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BAKE

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人口の増加と中間所得者層の拡大によって一大経済圏に成長しつつある東南アジア。しかし一言で東南アジア市場といっても、多彩な国が存在し、文化や経済状況などもさまざまだ。こうしたグローバルに商品・サービスを広げる一大拠点としてシンガポールは格好の地として認識されている。


今回はシンガポールを中心に東南アジア市場への拡大を目指すお菓子のスタートアップ、株式会社BAKE(以下、BAKE)の事例をご紹介しよう。

 

「お菓子のスタートアップ」BAKEとは

BAKEは、「お菓子のスタートアップ」ともいえる異色のお菓子メーカーで、1ブランド1商品というスタイルで9のブランドを展開している。創業期からの代表的なブランド焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」をはじめ、サクサクのパイ生地にごろっと入った国産りんごが特徴の焼きたてカスタードアップルパイ専門店「RINGO」や、ザクザク食感と見た目もキャッチーなスティック型シュークリーム「クロッカンシュー ザクザク」など、店舗と工房が一体型の高品質なお菓子づくりが特長だ。お菓子メーカーというと一般的に伝統的なイメージが強いが、BAKEは、「お菓子を、進化させる」というステートメントのもと、ITテクノロジーを製品開発やブランド開発に取り入れ、革新的な製品を生み出すことでも知られている。例えばBAKEは、お菓子づくりにオープンイノベーションを取り入れるといった新たな試みも行っている。BAKEは商品の原材料である小麦粉を自社の北海道工場において、お菓子に最適なブレンドになるように開発を行っている。また、都内に商品開発拠点である「BAKE LAB.」を置き、既存商品のアップデートや新商品開発を積極的に行っている。こうした素材開発や商品開発において各地の特産品や素材にこだわりを持っている会社と協力し、新製品の開発を行っている。
 


シンガポールに旗艦店をオープン

BAKEは、2020年3月現在9ブランド111店舗を展開し、海外では8カ国・地域へ進出している。シンガポールには2019年11月に「クロッカンシュー ザクザク」の第1号店をオープンした。BAKEでは、食感や味の追求を行うために、質の高い原材料を選ぶだけではなく工房一体型店舗を展開している。シンガポールではこの工房一体型店舗で焼きたてのシュー生地に注文ごとにカスタードクリームが詰められて出来立てが提供される。

 

東南アジア展開にシンガポールを活用するBAKE

BAKEは実は東南アジアではすでにタイ、フィリピン(アジアでは台湾、韓国、中国、香港)に進出をしている。BAKEはシンガポールには、主力ブランドである「BAKE CHEESE TART」を2016年から展開してきた。そして今回、絶えず進化するシンガポールの食品トレンドを視野に入れ、新食感のスティック型シュークリーム「クロッカンシューザクザク」にブランドスイッチをした。

BAKEがシンガポールに今回工房一体型の旗艦店をもうけたのには3つの理由がある。シンガポールは非常に成熟したスイーツマーケットを持っており、数々の海外ブランドが進出し、消費者のスイーツへの感度が非常に高い。こうした点から、シンガポールの消費者にとってBAKEの洗練された製品が魅力的に感じられると判断したためだ。第二に、シンガポールの観光客の多さも理由の一つだ。シンガポールに旗艦店を設けることは他の国の消費者に自社製品の認知度を上げることができる。これにより、将来的にBAKEが他国の市場に展開しやすくなる。第三に、シンガポールの幅広い自由貿易協定(FTA)のネットワークによって、BAKEは良質な原材料を輸入しやすい、また逆に製品を東南アジア市場に簡単に輸出することができる。

東南アジアの消費は着実に増加しており、シンガポールにはさまざまな国の人々が集まっている。まさにシンガポールは東南アジア市場における「ショーケース」としての役割を担っており、多くの企業もブランド認知の場としてシンガポールをとらえている。BAKEは、シンガポールのこうした役割を期待し、自社の中核となるブランドを展開し他の東南アジア諸国への展開を見据えている。

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