東宝-シンガポールに注目する日本のエンタメ大手
創業から90年を超える日本のエンタメ大手東宝は、シンガポールから次の一歩を踏み出そうとしている。
東宝の松岡宏泰代表取締役社長は、東宝が成長するために、日本国外での機会をとらえる必要があると信じている。2022年の就任以降、東宝はすでに8社の買収を発表するなど、過去最大規模の事業拡張を行っている1。東宝は24年11月、アジア市場への事業拡大を目的とした拠点、TOHO Entertainment Asia (TEA)をシンガポールに設立した。
シンガポールの多文化コミュニティー、域内各国との結びつきは、TEAが観客とつながり、市場に特化したコンテンツ製作を行う上で重要な役割を果たす。TEAは、市場参入戦略や、「ゴジラ」や米クランチロール・アニメアワード 2024で最優秀賞にあたる「アニメ・オブ・ザ・イヤー」を獲得した「呪術廻戦」、最優秀コメディー 作品賞などを受賞した「SPY×FAMILY」など2東宝が知的財産権(IP)を持つ作品の各国での展開に重点を置いている。
TEAの植田浩史最高経営責任者(CEO)は「アジアでの存在感を高めるための広範な戦略の一部として、シンガポール拠点を通じて各市場のファンについてより深く理解したい。自社のIPや作品を通じてファンとのつながりを強化し、世界中の観客にさらに喜びを届けたい」と語った。
TEAは今後「Entertainment for YOU(世界中のお客様に 感動を )」というスローガンの通り、アジア各市場それぞれの好みやニーズへの理解を深めることを目指している。より多くの代表的な娯楽をアジアの観客に届けるため、今後3年で増員を計画している。
Tulip Interfaces-MIT生まれのソフトウェア企業がアジア太平洋の製造業の未来を描く
「人材は企業業務で常に最も価値のある資源だ」-この理念を掲げるTulip Interfacesは、米マサチューセッツ工科大(MIT)内研究所、MITメディアラボからスピンオフした現場業務ソフトウェア企業だ。同社のAI対応プラットフォームは、企業が従業員に強力なデジタルツールを提供することを支援している。
Tulipのクラウドベースのプラットフォームは、プロセスの改善や作業員への指示、生産追跡、リアルタイムで包括的な業務に関する洞察を得ることを可能にする。
本社を米国に置くTulipは、ドイツとハンガリーに拠点を設立しているが、同社のアジア太平洋地域の製造業業務が全体の約3分の1に達したことから、戦略的重要性を認識し、2024年1月にシンガポールに地域統括拠点設立を決定した。
Tulipは以来、域内製造拠点への直接的な足掛かりとなるビジネスハブとしてシンガポールを活用している。製造業のスマート化などを進める「インダストリー4.0」イニシアチブに代表される、シンガポールの活発なテクノロジー・エコシステムや、先進製造業企業が多く進出していることは、Tulipに新規顧客開拓の可能性があることを意味している。
事業拡大に加え、顧客がTulipのソリューションを効率的に導入し効果を得られるよう、Tulipはソリューション・エンジニアや技術専門家などの人員拡充を進めている。高等教育機関と提携したインターン機会の提供や、国内外のテクノロジーハブや研究ハブとの連携を支援する担当者採用の計画もある。
Komax-シンガポールのイノベーション・エコシステムで足場を固めるスイス精密機器メーカー
電気自動車(EV)からスマート製造施設まで、今日の世界は現代の暮らしを支える複雑な電線のネットワークによって動いている。ワイヤー加工のスイス企業Komax Groupは、自動車や航空宇宙、半導体業界向け高品質ワイヤー加工用の最新鋭の自動化ソリューションを専門としている。
Komax Groupは1975年に3人で創業。創造性とイノベーションは、企業の規模が拡大した現在まで事業の中心だ。Komax Groupは2020年から2億8280万スイスフラン(約537億円)を研究開発(R&D)に投資した。さらに毎年売上高の8%をR&Dに充てるとしている。
アジア市場攻略に際して、シンガポールのイノベーション・エコシステムや良好なビジネス環境、豊富な人材、域内へのアクセスのしやすさが理想的であることが証明された。
Komax SingaporeはKomax Groupの品質測定機器用のアジア・コンピテンス・センター(特定分野の知識や技術を集約して社内に提供する部門)として、国内での最新鋭の製品やソリューション開発に注力する。今後3年で専門知識を持つエンジニアを採用し、研究開発機能を強化する予定だ。研究開発の他にも、サプライチェーン管理や営業、サービス機能強化なども成長戦略に含まれている。
Komax Singaporeがアジアでの存在感を高めるにつれ、Komax Groupの世界市場戦略の中でますます重要な役割を果たす予定だ。
ACTグループ-シンガポールからアジアの持続可能な未来を推進
オランダに本社を置くACTグループは、企業が透明性を保ちながら効率よく環境目標を達成するため、ソリューションでの支援をシンガポールから展開することを目指している。
脱炭素化と環境への影響に関するエンドツーエンドのソリューション世界大手ACTグループは、シンガポールに地域統括本部を設立し、地域での存在感を高めている。アジア各国が持続可能性への取り組みを拡大し、シンガポールが炭素サービスや気候変動問題に対応するイノベーションの域内ハブとして台頭していることを受けての動きだ。
シンガポールに拠点を構えることで、ACTグループはアジアの顧客により良いサービスを提供すると同時に、シンガポールの豊富な人材と協力的なエコシステムを活用できる。堅牢なインフラや安全と安定が、地域との関わりを深め、域内事業を拡大するための基盤を提供している。
ACTグループは、シンガポール拠点をアジア太平洋全域の影響力の拠点とする計画だ。特に研究や専門知識の蓄積に多額の投資を行う一方、法務管理、企業の持続可能性、気候変動対策プロジェクト開発能力も強化している。
シンガポール拠点では今後2年で研究開発、気候変動対策プロジェクト技術、営業・業務支援などの分野で増員を図る。域内でコンプライアンス市場が成熟する中、ACTグループはアジアで未来の持続可能なソリューションに投資し、企業の持続可能性への取り組みを支援する。
シンガポール-世界大手企業の事業拠点
シンガポールは2013~23年、アジア太平洋地域の地域統括本部設立先人気ランキングでトップとなりました3。シンガポールは日本を含め多くの外国企業に、グローバル・地域拠点や統括機能、事業部門を置く地として選択されています。
成長著しいアジアに拠点を設立する絶好の機会です。アジアは2040年までに世界のGDP(国内総生産)の半分、世界消費の40%を占めるとみられ、東南アジアだけでも2030年までに世界で4番目に大きい経済圏となることが見込まれます4。シンガポールの事業に優しい環境や豊富な人材、域内での関係性の深さを活用してみませんか。
シンガポールでの拠点設立をご検討ですか?EDBのシンガポール進出の手引きをご覧ください。
Footnote:
1 Kim, S. Godzilla conquered Japan. Now, its owner plots a global takeover. Bloomberg, 18 Jul 2025. Retrieved 21 July 2025 from https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-07-17/godzilla-studio-toho-plans-more-films-sequels-anime-and-jujutsu-kaisen
2 Spangler, T. Crunchyroll Anime Awards 2024: ‘Jujutsu Kaisen’ Takes 11 Trophies, Including Anime of the Year (Full Winners List). Variety, 4 Mar 2024, https://variety.com/2024/digital/news/crunchyroll-anime-awards-2024-winners-list-jujutsu-kaisen-1235928308/
3 Search parameters – (i) Business Function: Regional Headquarters and (ii) Status: Completed – confirmed. 2013-2023. Orbis Crossborder Investment Database.
4 Tonby, O., Woetzel, L., Choi, W., Seong, J., & Wang, P. Asia’s future is now. McKinsey & Company, 14 July 2019, https://www.mckinsey.com/featured-insights/asia-pacific/asias-future-is-now