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世界的なイノベーションハブとしての成功に向けて

MESSAGE FROM SINGAPORE

  • BRIDGE Magazine

新しい発見を育むうえでは、資金調達以外にも、新しいアイデアや多様な才能にオープンであることが必須になる。世界経済フォーラムの国際競争力レポートでも強調されていますが、世界の経済大国では経済成長の鍵はイノベーションであると考えられており、イノベーションを引き起こすための能力開発に力を入れています。

写真提供:A*STAR Lim Chuan Poh 長官

世界で研究開発にかけられる費用は、2016年に過去最大の1兆7千億ドル(2兆2500億シンガポールドル)を記録しました。
2017年のグローバルイノベーション指数では、スイス、スウェーデン、オランダが、世界トップ3にランクインし、シンガポールは、7位で、アジアの国で唯一トップ10入りを果たしています。トップ10以外では、韓国が11位、日本が14位であり、経済大国の中でも、日本は依然として世界有数の研究国の一つです。
2000年以降の自然科学の分野における日本のノーベル賞受賞者の数は、アメリカに次ぐ2位でイギリスと肩を並べています。また、日本は、科学の分野、特に、エレクトロニクスや、ロボット工学、自動化技術の分野において、科学的な発見を生み、イノベーションを起こした豊かな歴史を持っており、「世界で最も革新的な企業」の約10%が日本の企業です。
しかし、その一方で、こうした実績にもかかわらず、日本の科学技術・学術政策研究所(Nistep)は、2016年の調査から2ランク落ちた第9位に位置しています。また、2017年のNature Index(日本版)では、2012年から2016年にかけて、日本の科学論文が20%近く減少したことが報じられました。日本のこうした窮状は、その他の国々、特に、発見とイノベーションの開発に集中し、そのハブとなることを目指す国々にとっては、タイムリーな注意喚起となっています。

障壁を打ち破るために

日本は、世界で最も研究開発にお金をかけている国の一つです。2016年度では、GDPの約3%に当たる18兆9千億円を投資しています。しかし、その研究開発予算は、2001年から横ばいのままです。加えて、2017年度には、国立大学の助成金が、2004年比10%減となり、正職員の削減も行われました。その苦境の中においてさえ、資金調達は最も少なくなってきているのです。
オープン・サイエンスが科学研究の世界的なトレンドとなっている現代、日本は、シンガポールのような革新的な経済開放を行う国のように、根強い国内主義を抜け出す必要があります。OECDは2015年度の報告書において、日本に「グローバル・イノベーション・ネットワーク」への参入を促しています。2014年の日本の研究開発費のうち、国外から調達された割合は、わずか0.4%でした。日本に移住した科学者の割合は、OECD加盟の35カ国の中で最も低く、その結果、学術論文の国際共著や共同特許取得は非常に低いレベルにあります。
こうした状況の最も大きな要因は、文化的なものかもしれません。「階級社会」的な日本の制度において、大半の科学者の立場や職位は、上長の教授が、知り合いとの共同作業を好む傾向が強いという理由だけで、口頭で決まることが多いのです。海外留学した若い日本人科学者たちも、人脈がないかぎり、組織に再び入ることが難しい場合も多いのです。また、日本は、研究を行うために必要なものはすべて日本で手に入る、という日本特有の社会常識に長期間直面しています。このように、たいていの日本の若者は、あえて海外留学する「必要性」を感じていないため、異なる研究環境において、世界の他の最高峰の研究者と共に働く機会を逃している可能性があるのです。
2009年、Nistepは、2002年から2006年にかけて、日本で博士号を取得した60,535名の日本人のうち、博士号取得後、または他の機会に、海外に行ったのは、わずか2%に過ぎないことを報告しました。これは、日本の外国人留学生の数と同様に低い数値です。2016年のNISTEPレポートでは、世界の外国人留学生の4%が日本に来ていることを明らかにしましたが、この数値は、他の研究大国と比較すると相対的に低い数値です。アメリカは、外国人留学生の数が最も多く、24%を占めています。次に多いのがイギリス(13%)、フランス(7%)そしてドイツ(6%)です。日本人科学者が海外経験をもっと得ることは重要ですが、その一方で、海外の優秀な科学者を日本国内に惹きつけるための環境を築くことも同じように重要です。しかし、これを実現するには大きな壁があります。オハイオ州立大学で日本の科学および高等教育の歴史を専門とするJames R. Bartholomew教授は、日本の科学の成長にとって「唯一かつ最大の課題」は、言語にあると語っています。例えば、一部の補助金申請は、日本語でのみしか提出できません。また、理研の研究責任者は、行政との会合において、通訳によって内容は理解することができますが、協議されている自分の研究にどのような影響があるのかといったニュアンスを捉えることができないと記述しています。

 

ダイバーシティ(多様性)とコラボレーション(共同研究)

シンガポールは、アジアの国として、最適な教訓を提供しています。文部科学省が発表している2016年の第5期科学技術基本計画では、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」とすることを目指しています。報告書では、日本の科学技術は、「我が国の国境に限定されているために、その潜在能力を発揮できていない」と認めています。同時に、こうした状況を打開するための優先事項を提案しています。例えば、知的専門家をより多く育て、確保するための、オープン・サイエンスの促進や、多様性やキャリアモビリティを促進するために、科学、テクノロジー、イノベーションの取組に対する「基本」を強化すること、更に、国内外の問題に取り組むための国際共同研究を構築することなどです。
まず初めに、コミュニケーションに対する最も基本的なハードルに対処することが、日本政府の最優先事項です。既に日本は、英語の資料を出版したり、科学文献の事実上の言語として英語を強固なものにするなど、海外の学者や留学生に更に役に立つような内部制度に改革しています。また、新しい知識や価値を生むためには、「多様な専門分野の人々を結集してチームを構成し、行動することがますます重要である」と認めています。
次のステップは、自国の科学的専門知識を補完するために、より多様な科学コミュニティを構築することです。世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)や、イノベーションの芽を育む個人型研究のプログラム「さきがけ」のような取り組みは、一定数の世界トップレベルの海外研究者を雇用する試みとして導入されました。また、日本の大学は、より多くの若手研究者や外国人研究者を雇用し、更なる国際的な視野を持つように促されています。例えば、2011年に開設された沖縄科学技術大学院大学は、教員と学生の50%を外国人にすることが定められており、世界的な科学者を惹きつける先駆的な役割を果たしています。また、科学技術の発展や資金調達において、指導的な役割を果たす文部科学省の交換留学プログラムに基づき、数年間で3万人以上の国際的な研究者を招いています。更に、より多くの現地の研究者が、海外で長期間研究を続けられるための取り組みも行われました。こうした取り組みによって、日本は、移民規制を緩和し、熟練の専門家を永住者として迎え入れるスピードを上げ、最大限の成果を挙げるために注力しています。

日本で実施されているもう一つの根本的な変化は、オープンイノベーションの実施です。それにより国内外の大学や研究機関、および企業との共同研究を促進しています。過去10年間にわたり、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)は、日本の研究機関や企業との共同研究は着実なステップアップを見せており、その多くは代表事務所とR&Dセンターを設立しています。例えば、A * STARと大阪商工会議所は、2016年にオープンイノベーションを含む協力関係を拡大する契約に調印しました。シンガポールはこうしたパートナーシップを重要だと考えています。こうしたパートナーシップは、日本の提携先だけではなく、シンガポールの研究・イノベーションの生態系を豊かにし、多様性に付加価値を与え、研究機関や企業にとって新たな機会を創造するのです。

競争力をいかに維持していくか

より深い意味でも、こうした日本との取組は、研究とイノベーションのハブを魅力的なものにする重要な成功要因であり、私たちも判断を研ぎ澄まさせることができます。そして関連性と競争力を保つ環境を醸成し保持し続けることの重要性を意識させてくれます。
昨年、未来経済委員会(CFE)が提示した報告書に対し、リー・シェンロン首相は、書信でこう述べています。「どの産業が衰退し、どの産業が興隆するかは誰にもわからない。確かなことは、シンガポールは、貿易、人、アイデアに対してオープンであり続けなければならないということだ。また、人々や企業が世界におけるチャンスを掴むことができるように、深い能力を構築しなければならない。」
来年2019年は、シンガポールがイギリスの無関税都市として「建国」されて以来200年目となります。今、シンガポールの自由貿易港としての長い歴史と豊かな過去を祝う準備が進められています。リー・シェンロン首相は、年初メッセージで、シンガポール全国民に対して、この機会を利用して、次のように呼びかけました。「私たちの国がどのようにしてここまで来たか、私たちはどのようにして、はるかここまで至ったのか、そして、私たちはこれからどのようにして共に前進していくのか、思いを馳せよう」異なる時代をまたぐ一つの重要な要素は、「貿易、人、アイデアに対してオープンであり続けること」です。

主力産業一覧

主力産業一覧
  • 「未来の航空宇宙都市」と呼ばれるシンガポールは、130社を超える航空宇宙業界の企業を擁し、アジア最大級で最も多様なエコシステムを誇ります。一流企業や宇宙産業スタートアップ企業をはじめとして成長を続ける企業が拠点を置いています。

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  • シンガポールは、アジア市場への玄関口であり、世界トップクラスの消費者向け企業の多くが、環太平洋の拠点としてシンガポールを活用しています。

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  • シンガポールは、東西のクリエイティブカルチャーが交差する場所であり、拡大を続けるこの地域の消費者基盤へ向けて開かれた扉でもあります。世界的ブランドが、地域統括会社を構えており、トップクラスのクリエイティブな企業がシンガポールを拠点としています。

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  • 今日、主要なガジェットにはシンガポール製の部品が使用されています。エレクトロニクス産業の一流企業は、シンガポールで未来を設計しています。

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  • 精製、オレフィン製造、化学製品製造、ビジネスと革新力が強力に融合するシンガポールは、世界最先端のエネルギーと化学産業のハブに数えられています。100社を超えるグローバル化学企業が主要な事業を当地に構えています。

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  • アジアのデジタルの中心都市として、シンガポールは情報通信技術 (ICT) 企業が選ぶ拠点となっています。世界クラスのインフラ、人材、活気のあるパートナーのエコシステムを提供しています。一流企業と連携して、最先端の技術とソリューションを開発し、シンガポールのビジョンであるスマートネーションと地域および世界の市場を支えています。

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  • アジアの流通のハブとして、当地域内外への世界クラスのコネクティビティを提供します。安全で効率的なロジスティクスと、サプライチェーン管理ハブとしての妥当性を以て、シンガポールは地域の境界を超えた取引と消費に貢献しています。

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  • シンガポールは、医療技術企業がこの地域で成長するための戦略的な拠点です。今日、多くの多国籍医療技術企業がシンガポールを拠点として、地域本社機能や製造、研究開発を行なっています。

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  • 資源豊かなアジアの中心に位置するシンガポールは、農産物、金属、鉱物のグローバルハブです。我が国のビジネス環境は、強力な金融、サプライチェーン管理、技術力を以て、世界をリードする企業を引き付けています。

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  • シンガポールは、アジアでも主要な石油 ・ ガス (O&G) 装置とサービスのハブであり、3,000社を超える海洋・オフショアエンジニアリング (M&OE) の会社があります。世界クラスの機能と優れたコネクティビティは、アジアの強力な成長の可能性に着目する多くの企業をシンガポールに誘引しています。

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  • シンガポールが有する優れた人材、強い生産能力、研究開発のエコシステムは、製薬やバイオテクノロジー企業を誘引しています。企業はシンガポールから世界中の人々に薬を提供し、アジア市場の成長を担っています。

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  • シンガポールの洗練された精密工学(PE)の能力と先進の製造技術で主要分野である高度な製造な地域ハブとしての強みを反映しています。

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  • シンガポールは、プロフェッショナル・サービス企業に最適なハブであり、国際的な労働力と信頼できる規制と枠組みを提供します。

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  • アジアは世界的な都市化のメガトレンドの中心であり、人口集中や公害、環境悪化などの都市問題の軽減を目指して、各国政府はスマートで持続可能なソリューションの開発を推進しています。大企業のいくつかはシンガポールを拠点として、アジアのために持続可能なソリューションを商業化すべく、革新、試行、連携を進めています。

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