そこでは、日本企業にとっても多くのビジネスチャンスを生み出すことでしょう。今回は、わたくしが、シンガポール経済開発庁(EDB)の国際事業の責任者として、長年アジア太平洋地域を見てきた経験から、急成長する東南アジア市場の特長と、その中におけるシンガポールの持つ強みについてお話ししましょう。
ASEAN(東南アジア諸国連合)は、今年で発足から50年が経ちました。現在加盟国は10カ国にも上り、その総人口は6億人以上に上ります。ASEANを一つの経済圏としてみた場合、その規模は2050年までに世界第4位、2030年にはGDPが現在の5倍の10兆ドルになると言われ、消費支出は2020年に2兆ドルに達すると予測されています。
2017/06/27
そこでは、日本企業にとっても多くのビジネスチャンスを生み出すことでしょう。今回は、わたくしが、シンガポール経済開発庁(EDB)の国際事業の責任者として、長年アジア太平洋地域を見てきた経験から、急成長する東南アジア市場の特長と、その中におけるシンガポールの持つ強みについてお話ししましょう。
2020年までに中間所得層が2倍。デジタル化された巨大消費市場へ成長
ASEAN諸国の経済成長における最大の特徴の一つが、中間所得層の拡大です。ASEAN諸国の中間所得層の人口は、2012年の1億9000万人から2020年には4億人に倍増します。
この新興中産階級と言われる人々は、従来の中間所得層とは違い、スマートフォンなどのデジタルデバイスを持つことで、インターネットユーザーとして様々な製品やサービスにアクセスすることができるのです。例えば、インドネシアでは、2016年までに2億8200万人がモバイル加入し、1億人のインターネットユーザーを抱えるデジタル国家に変貌を遂げています。このネット人口は、日本のネット人口とほぼ同じですが、この点からもわかる通り、ASEANはもはや単なる製造拠点ではなく、巨大な消費者市場に変わりつつあると言えます。 実際、アジアの中産階級の消費者は、2030年までに世界の中流階級のうちの60%以上を占めると予測されています。特に、各地域におけるデジタル消費の高まりに伴い、最近では、FacebookやGoogleなどの大手IT企業をはじめ、コーエーテクモや、バンダイナムコといったエンターテイメント企業が、シンガポールを拠点に、アジアの消費市場を見据え更なる事業展開に乗り出しています。
いかに“多様化”に対応するか。シンガポールが持つ強みとは
東南アジア市場のもう一つの特長が“多様性”です。私自身、シンガポール経済開発庁(EDB)の国際事業の責任者として、日本や中国などの北アジアをはじめ、ASEAN諸国の国々を7年もの間見てまいりました。上海を拠点に様々な国に滞在しましたが、今でも各国で異なる街並みや風景、その国ならではの食文化など、東南アジア諸国の“多様性”が思い出されます。実はこの“多様性”に対応することこそが東南アジアでビジネスを展開する上で最も重要なポイントなのです。ASEAN市場では、国ごとにローカライズされた製品や、ビジネスモデルの開発など、各地域に最適化された対応が求められます。例えば、資生堂は、シンガポールに研究開発センターを設立し、ASEAN市場向けの製品を開発する計画を発表しました。このように、企業は、シンガポールとパートナーシップを組むことで、ASEAN市場向けに最適化されたビジネスモデルや、製品開発、技術開発を行うことができます。
優れたビジネス環境とアジア諸国のローカライズに対応するシステム
シンガポールでは、日本企業が東南アジア諸国の多様性に対応するために、様々な環境を整えています。日本からアクセスするよりも東南アジア諸国に近く、周辺諸国との自由貿易協定と、完成されたサプライチェーンの仕組みによりスムーズに市場展開が可能です。また、強固なインフラと世界最高レベルの知的財産権(IP)制度、高い教育レベルによって、“人”、“モノ”、“資本”を集めやすいのが最大の特長です。
特に、人材の点では、毎年東南アジア諸国から数十万人の技術者や学生が集まります。日本企業はこうした海外や地元の人材を活かすことで、ASEAN諸国が持つ“多様化”に対応すれば、更なる競争力を持つことができるでしょう。
私たちは、多様な消費市場に対応するハブとして、日本企業の皆さまが競争力を持ち、成長を維持できるように更なる提携を行っていきたいと考えています。
「未来の航空宇宙都市」と呼ばれるシンガポールは、130社を超える航空宇宙業界の企業を擁し、アジア最大級で最も多様なエコシステムを誇ります。一流企業や宇宙産業スタートアップ企業をはじめとして成長を続ける企業が拠点を置いています。
シンガポールは、アジア市場への玄関口であり、世界トップクラスの消費者向け企業の多くが、環太平洋の拠点としてシンガポールを活用しています。
シンガポールは、東西のクリエイティブカルチャーが交差する場所であり、拡大を続けるこの地域の消費者基盤へ向けて開かれた扉でもあります。世界的ブランドが、地域統括会社を構えており、トップクラスのクリエイティブな企業がシンガポールを拠点としています。
今日、主要なガジェットにはシンガポール製の部品が使用されています。エレクトロニクス産業の一流企業は、シンガポールで未来を設計しています。
精製、オレフィン製造、化学製品製造、ビジネスと革新力が強力に融合するシンガポールは、世界最先端のエネルギーと化学産業のハブに数えられています。100社を超えるグローバル化学企業が主要な事業を当地に構えています。
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アジアの流通のハブとして、当地域内外への世界クラスのコネクティビティを提供します。安全で効率的なロジスティクスと、サプライチェーン管理ハブとしての妥当性を以て、シンガポールは地域の境界を超えた取引と消費に貢献しています。
シンガポールは、医療技術企業がこの地域で成長するための戦略的な拠点です。今日、多くの多国籍医療技術企業がシンガポールを拠点として、地域本社機能や製造、研究開発を行なっています。
資源豊かなアジアの中心に位置するシンガポールは、農産物、金属、鉱物のグローバルハブです。我が国のビジネス環境は、強力な金融、サプライチェーン管理、技術力を以て、世界をリードする企業を引き付けています。
シンガポールは、アジアでも主要な石油 ・ ガス (O&G) 装置とサービスのハブであり、3,000社を超える海洋・オフショアエンジニアリング (M&OE) の会社があります。世界クラスの機能と優れたコネクティビティは、アジアの強力な成長の可能性に着目する多くの企業をシンガポールに誘引しています。
シンガポールが有する優れた人材、強い生産能力、研究開発のエコシステムは、製薬やバイオテクノロジー企業を誘引しています。企業はシンガポールから世界中の人々に薬を提供し、アジア市場の成長を担っています。
シンガポールの洗練された精密工学(PE)の能力と先進の製造技術で主要分野である高度な製造な地域ハブとしての強みを反映しています。
シンガポールは、プロフェッショナル・サービス企業に最適なハブであり、国際的な労働力と信頼できる規制と枠組みを提供します。
アジアは世界的な都市化のメガトレンドの中心であり、人口集中や公害、環境悪化などの都市問題の軽減を目指して、各国政府はスマートで持続可能なソリューションの開発を推進しています。大企業のいくつかはシンガポールを拠点として、アジアのために持続可能なソリューションを商業化すべく、革新、試行、連携を進めています。