取り扱う製品は眼内レンズ、メガネ、医療用内視鏡、光学レンズ、半導体デバイス、LCDパネル、HDDなど多岐にわたっている。中でもHOYA Surgical Opticsは、白内障患者のための眼内レンズの設計と製造を専門とする一部門だ。眼内レンズとは、白内障手術で濁った水晶体の代わりに取り付けられる人工レンズのこと。HOYA Surgical Opticsはこの分野で世界第3位の規模を誇る。HOYA Surgical Opticsは、シンガポールに進出して既に15年の歴史を持っている。2004年にシンガポールのトゥアスに製造設備を建設し、2011年には、グローバル本社を日本からシンガポールに移している。そして2018年1月にシンガポールのバイオポリスに新しいグローバルR&D施設をオープンし、HOYA Surgical Opticsをシンガポールにおける統合ハブを持つ最初の眼内レンズの会社にした。
ASEAN諸国の高齢化と白内障患者の増加を解決する
HOYA Surgical Opticsがシンガポールに本社機能から製造販売、更には研究開発施設を設けるには、シンガポールをはじめとしたASEAN諸国の高齢化と、それによる白内障患者の拡大という背景が存在する。白内障とは、眼の水晶体が加齢とともに曇って視力が低下する病気のこと。40歳を超えて視力が低下する最も一般的な原因だ。この白内障は未治療のまま放置しておくと、最悪の場合失明につながる可能性がある。これを受けて、世界保健機関(WHO)は、予防可能な失明をなくすという目標の一つとして、白内障を優先眼科疾患として選別した。そして、研究では白内障を発症する確率は、欧米人に比べてアジア人の方がはるかに高いことが示されている。その数は2020年までにアジアで推定3,850万人に達するとみられている。また、大和総研の発表によると、ASEAN諸国の高齢者人口は、年平均4%以上のスピードで増加し、2030年には約7,200万人に上り、10人に一人が高齢者になると予測されている。特に、この高齢化の進展が速い国が、シンガポール、タイ、ベトナムなどで、シンガポールでは、60歳以上の人々の80%以上が何らかの白内障を抱えており、毎年3万件を超える手術が行われているとのことだ。こうしたシンガポールをはじめとしたASEAN諸国の高齢化による白内障の増加といった課題に対し、HOYA Surgical Opticsは、グローバルR&D施設の設立によって、白内障に対する研究能力を高め、その課題を解決する製品開発を行おうとしている。
革新的な眼内レンズと手術プロセスの開発を目指す
今回新たに開設されたHOYASurgical OpticsのグローバルR&D施設の主な目的が、白内障を解決するための新たな眼内レンズと手術プロセスの開発だ。主に患者の負担を効果的に軽減するための製品と技術が研究される。そこでは、研究開発の実現可能性調査や、生産方法の検討、開発などが行われ、パートナーシップ機関や国内外の民間企業などの製品開発サイクルの初期段階が含まれることになる。そして、ここで開発された眼内レンズや手術プロセスは、白内障対策の新たな基準として、シンガポール国内外の外科医や患者にとってより効果的なソリューションとして提供される。