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ジュロンイノベーション地区、シーメンス、ボッシュ・レックスロスなど企業の投資をさらに誘引

ジュロンイノベーション地区、シーメンス、ボッシュ・レックスロスなど企業の投資をさらに誘引

ジュロン・ウエストで建設中の先進製造用の新たなハブには、今後3年間で巨大メーカーから研究機関まで6つの企業や機関が入居する予定だ。


写真:ITAP展示会で次世代ハイパー・パーソナライズド・ファクトリー・ラインを見学するヘン・スイキャット副首相。同副首相は、東南アジアが地域の一大製造拠点になる態勢が整っている時に、技術革新を促す環境を持つことが重要であると強調した。ストレイトタイムズ写真: ケビン・リム(KEVIN LIM)

その中にはドイツのコングロマリットであるシーメンスが含まれる、とヘン・スイキャット(Heng Swee Keat)副首相が昨年行われた インダストリアル・トランスフォーメーション・アジアパシフィック(ITAP)で述べた。同社はデジタルソリューションを紹介するセンターを開設予定で、同センターは3Dプリンティング技術の導入を目指すメーカーにとって参入障壁が低減されることが期待される。

同副首相によれば、さらにドイツのエンジニアリング会社のボッシュ・レックスロスが、インダストリー4.0の専門家のパイプラインを築くための地域トレーニングセンターを開設する予定だ。

その他は、米国の多国籍企業のフローサーブ(Flowserve)、シンガポールで上場しているモーションコントロールシステムの専門会社のISDNホールディングス、シンガポール科学技術研究庁(A*Star)のシンガポール製造技術研究所(SIMTech )、および国立計量センター(NMC)だ。

これにより、ジュロンイノベーション地区(JID)と呼ばれるこの一画は、製造部門の多様な節点を1個所に集めることで、企業のコラボレーションとイノベーションの形を変えることに一歩近づく。

広さ600ヘクタールのJIDの第1段階は2022年頃に完了予定だ。

シンガポール・エクスポで毎年開催される展示会のITAPで同副首相は、短期的にみて経済が不確実な状況にもかかわらず、東南アジアが地域の一大製造拠点になる態勢が整っている時に、技術革新を促す環境を持つことが重要であると強調した。

インダストリー4.0では、サプライチェーンの最適化を含むさまざまな発展を助ける人工知能と予測分析が導入されてきた、と3日間にわたる同展示会の冒頭で同副首相は語った。

企業は今後テクノロジーの恩恵を享受する一方で、世界貿易への支持の後退や高まる不確実性によって生じた混乱がいっそう深刻化している。

「製造業は圧力を受け、メーカー各社は事業を整理統合しています」と同副首相は述べた。シンガポールでは通常、製造業の貢献が経済全体の約5分の1を占める。

「適応力が高く、生産的で、コスト対効果の高い工場を持つ企業には、イノベーションと改革の余地があり、低迷を克服する力もあります」と付け加えた。

ASEANがそのポテンシャルを発揮するには、ASEAN諸国が一体となって企業を引き付け、地域の能力を高めなければならない、と同副首相は語った。

さらに、たとえばシステムを統合すること、特にデータと情報を統合することで、より価値の高い活動を同地域に呼び込める、と述べた。

またシンガポールは、企業が変革の開始・規模拡大・維持の方法を決める際に役立つスマートインダストリー準備指標(SIRI)の利用を促進している。これにより相互運用性が確保され企業間や国家間でのデータ共有が可能になる、と同副首相は付け加えた。

同時に、シンガポールは製造部門の変革を継続している。シーメンスは、デジタルソリューションを紹介する先端製造業変革センター(AMTC)をJIDに開設する予定だ。同センター内には企業が付加製造製品ラインを体験できるアディティブマニュファクチャリング・エクスペリエンス・センターが設置される。同社がこのようなセンターをドイツ以外に作るのはこれが初めてだ。

シーメンスの上級副社長のレイモンド・クライン(Raimund Klein)氏によれば、同社がJIDへの入居を決定したのは、インダストリー4.0の問題を解決するには他のパートナーとの協働が必要であると認識したからだ。

ボッシュ・レックスロスの地域トレーニングセンターは2020年第4四半期に開設され、製造現場での新手法と新技術に関する製造業向けの標準トレーニングプログラムを提供している。

新たにJID地区に入居し既に活動している6社は、マッキンゼーのデジタル・ケイパビリティー・センター、オートメーション会社のPBAグループ、ソディック・テクノ・センター、日本の自転車部品メーカーのシマノなどだ。

また、11社のグループが、ボッシュ・レックスロス、SkillsFutureシンガポール、JTCコーポレーション、およびシンガポール・ポリテクニックとスキルパートナーシップの覚書を交わす予定だ。

ほかにもJIDでは、A*Starによる「ハイパー・パーソナライゼーション」製造ラインなどのイノベーションが実施されている。

それとは別にSkillsFutureシンガポールはITAPで、最大200人のエンジニアを今後2年間で訓練して配置する「エンジニア4.0のためのワーク・ラーン・ブートキャンプ(Work-Learn Bootcamp for Engineer 4.0)」を発表した。

出典:ストレイトタイムズ

Vibrant Activity in JID

 

JIDを始めとするシンガポールの工業地区で、企業がどのように革新して世界クラスの製造オペレーションを実施しているかを覗こう。

 

[2020年8月] 鹿島建設の初の海外イノベーション・センター

JTCのチャンギ・ビジネスパークに建設されるカジマ・グローバル・ハブは新しい建設技術と研究開発の機能を備える。鹿島建設の同ハブ・プロジェクトでは、日本以外で初めてロボティック・ソリューションの包括的スイートを適用する。このグローバル・ハブは1億SGD(約78億円)を投じて作られ、同社のアジア太平洋本社としても機能する。

 

[2020年8月] 現代自動車(Hyundai Motor)の電気自動車生産施設とイノベーション・センター

韓国最大の自動車メーカー、現代自動車は、2022年からシンガポールで年間3万台の電気自動車を生産する予定だ。同生産施設は延床面積が28,000平米で、2020年10月に着工。また同社は、電気自動車製造工程の試行を含む、自動車サプライチェーン全体にわたる技術を開発・テストするイノベーション・センターをJIDに設立することを、今年すでに発表している。

 

[2019年3月] ソディック・シンガポール・テクノ・センター

ハイテクマシンのグローバルメーカー、ソディック(Sodick)はJIDにソディック・シンガポール・テクノ・センター(SSTC)を開設した。同センターは同社の最新の付加製造技術を紹介するもので、付加製造に関心のある企業はこの施設で同社と協働して新しいアイデアやコンセプトを開発、テスト、および採用できる。

 

[2018年6月] シマノの「 未来の工場 」

シマノはJIDで同社の「未来の工場(FoF)」に着工した。FoFは、先進製造のコンセプトに基づき製造現場を再設計し、一工程内の完全な統合と接続性、および無数のパイロットライン設置を確保する。また、リアルタイム分析の活用により、生産量データに基づく自己最適化が可能だ。同社はすでに、製造工程にロボットと自律走行車を取り入れて従業員の生産性を向上させている。

 

[2017年6月] エンゼルプレイングカード の生産センターと研究開発ハブ

日本のプレイングカードの大手グローバルサプライヤー、エンゼルプレイングカード(Angel Playing Cards)は、JIDに設立する生産センター・研究開発ハブに着工した。投資額は1億米ドル(約106億円)で、日本を除けば同社初の生産拠点・研究開発ハブとなる。同社が同施設を作るねらいは、事業継続能力の向上と顧客対応の迅速化である。

 

[2017年5月] 栗田工業の研究開発拠点

クリタR&Dアジアはクリーンテック・パーク内にあるJTC CleanTech Oneに開設され、都市ソリューション分野の企業、研究機関、およびスタートアップの活気あるエコシステムの本拠地である。この研究開発拠点は研究機関と協力して、最先端技術のタイムリーな情報を入手し、地域内での実証実験を通して市場競争力のある技術を開発する。

 

[2017年3月] グローバルコンサルタント会社マッキンゼーのデジタル・ケイパビリティー・センター

JIDの一部であるクリーンテック・パークに位置する同社のデジタル・ケイパビリティ・センターは、インダストリー4.0によって新たに生み出されたテクノロジーを企業が活用することを支援する。同センターでは企業によるデジタル変革の導入・実行を支援するとともに、実在の会社がどのように新技術を取り入れているかを紹介する。

 

[2016年6月] AGCのアプリケーション開発センター

クリーンテック・パーク内にある同センターは、フルオロケミカル製品の使用のための技術的サポートを提供することにより、熱帯地域向けのアプリケーション開発機能を構築および商品化する。AGCは同センターを通してアジア太平洋地域の顧客によりよいサービスを提供し、先進技術を移転し、同地域の需要と要求に応える製品の開発能力を拡大する。

シンガポールで先進製造技術を導入する企業を支えるための研究開発・人材開発プログラム

 

1.製造におけるハイパー・パーソナライゼーションの研究に3,800万SGD(約30億円)を投資

シンガポール科学技術研究庁(A*Star)のアドバンスト・リマニュファクチャリング&テクノロジー・センターが主導するこの施策は、ハイパー・パーソナライゼーションのソリューションを開発し、これらのソリューションを試験する企業のためのプラットフォームを提供する。同センターは製造業の企業と提携して、動きの早い消費財を生産するスマートでスケーラブルなオートメーション工場ラインを構築する。

 

2.先進製造技術者育成プログラム

JTCと南洋理工大学 (NTU)が立ち上げた同プログラムにより、企業は先進製造技術の訓練を受けた熟練労働者の持続的パイプラインを早くから利用できるようになる。NTUの学部生はインターンシップやプロジェクトを通して先進製造技術に触れることができる。同プログラムに参加した第一陣にはシマノ、ソディック、PBAグループ、コニカミノルタなどの企業が含まれる。

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