2019年の春節は2月5日だ。その前後はシンガポールでも、新年を迎えるにあたり、町中でにぎやかなお祭り気分を味わうことができる。そんなシンガポールの春節は、日本のお正月と意外な共通点も多い。中でも代表的な存在が“お餅”だ。お餅は日本のお正月を代表する食べ物で、さまざまな使われ方がされる。新たな年神さまを迎えるため鏡餅が供えられ、新年の縁起物としてお雑煮を食べるのが平安時代からの伝統である。また、年末年始の風物詩として行われる餅つきは、今でも子供たちに人気のイベントだ。一方、シンガポールの春節でもお餅は欠かすことが出来ない存在だ。シンガポールのお餅は、「年糕(ニェンガオ)」と言われるもので、中華圏の新年の食べ物では最も人気がある食べ物の一つである。中国だけではなくフィリピンやマレーシア、タイなど東南アジア諸国で広く食べられており、国によって食べ方はさまざまだ。シンガポールのニェンガオはとても甘く、スライスして油で揚げたり、乾燥したココナッツフレークと一緒に食べる。日本のお餅と同様、ニェンガオにはさまざまな意味合いが込められている。
例えば、名前のニェンガオという発音が、同じ中国語の“年高”と同じということから、「年ごとに昇進、繁栄すること」を意味し、それを食べることで「自分自身をより高く育てる」という意味を持っている。日本のお雑煮が、餅は長く延びて切れないということから、長寿を願う縁起物であることと似た理由だ。また、ニェンガオは日本の鏡餅と同様、神さまのお供え物としても一般的な存在だ。しかし、神さまへのお供え物としては、日本のお餅と少し違った意味がこめられていて面白い。中華圏では台所の神さまがいて、年末に中国道教の最高神である玉皇大帝のもとに行き、家族の一年の模様を報告するという。その際、家族の悪口を封じ、いいことだけを報告するように甘いニェンガオで台所の神さまの口を封じるのだ。日本の鏡餅とは意味合いこそ違え、どちらも新年がより良い年になり、更なる発展を願ったアジア伝統の風習と言えるだろう。