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Press Release
15 February 2024
以下は、EDBの英文レポート原文を基に一部を抄訳したものです。
- 2023年の固定資産投資額、年間総事業費、雇用創出は、シンガポールに対する企業信頼感を反映し、中長期予測を上回った。
- 急速に変化する外部環境下において、EDBはシンガポールの競争力の強化や新たな成長分野の構築、イノベーションの定着、多国籍企業とシンガポール企業や研究エコシステムとの連携を促進してゆく。
2023年の固定資産投資額（FAI）は、中長期予測を上回る127億シンガポールドル(以下、SGD)（約1兆3,970億円）、年間総事業費で89億SGD（約9,790億円）となりました。投資完了後は20,045人の雇用が創出され、年間付加価値額は267億SGD（約2兆9,370億円）になると予測されます。
事業や投資マインドに影響を与えた厳しいグローバル経営環境下におけるシンガポールへの投資の流れは、シンガポールが、事業やイノベーション、人材確保における拠点であり、成長するアジア地域への玄関口（ゲートウェイ）であると認められていることを示します。
2023年度の振り返り
半導体分野については2022年に例外的に急増したものの、今年の固定資産投資額は2017年から2021年の平均値と同レベルの127億SGD（約1兆3,970億円）となりました。化学、エレクトロニクス、ヘルスケア、航空宇宙分野のグローバル企業は、世界やアジア全域に向けたサプライチェーン強化のためにシンガポールへの投資を継続しました。
ご参考：AIやIoT技術の進歩とともに急成長中の半導体産業に力を入れるシンガポール (edb.gov.sg)
投資案件の増加により、年間総事業費、雇用創出、予想付加価値は2022年を上回りました。シンガポールがアジア地域の統括拠点であることから、年間総事業費89億SGD（約9,790億円）の70％近くを統括本部部門と専門サービス部門が占めました。統括本部部門では、東南アジアのデジタル経済の台頭と産業界全体に広がるデジタル化を反映し、情報通信テクノロジー企業が大きく貢献しました。より多くのグローバル企業がシンガポールを拠点としてアジアの成長を取り込む一方、アジア企業はシンガポールの活気あるビジネス・エコシステムを活用して自国外への進出を図っています。
ご参考：急成長するASEAN地域と不確実な時代に求められるサプライチェーンの再構築 (edb.gov.sg)
| 指標*（10億SGD） |
2022年実績 |
中長期予測 |
2023年実績 |
| 固定資産投資 |
22.5 |
8.0 – 10.0 |
12.7 |
| 年間総事業費 |
6.2 |
5.0 – 7.0 |
8.9 |
| 新規雇用者数（人） |
17,113 | 16,000 – 18,000 |
20,045 |
| 年間付加価値 |
20.6 | - |
26.7 |
*投資コミットメントは今後5年間
シンガポールでは、多国籍企業がシンガポールのリサーチ・エコシステムを活用して、イノベーション創出のための価値ある研究を続けています。そのため、外資系ベンチャー企業が拠点を置くようになり、研究開発とイノベーション関連の投資も前年より増加しました。企業は製品開発のため、シンガポールのリサーチ（研究・イノベーション・エンタープライズ）エコシステムとの提携を拡大しています。2021年以降、EDBは、コーポレート・ベンチャー・ローンチパッド（Corporate Venture Launchpad ：CVL）プログラムにおいて、シンガポールで新しいベンチャーコンセプトを育成する大企業25社を支援してきました。このうち15社は、人工知能（AI）、データサービス、気候技術、農業技術などの分野で新規事業を立ち上げ済み、あるいは、計画中です。
ご参考：シンガポール、「世界のスタートアップ・エコシステムランキング」で18位から8位に上昇 (edb.gov.sg)
投資履行後に見込まれる20,045人の雇用については、58％がサービス、26％が研究開発・イノベーション、残りの16％が製造業となっています。
サービス部門の雇用は、環境のサステナビリティ、調達とサプライチェーンの強化、デジタルトランスフォーメーション・自動化など事業の優先分野となり、職種は、営業／事業開発マネージャー、財務エグゼクティブ、サプライチェーン・エグゼクティブ、カーボン・スペシャリスト（エンジニア／科学者）、規制担当マネージャーなどです。
研究開発・イノベーション部門では、最先端技術だけでなく、製品開発や商業化も含まれ、職種は、製品スペシャリスト、ソフトウェア・エンジニア、データ・プラットフォーム・エンジニア、AI／機械学習研究者、バイオインフォマティクス・サイエンティストなどです。
製造業の雇用は多岐にわたり、シンガポールが高度に自動化された先進的な製造拠点であることが反映されています。職種は、テストエンジニア、プロセス技術者、制御システムエンジニア、レーザー／光学システムエンジニア、ネットワーク・スペシャリストなどです。
2024年投資コミットメントゴールと注力分野
中長期投資コミットメントは以下の通りです：
| 指標*（10億SGD） |
2023年実績 |
中長期予測 |
| 固定資産投資 |
12.7 | 8.0 – 10.0 |
| 年間総事業費 |
8.9 | 5.0 – 7.0 |
| 新規雇用者数（人） |
20,045 |
16,000 – 18,000 |
*投資コミットメントは今後5年間
2024年の事業と投資の見通しは、地政学的緊張の継続や多くの国での選挙戦による政策の不確実性、投資競争の激化、マクロ経済の不確実性により、依然として厳しくなっています。EDBは以下の分野に注力することで、先端製造業の重要な世界の結節点として、また東南アジアの統括拠点として、経済競争力を高めていきます。
既存分野の変革
大企業と協力し、AIやデジタル化などで生産性を向上させるとともに、RIEエコシステムの活用を促進します。また、持続可能な製品やソリューションを発掘、新しい気候変動技術の試験的な導入、グリーンで持続可能なソリューションに関連した新しいベンチャーの創出などにより、エネルギー・化学分野を含む産業活動の基盤をカーボンニュートラルに移行していきます。
グローバル・バリューチェーンにおけるシンガポールの地位の強化
シンガポールの地理的利便性、ロジスティクス、供給管理能力を強化し、企業がシンガポールで迅速かつ円滑に事業を立ち上げられるよう引き続き支援します。
新たな成長分野の構築とイノベーションの定着
シンガポール企業庁や他の政府機関と協力し、潜在的な新しい成長の原動力であるグリーン経済、AI、精密医療などに注力します。
地元人材の育成
シンガポール人が成長分野で就業できるよう企業と協働し、職業訓練やリスキリングを継続するとともに、シンガポール人指導者のパイプラインを強化します。
地域のエコシステムの競争力の強化
他の政府機関と協力し、企業の再生可能エネルギーへのアクセスを支援しています。シンガポール企業庁と共に、多国籍企業とシンガポールの企業（地元の大企業、中小企業、ベンチャー企業）や研究機関とのコラボレーションを促進していきます。
EDB長官プン・チョンブーン（Png Cheong Boon）は次のように述べています。「2023年の投資を確実にしたことにより、EDBはシンガポールに新たな機能を導入し、経済のレジリエンスを強化し、雇用と事業機会を創出することができます。私たちは将来に向けた事業のパイプラインを構築してきましたが、シンガポールがグローバル企業やアジアのベンチャー企業にとって魅力的であり続けるためには、競争で優位な立場を保つ必要があると認識しています。EDBはシンガポールの強みをさらに強化するだけでなく、新たな戦略を推し進めることで、経済を成長させ、エコシステムを向上させて、シンガポールでより良い雇用を創出するための新たな機会を掴めるようにしていきます。」
レポートの詳しいデータは英語版の資料をご覧ください：EDB Year 2023 in Review | Singapore EDB
ご参考：2022年におけるシンガポール最新投資状況 固定資産投資額（FAI）は前年比でほぼ倍増、過去最高額を記録 (edb.gov.sg)
(1SGD＝110円で換算)
シンガポール経済開発庁（EDB）とは
EDBは1961年に設立された貿易産業省傘下の政府機関で、シンガポールの産業育成、投資誘致を担っています。「外資系企業誘致のワンストップセンター」として、海外20カ所以上に事務所を持ち、外国企業に投資先としてのシンガポールの情報を提供するだけでなく、世界の経済、技術、市場動向を把握することで、シンガポールで競争力を発揮する産業や分野を育成するための経済戦略を立案しています。日本には、東京に事務所を構え、日本企業のシンガポール投資をサポートしています。
