シンガポール政府は中小企業や新興企業を含む業界ベンダーとの連携により、データ解析やセンサー、モノのインターネットのセンサーネットワークとデータセンターを結ぶ通信基盤の技術開発を行います。シンガポールの目指す、生活のあらゆる場で情報通信技術を活用できるデジタル社会であるスマート国家を実現する上で必要となる技術の開発が促進されます。
特に、シンガポール全土において接続性、データ・動画分析、複数の政府機関間でのデータ共有を可能とするセンサーネットワーク計画、スマートネーションセンサープラットフォームに重点的に取り組みます。このプロジェクトは2015年に情報通信メディア開発庁(IMDA)によって初めて公開され、以前はスマート・ネーション・プラットフォーム(SNP)と呼ばれていました。
今年4月、リー・シェンロン(Lee Hsien Loong)首相は、スマート国家構想が当初の期待通りの速さで進捗していない旨をコメントしました。スマート国家計画を加速するため、3月末、首相府直轄でプロセスの合理化と加速化を目指す、スマートネーション・デジタルガバメントグループ(SNDGG)にGovTechが組み入れられました。
2016年の支出と作業の大部分は、プロジェクトの基盤構築に充てられました。今年の予算が昨年より約3億USD(327億円)少ないのは、昨年はデータセンターやケーブル配線を含むインフラにフォーカスしていたためです。GovTech最高責任者のジャクリーン・ポー(Jacqueline Poh)氏は「これはスマート国家計画を普及させるために展開する必要のある基本的インフラです。2017年度は、政府はデジタルとデータ、サイバーセキュリティ、スマート国家プログラム導入への取り組みを強化する予定です」と述べました。
有望な企業を評価・認証し、それらの企業が投資や提携をより容易に得られるようにするIMDAの認定プログラムを通して多くの新興企業と中小企業が契約を受注しています。
ポー氏によると、昨年発注した契約総数の3分の2を中小企業が占めています。例えば、シンガポールの新興企業DCフロンティアズは、ネットワークや人と企業のつながりの分析により法的所有権、利害対立、潜在的詐欺などを特定するAI搭載アプリケーションで、その主力製品であるハンドシェークプラットフォームを受注しました。
さらにサイバーセキュリティ戦略では、オンライン攻撃・犯罪に対してより素早く対応・予防できるよう改革が行われています。政府のセキュリティオペレーションセンターは、データ分析とさらなる自動化を通してより迅速に脅威を特定し対応できるよう見直されます。
国立図書館では疑似体験型読み聞かせルームの開発が行われています。ここでは物語を効果的に表現するためにプロジェクションマッピングなど様々な技術を使用しています。電子ブック、オーディオブック、仮想展示を収容する仮想図書館の開発も進行中です。
その他に、MyMaritime@SGでは港湾と海事の特化に注力しています。このシステムにより、港湾関連サービス・許可・承認手続きの簡素化を促進できるようになり、入出港関連の行政手続き書類の提出には、海事シングルウィンドウプラットフォームが使用される予定です。
また、シンガポール政府は大学や公共機関とも連携しロボット工学や医療などの技術開発を継続していく考えで、テマセクポリテクニックとの連携による在庫管理ロボットプロジェクトや、統合医療情報システムを活用した在宅診断ツールや介護支援ロボットの開発を行っています。
1シンガポールドル(SGD)=79円、1米ドル(USD)=109円(6月9日現在)