デジタル化とイノベーション支援が投資を後押し
デジタル産業の長期的展望は引き続き明るく、多岐にわたる業界において、データ、デジタル化、自動化など、継続した事業推進が見られる。また、フィンテック、クラウド、サイバーセキュリティー、B2B SaaS、ゲームなど、東南アジアで拡大しているデジタル経済による商機もあり、あらゆる業界でハイテク人材に対する需要が堅調に推移すると予測される。シンガポールの活気ある研究開発とイノベーションのエコシステムは、製品改革を進める企業を惹きつけ、新たな成長分野と雇用を創出した。EDB は企業と協働し、シンガポールを拠点とする新しいベンチャー企業の設立と投資を継続的に行っている。2021年、試験的に導入されたCorporate Venture Launchpad (CVL) プログラムは継続・拡大し、今後 2 年間で 20~30社 のベンチャー企業の支援を目指している。
脱炭素の取り組み
世界的な持続可能性への取り組みの一環として、EDB は炭素集約型企業と協力し、シンガポールの製造業界におけるネットゼロ目標を2050 年までに達成できるよう取り組んでいる。脱炭素化の導入支援、排出削減や再生可能エネルギー、農業ビジネス、循環型経済、カーボンサービスなどの分野で有望な技術を持つ企業を積極的に誘致することで実現可能となる。さらに、エンタープライズ・シンガポール(シンガポール企業庁)と共同でカーボンサービス分野の開発を進めており、現在70社以上の企業がエコシステムを構築している。
2023年に向けて
2023年の事業見通しは、世界需要の鈍化や追加利上げによって厳しくなると予測される。しかし投資は複数年にわたる長期計画であることから、先進製造業(エレクトロニクス、ヘルスケア、航空宇宙)、農業ビジネスを含むグリーン経済、デジタル経済など、高成長かつ高付加価値の分野にはチャンスがあると予測される。シンガポールは、サプライチェーンの管制塔としての役割を担い、起業家精神、イノベーション、民間資本の中核として機能を強化する。
そしてアジアへの投資を目指すグローバル企業や事業者、世界進出を目指すアジアの投資家にシンガポールの魅力を発信し続け、近隣諸国との緊密な経済協力を支援するとともに、労働力の質を高め、グローバル人材や補完的なスキルを持つ労働者に門戸を開き続けることで、国際競争力のある人材プールを育成・成長させるという。
EDB 長官のベー・スワンジン博士は次のように述べている。「2022 年の投資額は、シンガポールがビジネスの拠点として、またグローバル・サプライチェーンの重要な中核として信頼されていることを反映しています。世界経済の先行きが不透明な中、多くの国が投資誘致のための産業政策を展開し、投資獲得競争はますます激しくなるでしょう。我々はシンガポールの利点を活かして、グローバル企業や事業者を惹きつける商機と雇用機会を創出し続けていきます」
*1シンガポールドル=約100円 (100.54円、2023年3月10日現在)