レゾナック、シンガポールのHDM生産拠点を強化―グループ最大級、AI時代のストレージ需要支える

レゾナック、シンガポールのHDM生産拠点を強化―グループ最大級、AI時代のストレージ需要支える


Team members from Resonac HD Singapore posing in front of the company’s corporate sign, representing a diverse workforce at the semiconductor materials and advanced manufacturing facility.

Resonac HD Singaporeチーム

AIの普及を背景に、データセンター向けストレージ需要が急拡大している。その中核部材の一つが、ハードディスクドライブ(HDD)に搭載されるハードディスクメディア(HDM)だ。レゾナックはHDMの世界主要メーカーの1社として、シンガポールに同社最大のHDM生産拠点であるResonac HD Singapore(RHDS)を構える。RHDSは、日本本社の技術開発部門と連携しながら、グローバル市場向けの生産を担う重要拠点として機能している。今後はAI時代のストレージ需要拡大に対応するため、シンガポール拠点を中心にHDMの生産能力をさらに拡張する計画だ。 製造、研究開発、自動化、DX、サステナビリティ、人材育成について、RHDS幹部に聞いた。
 

インタビュー対象者:

松本俊・最高執行責任者(COO、以下A)、黒田 遼介・ビジネス担当バイスプレジデント(VP、以下B)、リー・シンウイ・オペレーション担当シニアバイスプレジデント(SVP、以下C)、デレック・リムSCM担当SVP(以下D)、アアナンダ・セルバラジR&D担当VP(以下E)、アンジー・ン デジタルトランスフォメーション担当VP(以下F)
 

世界市場を支える中核生産拠点、生産能力をさらに31%拡大

Q:RHDSは、レゾナックグループ内でどのような役割を担い、グローバル市場をどのように支えていますか。

C:RHDSは、レゾナックのハードディスク事業における重要な製造拠点として、高性能なハードディスクメディア(HDM)を世界市場に供給しています。AIやクラウドサービスの拡大により大容量HDD需要が高まる中、その供給を支えています。

RHDSの前身は2002年に設立され、2003年に三菱化学グループのシンガポールにおけるハードディスクメディア事業を引き継いで操業を開始しました。以来、技術開発と量産力を高め、現在ではレゾナックHD事業の中核拠点へと発展しています。
 

Q:今後の拡張計画について教えてください。

B:レゾナックグループは2026年5月、HDMの生産能力を現在の年間約1億6000万枚から、約31%増の年間約2億1000万枚へ拡大すると発表しました。その中核となるのがシンガポール拠点です。AIの普及に伴い、東南アジアを含むアジア太平洋地域でもデータセンター向けストレージ需要が拡大し、HDDメーカー各社も東南アジアの生産拠点を重視しています。シンガポールに拠点を置くRHDSは、こうした地域の成長需要を支える上で有利な立地にあり、レゾナックがHDDメーカー各社の需要拡大に対応するため、より重要な役割を担うことが期待されています。

Exterior view of a Resonac manufacturing facility, featuring a modern industrial building surrounded by landscaped greenery under a bright sky.

Resonac HD Singapore オフィス

Q:なぜシンガポール拠点が同社最大の生産拠点へと成長したのでしょうか。

C:シンガポールは、強固なインフラ、安定した事業環境、グローバルサプライチェーン上の優位性を備えています。多様で高度な人材を確保しやすいことも大きな強みです。当社では、一人ひとりの能力を最大限に引き出すことを重視しています。継続的な投資と人材育成で、製造チームと開発チームが連携し、迅速な課題解決とイノベーションを実現しています。こうした要素が、シンガポールを当社のグローバル最大の生産拠点へと成長させました。
 

自動化とDXで現場力を高度化

Q:RHDSでは、自動化・DXの推進と、それを支える人材の高度化にどのように取り組んでいますか。

C:RHDSでは、製造工程の自動化を進め、地元中小企業や技術パートナーと連携して、自動梱包(こんぽう)などを開発し、実用化してきました。現在は5カ年の自動化ロードマップに基づき、さらなる労働生産性向上を進めています。 シンガポールで試験導入された原材料パッケージの自動開封などの一部のソリューションは、日本側からも関心を集めています。

人材育成では、体系的なOJTや外部研修を通じて従業員のスキル向上を継続しています。単に人員を増やすのではなく、各人がより高度な役割を担えるようにすることが当社の人材戦略の基本です。

F: DXでは、製造プロセスで得られる設備・工程データを単に集めるのではなく、現場が迅速に判断できる「インサイト」に変えることを重視しています。従来は設備データの記録・入力に人手を要していましたが、現在は自動収集・分析・可視化へ移行しています。これにより従業員は反復作業から解放され、分析、判断、予防保全、より高度な業務を担うようになっています。

Close-up view of precision-engineered cylindrical components aligned on an automated production line, highlighting advanced manufacturing processes and high-precision industrial fabrication.

Resonac HD Singaporeのハードディスクメディア(HDM)の製造工程

日本本社との連携で開発から生産拡大、量産までを加速

Q:シンガポールのチームは、日本本社とどのように連携していますか。

E:日本とシンガポールの両拠点は、研究開発と製造の双方で重要な役割を担っており、技術開発、基礎研究、プロセス改善において緊密に連携しています。両拠点は、成功事例だけでなく課題や改善点も含めて技術的知見や研究成果を定期的に共有し、顧客ニーズや市場ごとの要求に応じて技術と生産体制を最適化しています。両拠点の強みを組み合わせ、開発から量産、顧客認定までを迅速に進める体制を整えています。
 

シンガポール拠点の技術革新で特許出願

Q:R&Dの取り組みと成果について教えてください。

E:シンガポール拠点では、直近で22TBモデル、24TB世代の技術開発を行い、いずれも顧客認定の取得にも成功しました。現在は更に次世代のプログラムである28TB世代のR&Dの佳境を迎えており、その先の技術開発にも着手しています。大容量化に向け、製品仕様の最適化やプロセス改善を継続する中で、シンガポール拠点発の技術革新も生まれています。一部は本社の特許取得にも貢献し、シンガポール主導の特許出願も進行中です。
 

Employee standing beside a glass-enclosed semiconductor production area, presenting advanced manufacturing equipment and automated systems inside a cleanroom facility.

Resonac HD Singapore工場の製造ライン内部

グループ初の太陽光発電導入など、持続可能性をけん引

Q:サステナビリティ(持続可能性)にはどのように取り組んでいますか。

D: RHDSでは2021年、サステナビリティへの社内意識を高め、会社と社会の双方に価値を創出するため、専任委員会を設置しました。現在は、気候変動への対応、循環型経済と廃棄物削減、生物多様性保全の3分野を重点領域としています。

気候変動対策では、電力消費の削減に向けて温度設定の最適化、冷却システム更新、太陽光発電導入を進めています。2024年に導入した太陽光発電は年間約1700MWhを発電し、低排出溶剤の導入や社員食堂の完全電化も実施しました。

RHDSは2022年以降、国立公園局、国家環境庁、非営利団体と連携し、生物多様性保全活動を主導してきました。こうしたサステナビリティへの貢献は、2024年の「Resonac Pride Award」受賞にもつながりました。また、RHDSはISO 50001認証を取得済みで、レゾナックグループのサステナビリティ部門と緊密に連携しながら、SBTi認定取得に向けた取り組みも進めています。
 

多様な人材と安定した事業環境が競争力に

Q:経営層として、シンガポールチームと現地での事業環境をどのように評価していますか。

A: シンガポールの約900人のチームは、高い能力と技術的専門性を持ち、日々の課題解決やプロセス改善に迅速に取り組んでいます。多様な国籍や文化を持つ人材が集まり、異なる視点から課題を捉えられることも強みです。それにより、グローバル市場の多様なニーズに合った解決策やイノベーションを生み出す力につながっています。

シンガポールの強固なインフラと安定した事業環境は、円滑な事業運営と長期的な投資判断を支えています。また、EDBからは、A*STARの研究所など現地研究機関との連携機会づくりにおいても支援を受けており、こうした協業環境がRHDSの研究開発や技術高度化を後押ししています。
 

海外展開を目指す日本企業への示唆

Q:海外展開を検討する日本企業へのメッセージをお願いします。

A:海外展開では、現地の環境や文化を理解し、自社の強みとどう融合させるかが重要です。シンガポールは安定した事業環境、優秀な人材、地域展開の拠点機能を備えた魅力的な立地です。EDBのような機関と緊密なパートナーシップを築くことも有益です。投資や人材育成に対する迅速な支援が、RHDSのグローバル競争力を支える一因になっています。
 

 


 

松本俊 最高執行責任者

「海外展開では、現地の環境や文化を理解し、自社の強みとどう融合させるかが重要です。シンガポールは安定した事業環境、優秀な人材、地域展開の拠点機能を備えた魅力的な立地です」
 

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