ASEAN消費市場の拡大と次世代型の道を進む石油化学企業
ジュロン島は、シンガポールの石油化学産業の一大拠点だ。進出企業は100社以上で、日本の三井化学や住友化学など、世界中の石油化学関連企業がここを拠点に成長を続けている。また、ジュロン島への投資は年々増加しており、完成した2009年には280億SGDであったが、現在は500億SGDにまで拡大している。この投資の目的の一つに、エネルギー効率化による競争力の維持・拡大があげられる。例えば、ここ2,3年の間で、ジュロン島の企業は、16億SGD以上もの資金をコジェネレーション工場などの建設に投じている。コジェネレーションといえば、総合的にエネルギー効率を高める新たなエネルギー供給システムだ。
また、CO2排出削減が期待されるもう一つの取り組みが、プラント工場のデジタル化だ。製造業のIoT化は、ビッグデータとセンシング技術によって製造プロセスを効率化し、生産性を向上させる力が期待される。例えば総合化学品メーカーのデンカでは300個の蒸気トラップの監視をIT化することで、プラント単体では300トン以上CO2排出量を削減できると推定。これは年間144,000SGDのコスト削減に換算することができる。このように、シンガポールの石油化学産業は、炭素税導入でも企業競争力を高め、成長を維持することで、急速に拡大している巨大なアジアの消費者市場に対応しようとしている。
EDBも競争力を高める様々なサポート体制を発表
シンガポール政府も一般的に石油化学産業の持続的な成長を促すため、様々な手段を講じている。その最大のものがインフラの整備拡大だ。例えば、ジュロン島に建設されたVopakターミナルは、ナフサの代替原料となるLPガスのターミナルで東南アジア初のLPGターミナルだ。原料の多様化はコスト競争力につなげることができる。また、EDBは、石油化学関連企業の研究開発能力の強化を行っている。これは、科学技術研究庁(A*STAR)と共同で行われるプロジェクトで、企業が強化したい分野に公的資金を投資し、公的研究機関内で能力開発を行うものである。このようにシンガポールは石油化学関連企業を多角的な面からサポートし、成長を促す取り組みを行っている。