デジタル・ディスラプションのインパクト
今、スマートフォンに代表されるモバイル端末の普及や、ビッグデータを活用したAI、IoTなど、急速に発展・普及するデジタルテクノロジーによって多くの業界でディスラプションが起きている。UberやGrabのような大きなアセットを持たない新興企業が、人々の移動から車の所有形態、または食事や各種支払いも含めた暮らしに影響を与えていることが代表的な例として挙げられる。こうしたデジタル・ディスラプションの影響がさまざまな業界で波及し始めている中、アクセンチュアのユルゲン氏は「まずは自らの業界と企業自身がどのような状況に位置しているかを理解することが重要」と語る。ユルゲン氏によると「特に日本企業が国内外で活躍しているエネルギー・インフラ・建設・物流・金融・ハイテクといった業界が“混乱期”と呼ばれる、今後ディスラプションによる大きな影響を最も受ける可能性が高い領域に位置している」(2018.アクセンチュア『ディスラプタビリティ・インデックス』)という。
イノベーションの核は“デジタル人材”の確保
デジタル・ディスラプションが拡大する中、これまでの既存企業も変革を余儀なくされている。従来のままでは競争力を失い衰退してしまう。ユルゲン氏も「新しい人材や仕掛けを活用した画期的な取り組みを行わなければ、持続的な競争力を維持することが難しい。一方で、一早く勇敢に踏み出すことで他社との差別化を実現できる機会にもなり得る」と語っている。特にビッグデータやAIなど、デジタル化の中心ともなるべきテクノロジーを使いこなすには、データ分析を行うデータサイエンティストや、分析したデータをもとに戦略を考えるデータストラテジストなどの人材が必須だ。しかしながら、デジタルテクノロジーに精通した人材の確保が企業にとって大きな課題だと奥谷氏は語る。「多くの日本企業は将来を見据えたビジョンやアイデアを掲げ、自前で新しいソリューション開発やスタートアップとの協業にトライするなど取り組みを行っているが、新しいデジタル化に対応したタレントの確保が多くの企業にとって課題になっている」。
デジタル・サービス・ファクトリーでデジタル化の高速化
アクセンチュアでは企業がデジタル化を行う際の人材の確保という課題を、デジタル・サービス・ファクトリーという枠組みを提供することで解決している。デジタル・サービス・ファクトリーとは、デジタル化の取り組みを自社単体で行うよりも圧倒的に迅速に遂行し、利益貢献を最大化するプログラムだ。奥谷氏によると具体的には「クライアント人材とアクセンチュアのデジタル人材、あるいはスタートアップを交えた『ジョイントチーム』をイニシアチブ毎に組織し、課題発見からPoC・テストまでをハイスピードに行う」という。また奥谷氏は「アクセンチュアが世界中で培った『デジタル・アセット』をフル活用することで事業化へのスピードを最大化し、リスクを下げることが可能。また最終的にクライアント人材自身が新しいスキルや働き方を習得することができる」と語っている。
今回のワークショップでも奥谷氏からデジタル・サービス・ファクトリーを導入し、デジタル化を果たしたさまざまな先進事例が発表された。「既にデジタル・サービス・ファクトリーは、空港におけるカスタマーエクスペリエンス、自動車部品メーカーにおける製造プロセス高度化、天然資源会社における調達・物流といった分野で導入されており、中には1,000億円規模の利益創出を生み出したケースなどもある」と奥谷氏は語っている。