シンガポールの人材と知的財産の推進、研究開発に適した環境
シンガポールに立地を定めることとなった、さらに重要な側面として、シンガポールの高い先進性があげられる。「カジノゲーミング産業向けの製品を供給するためには、高いセキュリティレベルの製造施設を維持することが非常に重要です。シンガポールはセキュリティが高く、社会インフラも整備されており、理想的な環境です」。(平野氏)また、シンガポールは、世界経済フォーラムの調査で、知的財産(IP)の保護において世界第2位にランクされている。進歩的な知的財産制度を推進することで、シンガポール政府は、適切なレベルの規制がビジネスの利益を保護しつつ、自由なアイデアの交換を可能にしている。カジノゲーミング産業のパイオニア企業であり、500件以上の特許を保有しているエンゼルグループにとって好ましい環境と言える。現在、エンゼル・マニュファクチャリング・シンガポール社は、シンガポールのグローバルな感性を持った優秀なシンガポールの人材を活用しさまざまな活動を行っている。「現在当社では約80名のスタッフが製造及び開発を行っています。そのうち約60名がシンガポール人です。シンガポールの教育レベルは高く、先端技術の知識やスキルを持つ人材が多く、ポテンシャルを持っている人が多いことが魅力です。」(平野氏)こうした人材の採用に加え、研究開発に適した環境もシンガポールを選んだ理由の一つとなっている。「シンガポールは先端技術を持っている大学や企業が近くに存在し、いつでも共同開発に取り組める環境です。またJIDにはさまざまなネットワークがあり、スピード感をもって共同開発に取り組めることに期待しています。」(平野氏) エンゼルグループは、シンガポールに製造・研究開発拠点を置くことで、東南アジアを中心とした各国の需要に迅速に対応し、高い教育レベルの人材と、共同研究のネットワークが豊富なビジネス環境によって、先端技術を駆使した製品を開発している。
次世代製造開発拠点ジュロン・イノベーション・ディストリクト
ジュロンイノベーションディストリクト(以下、JID)は、シンガポールの製造業が集積するエリアの中心に位置する次世代製造開発拠点だ。600ヘクタールの広大な敷地では、各研究機関やテクノロジー企業などが集まっており、次世代製造技術におけるアイデアやイノベーション開発や、人材に対するスキルアップが行われるワンストップハブである。さらに開発された新しい製造技術やソリューションを実際に試すことができるシンガポール最大のリビングラボでもある。ここでは、3Dプリントや5G、自律走行車などのアイデアや技術が開発され、試作とテストベッドが行われており、これらのイノベーションをスピーディに市場に投入することができる。JIDには、企業のi4.0プロジェクトをサポートする最先端の研究機関やテクノロジープロバイダーが集まっており、メーカーにとってもユニークな環境が整っている。一般的な工業団地とは異なり、JIDは車の使用を軽減したサステイナブルな設計となっており、敷地内は緑に囲まれた公園のような作りだ。クリーンでグリーンな先進的な製造環境は、従来の製造現場のイメージとは異なり、そこで働く人々に快適な職場環境を提供している。また、JIDはシンガポール初の地下専用物流ネットワークを構築し、商品移動の効率化を図るとともに、地上のスペースがビジネスや地域の人々などのコミュニティのために開放されている。
*ビジネスリサーチ社「情報技術の市場レポート2021年版」コビット19の影響と2030年までの回復