島津製作所、科学技術研究庁と共同ラボを設立
島津製作所はシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)傘下のDxD Hubと共同で「Shimadzu ‒ DxD Hub Diagnomics Centre」を設立した。DxD Hub内の同センターでは、感染症、がん、代謝性疾患の3領域で共同研究を行う。感染症分野では同社独自のAmpdirect技術を用いたPCR試薬開発、がん分野では質量分析技術による早期発見と個別化医療、代謝性疾患では診断精度向上を目指す。島津製作所製の質量分析計なども同ラボに設置予定だ。島津製作所のアジア統括子会社Shimadzu (Asia Pacific)Ltd.Pteはこれまで、チャンギ総合病院やシンガポール総合病院などの国立医療機関とヘルスケア分野で共同研究に取り組んできた。
ポーラ、シンガポール拠点で「ミラースキン」実用化研究を本格スタート
ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、その人の肌の性質を再現した培養皮膚組織「ミラースキン」の実用化に向け、A*STARの研究機関との協業を開始した。シンガポール皮膚研究所とは化粧品成分評価に適した皮膚組織の開発を、またシンガポール製造技術研究院とは高品質なミラースキンの大量培養を目指してマイクロ流体装置の開発を推進る。「究極のテーラーメイド」化粧品の実現に向け、創業100周年となる2029年をめどに商品・サービスの提供を目指して取り組みを加速させる。ミラースキン研究は、湘南・シンガポール・横浜の3拠点体制を活用したプロジェクトの第1弾であり、これを皮切りに3拠点の連動を高めるという。
大林組が4,218億円でチャンギ空港の工事受注
チャンギ空港の運営会社であるチャンギ・エアポート・グループ(CAG)は、過去最大の旅客ターミナル「ターミナル5」建設に向け、総額48億SGD(約5,328億円)の2件の契約を締結。中国交通建設と大林組のシンガポール法人によるジョイントベンチャーが基礎工事(38億SGD、約4,218億円)を担い、空港施設整備(9億5,000万SGD、約1,054億5,000万円)は地元の建設会社であるファ・セン・ビルダーが担う。ターミナル5は建設プロジェクト「チャンギ・イースト開発」の一環であり、建設中の第3滑走路や物流施設、交通インフラとの連携も含まれている。年間旅客取扱能力5,000万人を目指すターミナル5は2030年代半ばの完成を見込み、既存ターミナルとの接続トンネルを含む基礎工事などが進行する。
山九、シンガポールで高度物流拠点を建設2026年初頭に稼働へ
日本の総合物流企業・山九は、シンガポール西部トゥアス地区で先進的な倉庫施設の建設を進めている。シンガポール現地法人によるこの新倉庫は、延床面積約3万8,000㎡・4階建てで、最大5万7,000パレットの保管が可能な温度管理機能を備える。2026年第1四半期の稼働を予定しており、完成後は約170人の新規雇用を創出する見通しだ。同施設は、高セキュリティ・高精度の在庫管理システムを搭載し、医薬品や高付加価値製品など、取り扱いに慎重を要する貨物への対応力を高める。また、自動フォークリフトをはじめとする省人化ソリューションや、屋上ソーラーパネル、リチウムイオン電池の活用により持続可能性に配慮し、同国のグリーン物流政策に沿った拠点となる。1971年に設立されたSankyu Singaporeは、すでにクレメンティ地区やトゥアス内に複数の物流拠点を展開しており、今回の新施設建設は同社の東南アジアにおける事業強化の一環となる。
シンガポール、ペルー、チリ間の自由貿易協定が発効CPTPPはEUが検討中
シンガポール貿易産業省(MTI)は、シンガポール、ペルー、チリの3カ国間で「太平洋同盟・シンガポール自由貿易協定(PASFTA)」が正式に発効したと発表した。2022年1月に署名された同協定は、参加5カ国のうち3カ国で発効しており、今後コロンビアとメキシコにおいても批准が完了次第、適用される見通し。PASFTAは、物品関税の大部分を撤廃するほか、通関手続きの簡素化や、シンガポールのサービス事業者・投資家に対する優遇措置の確保などを含む。同協定は、シンガポールにとって28番目の自由貿易協定であり、海上輸送サービスに関する章を初めて盛り込んだ点も注目される。太平洋同盟(Pacific Alliance)を構成する4カ国(チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー)は、合計で2.7兆米ドル(約391兆5,000億円)規模のGDPを誇り、ラテンアメリカの経済圏として重要な存在だ。2024年、シンガポールと太平洋同盟諸国との二国間貿易総額は125億SGD(約1兆3,875億円)に達し、すでに約100社のシンガポール企業が同地域で事業を展開している。一方で、包括的・先進的環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)については、現在EUが検討しており、将来的な影響が注目される。
EDBが「Global Founder Programme」を開始、世界を目指す起業家を募集
シンガポール経済開発庁(EDB)はこのほど、世界各地の経験豊富な起業家を対象とした新プログラム「Global Founder Programme(GFP)」を立ち上げた。シンガポールを拠点に新たなベンチャーを創出・拡大することを支援するもので、グローバルな成長可能性を備えた革新的なスタートアップの誘致と育成を目的としている。選ばれた起業家は、シンガポールの先進的なテクノロジーインフラ、研究開発機能、人材プールへのアクセスが可能になるほか、起業家・投資家・戦略的パートナーからなるエコシステムに参加できる。さらに、海外ハイエンド人材向けの「Overseas Networks & Expertise Pass (ONE Pass)」の申請資格も得られる。GFP参加者には、法人設立、人材採用、市場展開といった事業立ち上げの実務的サポートに加え、専門家や見込み顧客とのマッチング機会も提供され、戦略のブラッシュアップや成長加速が見込まれる。なお、応募資格は、事業のスケールアップを成功させた実績、または大手企業やディープテック分野(AI、ヘルスケア、ハードウェア、グリーンエコノミーなど)におけるイノベーションの主導実績を持つ起業家に限定される。
ゲイツ財団、シンガポールにオフィス開設へ
ビル&メリンダ・ゲイツ財団(Gates Foundation)は、シンガポールに新オフィスを開設することを発表した。これは、同財団の会長ビル・ゲイツ氏が「Philanthropy Asia Summit(フィランソロピー・アジア・サミット)」の場で明らかにしたもので、アジア地域の科学的知見を活用し、地域のフィランソロピーコミュニティとの連携を深めることが目的とされている。2000年に設立されたゲイツ財団は、貧困、疾病、不平等の撲滅を中心に、世界各地で支援活動を展開。ゲイツ氏は今回の発言の中で、アジアが単なる低コスト生産拠点から、最先端の技術革新の中心地へと進化していることに注目すべきだと強調した。EDBの支援を受けて設立される新オフィスは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)推進に対する財団の継続的なコミットメントを示すものでもある。シンガポールのターマン・シャンムガラトナム大統領は、開発途上国における国内能力の構築の重要性を強調。ローレンス・ウォン首相は財団のシンガポール進出を歓迎し、地域のパートナーとの連携に対する期待を表明した。また、リー・シェンロン上級相とゲイツ氏の会談では、ワクチン開発や原子力技術といった分野での協力の可能性についても意見交換が行われた。両者は、テマセク・トラストやシンガポールの大学など地元機関とのさらなる連携の機会についても言及している。
シンガポールにおける事業拡大の取り組みを紹介したいとお考えの企業様は editor@edb.gov.sg までご連絡ください。
*1SGD=約111円、1米ドル=約145円(2025年5月16日時点)