シンガポールはアジアの到達地
世界のFDIの10人中4人が、今後1~3年の間にアジア太平洋地域へ投資することを検討している。そしてアジアに目を向けたとき、シンガポールは彼らが思い描くトップ3に入っている。
これは、投資基準が複雑で厳しいものになるにつれ、多くのFDIが進化するニーズを満たすため、シンガポールに注目するようになった結果だ。世界的な調査によると、FDIはシンガポールに対して主に、持続可能な開発プログラム、ハイテクソリューションの利用可能性、世界クラスのインフラ、政治的安定性、熟練した労働力といったイメージを持っているという。
実際シンガポールは、Bloombergの調査によると、社会・政治、経済、技術・インフラ、人間・健康の各要素を網羅するほぼすべての基準において、新興市場と先進市場の両方の平均評価よりも高くランクづけされている。
投資の可能性という点でシンガポールは、先進的な技術と革新性においてFDIから高い評価を得ており、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域における革新的なグリーンフィールド投資(現地法人を設立して工場などを一からつくる投資)先として、トップになっている。
そうしてシンガポールは2022年上半期には、ASEAN諸国、中国、韓国、日本よりも多くの投資を呼び込んだ。また、EDBは2022年通年で、過去最高となる225億SGD(約2兆2500億円)の固定資産投資額を集めた。
違いを生み出すシンガポールのビジネス環境
食料安全保障、再生可能エネルギー、カーボンマネジメントのサービス、デジタル経済などの分野でイノベーションをリードする企業は、ハイテクソリューションの利用可能性、熟練した知識のある労働力、先進的な規制が整った環境、ビジネスに適した投資環境などを理由に、シンガポールをパートナーに選択している。
そのなかにはマイクロソフト(アメリカ)やグーグル(アメリカ)も含まれており、デジタル格差のないインクルーシブな社会の実現のための地域的・世界的な計画と、世界の最も差し迫った問題を解決するためのテクノロジーの導入を推進する拠点として、シンガポールを選んでいる。
また、シンガポールをパートナーとする企業には、持続可能で革新的なソリューションへの高まる需要に特殊素材の開発で応え、世界をリードするArkema(フランス)や、再生可能エネルギー分野のグローバルリーダーであり世界第4位の風力・太陽光発電事業者であるEDP Renewables(スペイン)の一員であるEDPR APACも含まれている。
さらに、養殖AIソリューションプロバイダーのAquaEasy(シンガポール)や、果物・野菜大手Dole(アメリカ)などの企業は、健康的で持続可能な食料システムの構築が求められるなか、食料生産を無駄なくより費用対効果の高いものにする革新的な生産およびアップサイクルのソリューションをシンガポールで設計している。
社会には、私たちが直面する大きな課題を解決するための才能とビジョンがすでに備わっている。これらの課題に立ち向かうことを決意した世界で最も先駆的な企業の多くにとってシンガポールは、パートナーシップ、コラボレーション、イノベーション、変化への寛容さを兼ね備える。そしてシンガポールは、将来の世代のため、世界を再構築するために必要な環境を提供している。
*本稿は、Bloomberg Media Studios (“Singapore: Balancing Profit and Purpose for a Better World”) を翻訳・再構成したものです。