海岸保全などで水事業参画推進
大使館と日本企業、防災技術に期待

海岸保全などで水事業参画推進
大使館と日本企業、防災技術に期待

シンガポールの水関連インフラ分野で、日本企業にとって新たなビジネスチャンスが生まれている。海面上昇が深刻化し、シンガポールで海岸保全の重要性が高まる中、日本の防災技術が役立つと期待されている。15日には在シンガポール日本大使館と複数の日本企業が共同で、シンガポールでの水インフラ事業参画を推進するイベントを開催。現地で多くの納入実績がある水処理技術を含め日本企業が持つ技術力を紹介し、今後の継続的な事業受注拡大に弾みをつけたい考えだ。


Three people holding commemorative items at a Singapore-Japan diplomatic event.

下水を高度処理した飲用可能な水「ニューウオーター(再生水、NEWater)」を使ったクラフトビールで乾杯する(左から順に)石川大使、フー持続可能性・環境相、東レの木村常任理事=15日、シンガポール中心部(NNA撮影)

15日夜には、在シンガポール日本大使公邸で日本企業の水関連インフラをアピールするイベント「SJ60コメモレイティブ・レセプションSIWW」が開かれた。今年が日本・シンガポール外交関係樹立60周年(SJ60)であることを記念するとともに、シンガポールで16~19日開催の水関連の大型国際会議・展示会「シンガポール国際水週間(SIWW)」に合わせて実施した。

在シンガポール日本大使館と東レ、積水化学工業、ID&Eホールディングス、大林組、鹿島、佐藤工業、明電舎、堀場製作所の8社が共同で開催。同大使館がこうしたイベントを開催するのは今回が初となる。シンガポールの水道庁に当たるPUBとシンガポール水協会(SWA)が開催に協力した。会場には国内外から約200人の関係者が出席。シンガポールや日本のほか、マレーシアやインドネシア、フィリピン、インド、オーストラリアなどシンガポール以外のアジア太平洋地域10カ国・地域以上からも政府機関や公益事業会社などの関係者が集まった。

イベントには、石川浩司・駐シンガポール日本大使やシンガポールのグレース・フー持続可能性・環境相兼貿易担当相、PUBのアンジェラ・コー副長官らが出席した。会場では日本企業各社がシンガポールでの過去の受注実績や自社技術などをパネルで展示。水処理膜などの水処理製品・関連技術のほか、水道などの都市インフラ、水関連の土木事業などを紹介した。

東レはこれまで、シンガポールで海水淡水化や下廃水再利用で使われる水処理膜を納入するなど、長年にわたり同国の水質向上ニーズに貢献してきた。イベントに出席した東レの常任理事兼水処理事業部門長、木村公生氏はNNAに対し、「シンガポールではいまや海水淡水化技術は当たり前となっている。ただ同国で何か形になると、域内の他の国への波及効果が高い」とコメント。イベントで自社の実績や技術を紹介する意義を説明した。
 

新規大型投資は一服

国土が狭く水資源の確保が容易ではないシンガポールでは、政府が「4つの蛇口」と呼ばれる水政策を推進している。「貯水池」「ニューウオーター(再生水=NEWater、下水を一度浄化処理した後、高度な処理を施して飲用可能な水にしたもの)」「海水淡水化」「マレーシアからの輸入水」の4つの方法で水資源を確保する政策だ。

シンガポールの水関連インフラ整備は成熟が進み、海水淡水化プラントといった新規大型投資は一服している。国内の水処理プラントには日本企業の水処理膜やろ過技術などが多く採用された。

在シンガポール日本大使館の安達啓祐・一等書記官(インフラ・防災分野)は、今回のイベント開催の意義は3つあると話す。

1つ目は日本企業がシンガポールで多く従事してきた水関連プロジェクトの長い歴史を振り返ること。2つ目はこれまでシンガポールでは日本企業が携わった案件で水処理プラントや水道関連事業が多かったが、最近は気候変動に伴う海面上昇により、海岸保全など新たな分野で日本企業が貢献できるとアピールし、将来の事業拡大につなげることだ。イベントの共同開催企業にゼネコンが名を連ねるのも、こうした分野での貢献に期待が広がっていることの現れという。

3つ目は、日本企業が持つ水インフラ技術をシンガポール以外の第三国にも広げるための支援だ。会場にアジア太平洋各国・地域の業界関係者を招待したのも、日本企業との交流を促して域内での事業拡大を後押しする狙いがある。
 

自然災害多い日本の知見を生かして

安達氏によると、シンガポールでは海面上昇に伴う海岸保全への関心が高まっている。PUBは昨年、海岸保護・洪水管理で14案件に助成金を付与するなど、国を挙げた取り組みが本格化している。

日本の高市早苗政権が掲げる成長戦略では、重点投資対象17分野の中に自然災害が多い日本の知見を生かす「防災・国土強靱(きょうじん)化」が含まれる。安達氏は「シンガポールには水関連プロジェクトがまだ眠っている。同国で日本企業の技術がまだ十分評価されているとはいえない。日本企業の既存の(進出)分野にこだわらず、今後も継続的に現地で事業受注拡大を支援していきたい」と話した。
 

出典:NNA 2026年6月19日付
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