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“成長センター”ASEANの発展に日本とシンガポールはどう関わっていくべきなのか〜日本ASEAN友好協力50周年記念対談〜(後編)

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日本とASEANが2023年に友好協力50周年を迎えたことを記念し、特別対談を行いました。お話しいただいたのは、ASEANで長年活動してきた日本アセアンセンターの平林国彦事務総長と、日本シンガポール協会の井上敏副会長。後編では、ASEANのこれまでの発展と日本の寄与、さらに今後について意見が交わされました。

—ASEANはこの50年、安定的に経済成長を続けてきました。2030 年には日本の GDP を超えるという予測もあるほどの経済力で、今後の世界経済を牽引するとして注目されています。そんな“成長センター”ASEANの発展に、日本はこれまでどのように寄与してきたのでしょうか。

平林 まず、ASEANがASEANとして魅力を持ち続けるためには、「中心性」「一体性」「連結性」が不可欠だといわれています。中心性とは、ASEANが地域協力枠組みの中心になるという意味で、一体性とは、ASEAN地域以外の国に結束して対応するという考え方。連結性は、インフラなど物理的、貿易など制度的、また教育・文化など人的な結びつきを指します。

このうち中心性と一体性について、日本は外交努力でASEANを支えてきたと思います。「東アジア首脳会議(EAS)」「ASEAN地域フォーラム(ARF)」「拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)」など、地域の平和を保つための多国間の枠組みに積極的に参加し、安全保障面での協力強化に取り組んできました。

日本はこれまで、ASEANが自身で地域の意見をまとめられるように、陰でサポートしてきました。そうした日本の外交は世界からも高く評価されています。

もう一つの連結性に関して日本は、政府開発援助(ODA)により貢献してきたと思います。ASEANに対するODAは1970〜1990年ごろ重点的に実施され、道路や橋、港、空港、発電所といったインフラ整備が中心でした。そして、それによりビジネス環境が整うなどODAが呼び水となり、民間投資が促進された結果、ASEANの経済は発展してきたのです。
 

—井上さんが長く勤めた清水建設は、民間企業としてASEANの発展を支えてきたことになります。

井上 私が勤めていた清水建設をはじめ多くの建設会社はASEAN諸国の発展のためにインフラ整備や都市開発に関わってきました。

例えば、シンガポールの独立当時課題であった住宅不足を解消するためには、住宅を高層化する必要がありました。1974年から当地で事業展開していた清水建設は住宅開発庁(HDB)による公営住宅の開発に参画しました。プレキャスト工場を設立し、シンガポールの高層住宅に適応したプレキャストを開発、供給するのみならず普及に関わる技術指導まで行い、課題であった住宅の安定的供給に貢献しました。
 

—日本とシンガポールのつながりを中心に、ASEANの経済全体が花開いていった面があるのですね。

井上 以前は西洋や日本の経済モデルが世界に影響を与えてきましたが、今後はシンガポールのような多民族社会のマネジメントを新たなモデルとして取り入れていく必要があるでしょう。両国が協力してアジアからの国際的なルールづくりに貢献し、未来対応のスキル形成をしていく必要があります。未来を創るためには、人の教育や研究・新事業開発への取り組みが欠かせず、日本も真摯にこれらに取り組む必要があります。

平林 シンガポールは企業の経済活動を支える優遇制度がしっかりしているので、企業も、高度人材も集まりやすいですよね。

そしてもう一つ、日本とシンガポールは貿易の面でも、ASEANに影響を与えてきました。日本が最初に経済連携協定を結んだ相手国はシンガポールです。その「日・シンガポール経済連携協定」により関税が削減、撤廃され、貿易自由化の良い面、悪い面を示した功績は大きかったと思います。
 

—その結果、ASEANの多くの国が、経済成長のためにも貿易は重要だと捉えるようになったということですね。そうして2020年には、ASEAN諸国に日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを加えた自由貿易の枠組み「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」が正式に署名されました。

井上 今後、市場アクセス改善やルール整備を通じて、公正かつ開かれた経済秩序を築き、日・ASEAN全体で産業界の競争力が向上することを期待しています。

平林 RCEPが日本、ASEANに大きな経済効果をもたらすことは間違いありません。日本アセアンセンターとしては、輸出競争力が高い企業だけでなく、中小も含めた幅広い企業が自由貿易の恩恵にあずかれるよう支援をしていきたいです。
 

—では、日本とASEANの共栄に向けて、今後日本とシンガポールはどう協力していくべきだと思いますか。

井上 ASEANの「中心性」と「一体性」の強化のために、日本とシンガポールが果たす役割は重要です。

特に、ポストコロナ時代に向けて不確実性の高い国内外の危機に柔軟に対応できるレジリエントな社会を構築し、持続可能かつ社会全体のウェルビーイングを高めることが求められています。

現在、各国が直面している共通の課題として、持続可能な開発目標(SDGs)の達成が重要視されています。その中でも、代替エネルギーの利用が注目されており、ASEANは2050年までに再生可能エネルギーの比率を31%に引き上げることを目指しています。これらの課題に対処するためには、ASEAN各国と50年以上にわたって培ってきた「信頼」に基づく官民連携が不可欠です。

シンガポールは、「シンガポール・グリーンプラン 2030」を政府方針とし、南洋理工大学(NTU)に設立されたEnergy Research Institute(ERI@N)がクリーンエネルギー研究の中心となり、セマカウ島では東南アジア最大のエネルギー実験場として機能しており、南洋理工大学を中心に日本を含む世界中の企業が参加し、太陽光、風力、潮流、ディーゼル、蓄電などの代替エネルギーに関する開発とテストが進行しています。この取り組みはSDGsの達成に向け、地域全体のエネルギー課題への有益な貢献となることが期待されます。

平林 環境問題に取り組まないという選択肢はありませんよね。問題の解決には、若い人のアイデアが欠かせません。いまお話にあったように、シンガポールは研究開発のエコシステムが発達しているので、日本の若い人がシンガポールで研究をすれば、よりイノベーティブなアイデアが生かされていくのではないでしょうか。

井上 そうですね。ASEANにおいて人材が交流する機会を増やしていくことが必要だと感じています。人的ネットワークを構築していくことは、架け橋としての役割を担う日本シンガポール協会の活動の一環です。日本に滞在しているシンガポール人の組織SAiJ(Singapore Association in Japan:在日シンガポール人会)やSGN(Singapore Global Network)との交流を深め、ビジネスのみならず文化面など、幅広く価値を共有できるパートナーを増やしていければと考えています。

日本とASEANは50年にわたり、相互尊重、文化交流、経済協力による絆を深めてきました。これからもますます協力し、ともに発展していくことが期待されます。

平林国彦

1958 年、長野県生まれ。医学博士。大学院修了後約 10 年間、 途上国の病院で技術指導などを行う。2003年から国連児童基金(UNICEF)に勤務し、アフガニスタン、レバノン、東京の各事務所、インド事務所副代表を経て2010年に東京事務所代表に就任。2021年に国際機関日本アセアンセンター事務総長に着任。

井上敏

1956年、大阪府生まれ。大学卒業後、清水建設に勤め、1983年から2023年までの40年間、海外事業に従事。うち20年間はシンガポールに駐在し、拠点長及び地域統括として東南アジア中心に建設事業に参画。2003年から6年間シンガポール建設庁(BCA)のBCA Academy講師として建築技術指導。2023年に日本シンガポール協会副会長に就任。

主力産業一覧

主力産業一覧
  • 「未来の航空宇宙都市」と呼ばれるシンガポールは、130社を超える航空宇宙業界の企業を擁し、アジア最大級で最も多様なエコシステムを誇ります。一流企業や宇宙産業スタートアップ企業をはじめとして成長を続ける企業が拠点を置いています。

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  • シンガポールは、アジア市場への玄関口であり、世界トップクラスの消費者向け企業の多くが、環太平洋の拠点としてシンガポールを活用しています。

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  • シンガポールは、東西のクリエイティブカルチャーが交差する場所であり、拡大を続けるこの地域の消費者基盤へ向けて開かれた扉でもあります。世界的ブランドが、地域統括会社を構えており、トップクラスのクリエイティブな企業がシンガポールを拠点としています。

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  • 今日、主要なガジェットにはシンガポール製の部品が使用されています。エレクトロニクス産業の一流企業は、シンガポールで未来を設計しています。

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  • 精製、オレフィン製造、化学製品製造、ビジネスと革新力が強力に融合するシンガポールは、世界最先端のエネルギーと化学産業のハブに数えられています。100社を超えるグローバル化学企業が主要な事業を当地に構えています。

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  • アジアのデジタルの中心都市として、シンガポールは情報通信技術 (ICT) 企業が選ぶ拠点となっています。世界クラスのインフラ、人材、活気のあるパートナーのエコシステムを提供しています。一流企業と連携して、最先端の技術とソリューションを開発し、シンガポールのビジョンであるスマートネーションと地域および世界の市場を支えています。

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  • アジアの流通のハブとして、当地域内外への世界クラスのコネクティビティを提供します。安全で効率的なロジスティクスと、サプライチェーン管理ハブとしての妥当性を以て、シンガポールは地域の境界を超えた取引と消費に貢献しています。

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  • シンガポールは、医療技術企業がこの地域で成長するための戦略的な拠点です。今日、多くの多国籍医療技術企業がシンガポールを拠点として、地域本社機能や製造、研究開発を行なっています。

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  • 資源豊かなアジアの中心に位置するシンガポールは、農産物、金属、鉱物のグローバルハブです。我が国のビジネス環境は、強力な金融、サプライチェーン管理、技術力を以て、世界をリードする企業を引き付けています。

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  • シンガポールは、アジアでも主要な石油 ・ ガス (O&G) 装置とサービスのハブであり、3,000社を超える海洋・オフショアエンジニアリング (M&OE) の会社があります。世界クラスの機能と優れたコネクティビティは、アジアの強力な成長の可能性に着目する多くの企業をシンガポールに誘引しています。

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  • シンガポールが有する優れた人材、強い生産能力、研究開発のエコシステムは、製薬やバイオテクノロジー企業を誘引しています。企業はシンガポールから世界中の人々に薬を提供し、アジア市場の成長を担っています。

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  • シンガポールの洗練された精密工学(PE)の能力と先進の製造技術で主要分野である高度な製造な地域ハブとしての強みを反映しています。

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  • シンガポールは、プロフェッショナル・サービス企業に最適なハブであり、国際的な労働力と信頼できる規制と枠組みを提供します。

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  • アジアは世界的な都市化のメガトレンドの中心であり、人口集中や公害、環境悪化などの都市問題の軽減を目指して、各国政府はスマートで持続可能なソリューションの開発を推進しています。大企業のいくつかはシンガポールを拠点として、アジアのために持続可能なソリューションを商業化すべく、革新、試行、連携を進めています。

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