シンガポール:快適な生活とビジネスを支えるデジタル決済
シンガポールでも、日本でもなじみの深い消費財が実に簡単に手に入る。食品や日用品なら日系スーパーの明治屋やドン・キホーテ(Don Don Donki名で展開)、雑貨や衣料ならニトリやダイソー、無印良品(MUJI)、ユニクロなどが進出している。数多くの飲食店、特にラーメン店も展開しており、駐在でも出張でも日本人が快適な生活を送ることが可能だ。
日本と同様、シンガポールでもタッチ決済が浸透し、スマートフォン1台で支払いが済んでしまうため、日々の生活で現金や財布を持ち歩く必要がなくなってきた。
シンガポールのシームレスなデジタルエコシステムは、ビジネスと日常生活の両方を効率的にサポートしている。シンガポールでよく耳にする主なデジタル決済の種類を紹介する 。
PayNow:シンガポールの24時間無料即時送金システム
最も注目すべきは、銀行間簡易決済システム「PayNow」だ。最大の特徴は、互いの銀行口座の詳細を知らなくても、スマートフォンで簡単に、24時間いつでも無料で即時送金が可能な点にある。個人間では相手の携帯電話番号や身分証番号のみで利用できる。
法人向け即時決済システム「PayNow Corporate」では、法人登記番号(UEN)さえあれば、企業間取引(B2B)、企業・消費者間取引(B2C)、従業員への給与支払い、政府からの助成金受領まで、幅広い用途に対応している。従来の銀行振込と異なり、着金までのタイムラグがなく、資金効率の向上に大きく貢献している。日系金融では現在、SMBC(三井住友銀行)がこのシステムに対応している。
国際取引を効率化:PayNowの越境決済機能
シンガポールの決済システムの強みは、域内での越境決済機能にある。PayNowは、マレーシアのDuitNowやタイのPromptPayをはじめとする近隣諸国の即時決済システムとの相互運用を順次拡大しており、特に海外の中小取引先との取引において威力を発揮している。
従来、海外の中小企業との少額取引では、銀行送金手数料の負担が相対的に大きく、着金確認に時間を要するなどの課題があった。PayNowの越境決済では、即時入出金が可能で手数料も大幅に抑えられるため、取引金額に上限はあるが、効率的な決済が実現できる。一般的な銀行間取引と比べて競争力のある為替レートが適用されるため、頻繁な少額取引を行う企業にとって、コスト面での優位性が高い。
近隣諸国への出張時においても、PayNowを利用することで、クレジットカードの海外決済手数料や為替手数料を回避でき、経費精算の効率化とコスト削減を同時に実現できる。シンガポールを拠点とする企業では、域内の中小企業とのビジネスにおいて、スムーズかつ経済的な資金決済を実現できる環境が整っている。
シームレスな日常を支えるモバイル決済の多様性
主要システムを補完する形で、国内最大手銀行DBSが提供するモバイルウォレット「PayLah」や、クレジットカードのタッチ決済「PayWave」も広く普及している。クレジットカードやデビットカードは公共交通機関での利用も可能で、Apple PayやGoogle Payなどのモバイル決済とも連携しているため、出張者は交通系ICカードを購入しチャージする必要がなくなった。