リアルなスマートファクトリーの実験でIoTの生産ラインを自社に最適化。
このSIMTechのモデル工場では、どのような体験ができるのだろうか。スマートファクトリーとは、原料調達から開発、製造、納品といった一連の生産工程が、デジタル化と自動化によって大幅に効率化された工場のこと。生産性の向上とコスト削減を実現し、更にはマスカスタマイゼーションのような多品種の量産を可能にしてくれる。しかし、実際に各企業が自社の製造プロセスをスマート化するとなると、製品やサービス、工場の現状なども把握しなければならず、自社に最適化された調整も必要だ。SIMTechのモデル工場では、こうした企業側の状況やニーズを踏まえ、単なる展示ではない、本物の生産ラインでの試験的な運用ができる。ここでは、生産ラインの各工程のデータがセンサーによってキャプチャされ、企業は自社の現実の問題を予測し、調整を行い、スマートファクトリーに学習を適用することができる。
製造コントロールタワーの機能。生産から顧客の要望までリアルタイムデータで一元管理
SIMTechのモデル工場の最大の特長は、製造コントロールタワーと呼ばれる次世代製造技術によって、実際の製品を生産することができる完全な生産ラインを動かすことができる。製造コントロールタワーでは、生産ラインの各機械の動きや、配送ライン、需要動向、顧客からの要望などをリアルタイムにデータとして収集し、更にそのデータを統合、分析して、中央のダッシュボードに表示する機能を持つ。そして、最新の意思決定サポートツールによって、更なる生産性や品質の向上などマスカスタマイゼーションをデモンストレイトが可能だ。
没入型トレーニングで、スマートファクトリーに適応する能力を身につける
SIMTechモデル工場のもう一つの特長が、実戦的な人材トレーニングだ。スマート化された工場では、原料調達から製造、納品、顧客分析、市場動向まで、サプライチェーンに関するすべての工程がデジタル化される。そのため、そこで働く従業員にも従来の製造機械を動かすといった働き方から、データを読み取り、常に変化し続ける自社を取り巻く状況に柔軟に対応する能力が求められるようになる。そのため、スマート化された工場ではそれに適応した人材が必須となる。ここでは、没入型の体験を通して、自動化によるコントロールの特長の理解や、現場における意思決定プロセスや選択の仕方、顧客への影響など、デジタル化された製造プロセスの新たな能力を身につけるトレーニングを受けることができる。
各企業に最適化できるスマート化のモジュール式ソリューション
製造業のスマートファクトリーへの移行は一朝一夕にできるものではない。一言で製造業といっても、業種や取り扱う製品によって、製造プロセスや市場状況、顧客ニーズはさまざまだからだ。また、設備の状況や人材のデジタル化への適応レベルなども各企業で異なる。そのためスマート化するうえで何よりもまず求められるのが、その企業が置かれている状況を把握することと、それに向けてスマート化の導入技術を最適化することが求められる。シンガポール経済開発庁(EDB)は、企業がインダストリー4.0を導入するのを支援する診断ツールを提供しており、各企業はこの診断ツールを使って、まずは自社の状況を知ることができる。そして、更にSIMTechのモデル工場では、企業がニーズに基づいて選択できるモジュール式ソリューションを提供しており、自社に最適な形でスマート化することができる。こうした柔軟性のある取り組みにより、このモデル工場では、既に20を超えるスマート化の実装が行われた。高度なデジタル競争力と人材育成の力によって、続々とスマートファクトリーが誕生しそうだ。