三菱エレ、ロボ連携を拡大
最大7千基、地場企業と連携

三菱エレ、ロボ連携を拡大

最大7千基、地場企業と連携

三菱電機傘下の三菱エレベーター・シンガポールが、人工知能(AI)を活用した自律型サービスロボットとエレベーターの連携を加速している。地場スタートアップと組み、メーカーを問わずさまざまなロボットが人の手を借りずにエレベーターで複数階を移動できる仕組みを整える。配達や清掃、警備など、人手不足が課題となる分野での活用を見込む。


QuikBot autonomous delivery robot with six numbered storage compartments.

自らエレベーターを呼び、認証を経て許可された階へ移動するロボット=8日、シンガポール東部(NNA撮影)

三菱エレベーター・シンガポールと、ロボット工学を手がける地場スタートアップのクイックボット・テクノロジーズは8日、記者会見を開いて戦略的提携を発表した。クイックボット・テクノロジーズのクラウド型プラットフォーム「クイックシンク」と三菱のエレベーターシステムを連携させる。
ロボットは自らエレベーターを呼び、認証を経て許可された階へ移動する。配送や清掃、警備などを担うロボットが、人の手を借りずに複数階にまたがって業務を行えるようにする。
三菱エレベーター・シンガポールの森英之マネジングディレクターはNNAに対し、「エレベーターによる縦動線とロボットの横動線をどうつなげるかが技術的な課題だった」と説明。「今回の提携は大きな一歩になる」と話した。
 

メーカー問わず接続

今回の提携の特徴は、特定メーカーのロボットに限定しない点だ。
三菱エレベーター・シンガポールは2020年代からロボットとエレベーターの連携に取り組んできた。鹿島が23年にシンガポールで開設した自社オフィスビル「The GEAR」では、エレベーター側に接続口を設け、ロボットメーカー側が個別に接続する方式を採用した。これに対し、今回はクイックシンクを共通の接続基盤として活用する。従来はロボットメーカーごとに異なる通信方式に対応する必要があったが、システム同士をつなぐアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を活用し、クイックシンクを介してさまざまなメーカーのロボットを三菱のエレベーターにつなげられるようにする。森氏は「クイックボットはロボットメーカーごとの通信方式をまとめるシステムを持っている」と説明。「いろいろなロボットメーカーと接続できること」が提携の強みだとした。
 

Hideyuki Mori of Mitsubishi Elevator Singapore (left) and Alan Ng of QuickBot Technologies at a strategic partnership signing ceremony in Singapore.

戦略的提携の調印式に出席した三菱エレベーター・シンガポールの森英之マネジングディレクター(左)とクイックボット・テクノロジーズ創業者のアラン・ウン最高経営責任者(CEO)=8日、シンガポール東部(NNA撮影)

クイックボット・テクノロジーズのアーロン・コー・アシスタントディレクターによると、ロボットメーカーがそれぞれエレベーターやドアなどの設備と個別に接続するのに比べ、クラウド上の共通基盤を介することで、導入にかかるコストや作業を減らせるという。
両社は25年10月ごろからクラウドを使ったロボット連携に取り組み、今回正式に提携した。三菱エレベーター・シンガポールはエレベーターの制御と安全な昇降を担い、クイックボット・テクノロジーズがロボットとエレベーターをつなぐ役割を担う。
 

既存ビルでも実証

両社の取り組みは既に実証段階に入っている。東部マリンパレードの施設で、清掃ロボット1台を使った実証を進めている。既存のエレベーターにシステムを後付けした。実証結果を踏まえ、対象拡大を検討する。
安全性にも配慮する。ロボットは人を検知し、エレベーター内が混雑していれば乗らずに次のエレベーターを待つことができる。許可されていない階にはアクセスできないようにする。配送、清掃、警備などの移動型ロボットには、人との接触を避けるセンサーも搭載されているという。
ロボットの「見た目」も運用上の工夫の一つだという。アーロン氏によると、ある清掃ロボット会社では、初代機をかわいらしいデザインにしたところ、利用者が集まって写真を撮り、清掃の妨げになることがあった。このため2代目は、あえて目立たないデザインに変更したという。アーロン氏はロボットへの親しみやすさと業務効率の「バランスが重要」と説明した。
 


人手不足の業界に

三菱エレベーター・シンガポールは現在、国内で三菱製エレベーター約7,000基の保守を手がけている。今回の戦略的提携を機に、今後は保守契約を結ぶ顧客に新たなロボット連携サービスを提案する。具体的な導入目標は明らかにしていないが、数年以内の展開を目指す。
森氏は、シンガポールでは労働人口の減少や高齢化を背景に、配送や清掃、警備などでロボット需要が高まるとみる。「社会的なニーズにエレベーター会社としてしっかり応えたい。クイックボット・テクノロジーズと組んだ統合サービスを一つの解決策として顧客に提案していく」と述べ、ロボットとの連携をエレベーター事業の新たな付加価値としていく考えを示した。
アーロン氏は、若者が配送や清掃などの仕事を敬遠する傾向もロボット需要を押し上げると指摘。例えば病院ではロボットが医薬品の配送を担うことで、職員が患者のケアに専念できると説明した。「ロボットは人間と競争するのではなく、補完するものだ」と強調した。
 

Hideyuki Mori, Managing Director of Mitsubishi Elevator Singapore.

「社会的なニーズにエレベーター会社としてしっかり応えたい」と話す三菱エレベーター・シンガポールの森英之マネジングディレクター=8日、シンガポール東部(NNA撮影)

出典:NNA 2026年9月9日付
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