勢いづくシンガポールの代替タンパク質業界
シンガポールでは現在、国内企業のみならず多くの外国企業が、代替タンパク質の研究開発やビジネスを行っている。
ここ最近では、細胞培養技術を持つ日本のスタートアップ企業インテグリカルチャーが、エビや甲殻類の細胞培養開発を行うシンガポールのスタートアップ企業Shiok Meatsと共同で、2020年にエビの培養肉の研究開発を開始した。
また、代替卵や培養鶏を開発するアメリカのスタートアップ企業Eat JUSTが、植物由来のタンパク質を生産するための試作的役割を果たす工場、パイロット・プラントの設置場所としてシンガポールを選び、2020年に工場の建設を発表した。
これらはほんの一例に過ぎず、シンガポールの代替タンパク質業界が活性化している理由を、「シンガポールにはイノベーションが起きやすい環境や、販売や生産の面での協力体制が整備されているから」とジョン・エン氏は説明する。そして「シンガポールで活動する代替タンパク質関連各社は、いまにもイノベーションを起こそうとしています」と続ける。
政府機関のサポートと公的資金投入でイノベーションを加速
シンガポールは国を挙げて代替タンパク質産業の育成に取り組んでいる。その一つがシンガポール企業庁(ESG)で、世界の代替タンパク質業界にはどんなマルチプレイヤーがいて、どんなイノベーションが起こり得るのかを調査し、スタートアップ企業や起業家をサポートするアクセラレーター機能の役割を果たしている。
代替タンパク質プロジェクトへの投資も活発で、長期的な公的研究開発資金を確保。その額は1億4,400万米ドル(約157億9千万円)にも上る。
加えて、シンガポールにはシンガポール食料・バイオ技術革新研究所(SIFBI)、臨床栄養研究所 (CNRC)といった公的な優れた研究機関があるため開発能力が高い。また、 TemasekとA*STARの共同設立によるFood Tech Innovation Centre、BuhlerおよびGivaudanが共同で開設したProtein Innovation Centre、技術研究所のFoodPlant@Singapore Institute of Technologyをはじめ、産業界のための研究開発インフラも備えている。