することで、商用化までの所要期間を短縮できます。 一例として、エクセルポイントはKK婦人科小児科病院(KK Women's and Children's Hospital)や複数の政府機関の支援を受け、呼吸周期監視システムによって、新生児呼吸異常パターンを検出する画期的なBreathoptics技術を開発しました。

シンガポールは、大規模なフィールドワークを行う目的で多数の研究者を集めることにより、研究開発事業の強化に向けてさらに一歩前進しました。現在、シンガポールには世界各地から6,000人を超える研究者が移り住んでいます。 シンガポールの研究機関やコンソーシアム、研究施設の牽引役として、そして継続性のある起業・ベンチャー体制を築き上げるためにシンガポールに移住した科学的指導者・起業家として、バイオセンサーズのヨーチー・ルー会長およびトライレーム・メディカル社長兼CEOでありクアトロ・バスキュラー社創業者であるエイタン・コンスタンティーノ博士が挙げられます。

国内医療技術の革新的な功績を印象付けたのは、シンガポール-スタンフォード・バイオデザイン(SSB)の発足チームによる「Gaze Tracking for Visual Field Testing in Glaucoma(緑内障視野検査における視線追跡)」をテーマとする研究です。同プロジェクトは科学技術研究庁(A*STAR)から50万シンガポールドルのBiomedical Engineering Programme(BEP)Grant Call(A*STAR生物医科学工学プログラム助成金)を獲得しました。 同チームはSingapore National Eye Care Centreおよびシンガポール国立大学(NUS)コンピューター解析部と連携し、従来の方法に革新的な手法を採用する取り組みを進めていきます。 さらに、SSB第二次研究チームは、医療技術のイノベーションが評価され、初のRobert Howard Next Step Awardを受賞しました。DiaLockチームとして腹腔鏡手術に伴う出血を処置するより安全性の高い方法を紹介しています。同チームは今後もA*STARからの助成金BEPを活用してプロジェクトに取り組みます。

NUSのMedical Engineering Research and Commercialization Initiative(MERCI)は、医療機器の技術革新を通じて、患者に有益かつ実用的なソリューションを提供することを目指しています。 MERCIは経験豊かな医師、および医療機器産業に携わる技術者・実業家のチームが率いています。 この構想の中心には、体系的かつ低リスクの運用モデルに基づいて、シンガポールの医療制度に有益な低コストかつ革新的で、臨床試験の実行可能なソリューションを開発するという目標があります。

シンガポール政府はさらなる研究に投資を行うことで、躍進する医療技術産業に引き続き力を注いでいます。 2010年、シンガポール政府は、2011〜2015年にかけてバイオメディカル・サイエンス研究に37億シンガポールドルを投資することを発表しました。 これは過去5年間の投資と比較して12パーセントの増額となり、シンガポールの経済競争力を高めて持続的成長を遂げ、アジアのイノベーションの中心としての地位確立を図るための長期戦略として、バイオメディカル・サイエンスの研究開発事業が依然として高い優先順位を有することを示しています。

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技術と官民連携パートナーシップ

企業は、シンガポールの公的研究機関の科学者と連携して、医療分野の技術革新・アプリケーションの開発に取り組むことができます。 これら公的機関は、ライフサイエンス機器・医療機器の画期的なアプリケーションに転換可能な生体画像処理、細胞生物学、材料工学、マイクロエレクトロニクス、ナノテクノロジーなどの多方面にわたるさまざまな技術分野において高度な技能を確立しています。

企業は、シンガポールの公的研究機関の科学者と連携して、医療分野の技術革新・アプリケーションの開発に取り組むことができます。 これら公的機関は、ライフサイエンス機器・医療機器の画期的なアプリケーションに転換可能な生体画像処理、細胞生物学、材料工学、マイクロエレクトロニクス、ナノテクノロジーなどの多方面にわたるさまざまな技術分野において高度な技能を確立しています。

米国ノースカロライナ州に本拠点があるBioVenture Centre(バイオベンチャー・センター)は、シンガポールにて慢性症状・疾患の細胞・体外診断、および生物学的療法、細胞、生体組織などの分野の技術開発に取り組んでいます。 こうした取り組みによって新しいベンチャーおよび顧客に最大限に貢献することを目指しています。

主要なプラグ・アンド・プレイ・インフラ

シンガポールは、医療技術企業の資本投資負担を軽減し、コストの柔軟性を高めるためにインフラへの投資に力を注いでいます。 Medtech Hubはシンガポール初の医療技術産業専門施設として、国内外の製造業、供給元、サービス・プロバイダーなどの医療技術企業に対して、共有設備が利用可能な統合拠点を提供します。 医療技術産業は高度に規制された業種であるため、Medtech Hubでは適正製造基準および適正流通基準に関するガイドラインに従って、共通の減菌室、共用通路、倉庫施設を提供します。 こうした環境は、製品の製造コストとリスクを軽減し、規制要件を満たす上で有益です。

バイオメディカル・サイエンスの主要研究拠点であるワンノース地区のバイオポリスは、官民の重要なバイオメディカル関連研究所、機関、組織を擁し、 基礎となる創薬、臨床開発、医療技術研究を包含した、ライフサイエンスに関する研究開発のバリューチェーン全体の発展を支えています。 バイオポリスでは、科学者、ハイテク起業家、研究者間の協調的な環境を整備し、最先端の設備、科学インフラ、専用サービスを利用できるようにすることで、企業のR&Dコストを大幅に削減し、開発期間を短縮することができます。

バイオポリスに隣接する フュージョノポリスは、自然科学・工学分野を専門とするシンガポールの公立研究機関を擁しています。 この戦略的ロケーションにより、バイオメディカル・サイエンスと自然科学・工学分野のシナジーを活かしてシンガポールの医療技術革新能力の向上を図っています。

先進性

世界の人口の半数が暮らすアジアでは、社会の高齢化とともに富裕層が増加して、新たな成長のチャンスが生まれています。 アジアの高齢者人口は現在の2億700万人から2050年には8億5,700万人へと激増し、増加率は314パーセントに達すると予想されています。

高齢化、慢性疾患の増加に中間層の富裕化が重なって、高品質の医療技術製品に対する需要が高まっています。 このような状況によって、グローバル医療技術企業がアジアでの存在感を拡大し、地域の医療需要に応える大きなチャンスが生まれています。 アジアの医療市場規模は2009年の2,460億米ドルから2012年には3,490億米ドルに達すると予測されており、この数字からもアジアが最有望市場であることが窺えます。

世界の医療技術企業がアジアの規制の現状と臨床ニーズの多様性・複合性を切り抜ける道を模索している中、シンガポールはアジアの玄関口として重要な役割を果たしていきます。 アジア地域の人材を確保し、ビジネスとイノベーションを促進する安定した環境を活用することができるため、イノベーションと売上増加の両面においてアジアでの成長が加速されます。

アジア地域への市場参入を目指す医療技術企業は、シンガポールのビジネス促進政策を活用して短期間で容易に事業経営を開始することができます。 会社登記はオンラインで15分、臨床試験は3〜6週間で認可され、製造設備は24カ月〜36カ月で操業可能になります。

国内の医療技術企業および増加する外資系企業のイノベーション促進環境を育成するため、シンガポールは「ソフト」と「ハード」の両面で強固なインフラを整備しています。 「ソフト」面では、政府による知的所有権の保護、科学・工学の主要能力強化、顧客ニーズ・法規制専門職の人材基盤等が整備・施行されています。 「ハード」面では、民間研究施設と公的研究機関が同一敷地内にある専用研究キャンパス、バイオポリスとフュージョノポリスを含む、官民連携と起業家ネットワークを構築して新規イノベーションの育成を促進しています。

シンガポールは「アジアのバイオポリス」として世界を牽引するバイオメディカル・サイエンス・クラスターとなることを目指しています。 この分野の産業資本、人的資本、知的資本を築くため、政府はこれまでに50億シンガポールドル以上を投資し、バイオメディカル・サイエンス産業のさらなる発展を図っています。 アジア地域の医療ニーズはいまだ十分に満たされているとはいえず、医療技術企業は今後さらなるビジネスチャンスをつかみ、経済的存在感を拡大することができるでしょう。

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関連リンク(英語)

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モノクル誌の協力のもと、EDBは比較的小規模な国土面積や人口をものともせずシンガポールを高水準の国に押し上げている人、場所、製品を紹介します(モノクル誌で出版された内容となります)。