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デジタル・ディスラプション時代における新しい戦い方

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6月26日、アクセンチュア・イノベーションハブ・シンガポールにおいて、アクセンチュア・SPEEDA共催、シンガポール経済開発庁(EDB)サポートのもとワークショップが開催された。本ワークショップでは日本企業から約30名のマネジメント層が招待され、デジタル化やイノベーションを起こすための実例やデモンストレーションが行われた。今回はアクセンチュア・ストラテジーASEANのユルゲン・コペンズ氏(以下、ユルゲン氏) と、奥谷直樹氏(以下、奥谷氏)に、日本企業がデジタル化によってイノベーションを起こすためのポイントについてお話を伺った。デジタル化をとりまく日本企業の課題と、“なぜシンガポールなのか”という点をご紹介しよう。

デジタル・ディスラプションのインパクト

今、スマートフォンに代表されるモバイル端末の普及や、ビッグデータを活用したAI、IoTなど、急速に発展・普及するデジタルテクノロジーによって多くの業界でディスラプションが起きている。UberやGrabのような大きなアセットを持たない新興企業が、人々の移動から車の所有形態、または食事や各種支払いも含めた暮らしに影響を与えていることが代表的な例として挙げられる。こうしたデジタル・ディスラプションの影響がさまざまな業界で波及し始めている中、アクセンチュアのユルゲン氏は「まずは自らの業界と企業自身がどのような状況に位置しているかを理解することが重要」と語る。ユルゲン氏によると「特に日本企業が国内外で活躍しているエネルギー・インフラ・建設・物流・金融・ハイテクといった業界が“混乱期”と呼ばれる、今後ディスラプションによる大きな影響を最も受ける可能性が高い領域に位置している」(2018.アクセンチュア『ディスラプタビリティ・インデックス』)という。

 

イノベーションの核は“デジタル人材”の確保

デジタル・ディスラプションが拡大する中、これまでの既存企業も変革を余儀なくされている。従来のままでは競争力を失い衰退してしまう。ユルゲン氏も「新しい人材や仕掛けを活用した画期的な取り組みを行わなければ、持続的な競争力を維持することが難しい。一方で、一早く勇敢に踏み出すことで他社との差別化を実現できる機会にもなり得る」と語っている。特にビッグデータやAIなど、デジタル化の中心ともなるべきテクノロジーを使いこなすには、データ分析を行うデータサイエンティストや、分析したデータをもとに戦略を考えるデータストラテジストなどの人材が必須だ。しかしながら、デジタルテクノロジーに精通した人材の確保が企業にとって大きな課題だと奥谷氏は語る。「多くの日本企業は将来を見据えたビジョンやアイデアを掲げ、自前で新しいソリューション開発やスタートアップとの協業にトライするなど取り組みを行っているが、新しいデジタル化に対応したタレントの確保が多くの企業にとって課題になっている」。

 

デジタル・サービス・ファクトリーでデジタル化の高速化

アクセンチュアでは企業がデジタル化を行う際の人材の確保という課題を、デジタル・サービス・ファクトリーという枠組みを提供することで解決している。デジタル・サービス・ファクトリーとは、デジタル化の取り組みを自社単体で行うよりも圧倒的に迅速に遂行し、利益貢献を最大化するプログラムだ。奥谷氏によると具体的には「クライアント人材とアクセンチュアのデジタル人材、あるいはスタートアップを交えた『ジョイントチーム』をイニシアチブ毎に組織し、課題発見からPoC・テストまでをハイスピードに行う」という。また奥谷氏は「アクセンチュアが世界中で培った『デジタル・アセット』をフル活用することで事業化へのスピードを最大化し、リスクを下げることが可能。また最終的にクライアント人材自身が新しいスキルや働き方を習得することができる」と語っている。
今回のワークショップでも奥谷氏からデジタル・サービス・ファクトリーを導入し、デジタル化を果たしたさまざまな先進事例が発表された。「既にデジタル・サービス・ファクトリーは、空港におけるカスタマーエクスペリエンス、自動車部品メーカーにおける製造プロセス高度化、天然資源会社における調達・物流といった分野で導入されており、中には1,000億円規模の利益創出を生み出したケースなどもある」と奥谷氏は語っている。

左:アクセンチュア・ストラテジー・ASEAN マネジング・ディレクター ユルゲン・コペンズ氏 右:アクセンチュア・ストラテジー Japan ASEAN Corridor プログラム・ディレクター 奥谷直樹氏

シンガポールを活用したエコシステムとしての協創
今回のワークショップはアクセンチュア・イノベーションハブ・シンガポールで開催されたが、シンガポールには企業がデジタル化を果たす上で、優れた環境が整っている。
ユルゲン氏は「シンガポールには『エコシステムプレーヤーとの協創』・『リーン&アジャイルなプロセス』・『新興国エッセンスの取り込み』というデジタル化を行う上で重要な3つの要素が整っておりすべてが実行しやすい環境にある」と語っている。
第一の「エコシステムプレーヤーとの共創」とは、デジタルテクノロジーを導入する際の豊富な官民パートナーシップがあげられる。EDBが提供する製造業のインダストリー4.0導入のためのロードマップ、スマートインダストリー準備指標は多くの企業に導入されており、アクセンチュアなどのテクノロジープロバイダーと協力してサポートを行っている。

また、スマートモビリティの分野では南洋工科大学とNXPセミコンダクターズは、12社と共同でスマートモビリティコンソーシアムを立ち上げている。こうした官民一体のエコシステムを利用できる点がシンガポールの大きな特長だ。
二つ目の「リーン&アジャイルなプロセス」に関連して、シンガポールのスタートアップコミュニティだけでなく、他アジア域のスタートアップとの連携を交えた取り組みが行いやすい点が挙げられる。シンガポールは、スタートアップの人材では世界トップクラスに入ると考えられており、スタートアップ企業の数はこの10年間で2倍以上に増加し、推定55,000人に達している。
例えばLaunchPad @ one-northのようなワールドクラスのインキュベーション施設が存在し、コラボレーションスペースでは、スタートアップと大企業がデジタル化の旅に一緒に取り組むことができる。
第三に、「新興国エッセンスの早期取り込み」では、ASEAN市場へのシンガポールの高い接続性のことをさす。チュアス地区に建設中の巨大ターミナルによって輸送インフラが強化され、2040年までにコンテナ取扱量は倍になる。また、幅広い分野のデザインやビジネスコンサルタントが企業が自社製品やサービスを各地域にカスタマイズするサポートを行っている。ユルゲン氏はシンガポールのこうした環境について「シンガポール政府のスマート・ネーションの取り組みや多様な規制・人材・資金面でのサポートだけでなく、『East Meets West』と言われるようにASEANやインドなどのスタートアップへのアクセスや協業を容易にする環境がシンガポールには整っており、日本企業はより積極的に活用すべき」と語っている。
またデジタル化に必要な“人材”についてもシンガポールは強みを持っている。
シンガポールはIMDが発表する世界デジタル競争力ランキング2018で総合2位にランクインしており、3つの評価要素のうち“知識”と“テクノロジー”の分野で第1位を獲得している。この“知識”とは、人材、教育とトレーニング、科学的集中分野という3項目で構成され、シンガポールのデジタル人材のレベルの高さがうかがえる。
このように、シンガポールでは優れたデジタル人材が豊富にいることから、デジタル化を実行することがより簡単になる。奥谷氏も今回のシンガポールで行われたワークショップについて「日本主導の取り組みの枠を超えて、敢えてシンガポールの独自性を活用したこのような仕掛け作りが、デジタル・ディスラプションの脅威に対する1つの対策になると考えています」と語ってくれた。

主力産業一覧

主力産業一覧
  • 「未来の航空宇宙都市」と呼ばれるシンガポールは、130社を超える航空宇宙業界の企業を擁し、アジア最大級で最も多様なエコシステムを誇ります。一流企業や宇宙産業スタートアップ企業をはじめとして成長を続ける企業が拠点を置いています。

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  • シンガポールは、アジア市場への玄関口であり、世界トップクラスの消費者向け企業の多くが、環太平洋の拠点としてシンガポールを活用しています。

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  • シンガポールは、東西のクリエイティブカルチャーが交差する場所であり、拡大を続けるこの地域の消費者基盤へ向けて開かれた扉でもあります。世界的ブランドが、地域統括会社を構えており、トップクラスのクリエイティブな企業がシンガポールを拠点としています。

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  • 今日、主要なガジェットにはシンガポール製の部品が使用されています。エレクトロニクス産業の一流企業は、シンガポールで未来を設計しています。

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  • 精製、オレフィン製造、化学製品製造、ビジネスと革新力が強力に融合するシンガポールは、世界最先端のエネルギーと化学産業のハブに数えられています。100社を超えるグローバル化学企業が主要な事業を当地に構えています。

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  • アジアのデジタルの中心都市として、シンガポールは情報通信技術 (ICT) 企業が選ぶ拠点となっています。世界クラスのインフラ、人材、活気のあるパートナーのエコシステムを提供しています。一流企業と連携して、最先端の技術とソリューションを開発し、シンガポールのビジョンであるスマートネーションと地域および世界の市場を支えています。

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  • アジアの流通のハブとして、当地域内外への世界クラスのコネクティビティを提供します。安全で効率的なロジスティクスと、サプライチェーン管理ハブとしての妥当性を以て、シンガポールは地域の境界を超えた取引と消費に貢献しています。

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  • シンガポールは、医療技術企業がこの地域で成長するための戦略的な拠点です。今日、多くの多国籍医療技術企業がシンガポールを拠点として、地域本社機能や製造、研究開発を行なっています。

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  • 資源豊かなアジアの中心に位置するシンガポールは、農産物、金属、鉱物のグローバルハブです。我が国のビジネス環境は、強力な金融、サプライチェーン管理、技術力を以て、世界をリードする企業を引き付けています。

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  • シンガポールは、アジアでも主要な石油 ・ ガス (O&G) 装置とサービスのハブであり、3,000社を超える海洋・オフショアエンジニアリング (M&OE) の会社があります。世界クラスの機能と優れたコネクティビティは、アジアの強力な成長の可能性に着目する多くの企業をシンガポールに誘引しています。

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  • シンガポールが有する優れた人材、強い生産能力、研究開発のエコシステムは、製薬やバイオテクノロジー企業を誘引しています。企業はシンガポールから世界中の人々に薬を提供し、アジア市場の成長を担っています。

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  • シンガポールの洗練された精密工学(PE)の能力と先進の製造技術で主要分野である高度な製造な地域ハブとしての強みを反映しています。

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  • シンガポールは、プロフェッショナル・サービス企業に最適なハブであり、国際的な労働力と信頼できる規制と枠組みを提供します。

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  • アジアは世界的な都市化のメガトレンドの中心であり、人口集中や公害、環境悪化などの都市問題の軽減を目指して、各国政府はスマートで持続可能なソリューションの開発を推進しています。大企業のいくつかはシンガポールを拠点として、アジアのために持続可能なソリューションを商業化すべく、革新、試行、連携を進めています。

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