信大側がCAR―T細胞の作成技術などを提供。3年後をめどに同国で臨床試験に入りたいとしている。
CAR―T細胞療法は、がん患者の体内から免疫細胞の一種「T細胞」を取り出し、がん細胞だけを攻撃するよう遺伝子を改変して体内に戻し、治療する。遺伝子改変はウイルスを使う手法が主流だが、シンガポールでは安全性などから制限があるという。
一方、信大医学部の中沢洋三教授(49)らはウイルスでなく、酵素の力や電気刺激で遺伝子を改変する手法を確立。現在、急性骨髄性白血病への効果が認められるCAR―T細胞を作り、2020年度に開始予定の治験に注力しようとしている。
国際共同研究は、シンガポール側のCAR―T細胞療法開発に突破口を開くと同時に、信大側も、研究途上にある肝細胞がんのCAR―T細胞療法開発を前進させることができる。信大チーム代表の斎藤章治講師(41)は、シンガポール側にはCAR―T細胞療法が腫瘍に及ぼす効果などを評価・解析する優れた技術があり、相乗効果が期待できる―としている。
斎藤講師によると、東南アジアで肝細胞がん患者が多いのは、原因となる肝炎ウイルスの感染対策が先進国ほど充実していないことなどが背景。肝細胞がんはシンガポールではがん死因の2位、日本でも5位で、進行期の5年生存率は10%という。
国際共同研究は、国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」(東京)とシンガポール科学技術研究庁の国際共同研究推進事業に採択された。
出典:信濃毎日新聞