世界のバイオテクノロジー・製薬企業が飛躍する拠点、シンガポール

世界のバイオテクノロジー・製薬企業が飛躍する拠点、シンガポール

アジアは急速に次世代治療薬のハブになりつつある。その中心に位置するシンガポールは、研究から製品化まで、企業の事業拡大を可能にするエコシステムを提供している。

BIO Asia–Taiwan 2025 conference highlights featuring keynote speakers, panel discussions, exhibition hall activities, and regional collaboration forum with industry leaders.

世界的大手製薬企業は、次なる製品パイプラインの強化を見据え、高品質で信頼性が高く、ヒトデータにもとづいた、臨床前段階の「ベスト・イン・クラス」および「ファースト・イン・クラス」アセットの調達などのイノベーションを求め、アジアに目を向けている。

同時に、バイオテクノロジー企業は自国市場から事業を拡大し、オーストラリア、日本、韓国、シンガポール、その他東南アジア諸国などの多様な患者層を対象にイノベーションの検証を検討している。

台湾で開催された「BIO Asia Regional Collaboration Summit」で、EDBのゴー・ワンイー・ヘルスケア担当シニア・バイスプレジデントは、シンガポールがいかに域内バイオテクノロジー産業の中で世界的なイノベーション拠点として頭角を現しているかについて語った。シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)のコー・ブントン・エグゼクティブ・ディレクター兼チーフ・インダストリー・オフィサーは、シンガポールが次世代治療のためのバイオ製造新技術をどのように支援しているかを強調した。
 

1.アジアのバイオテックローンチパッド、シンガポール

2024年、アジアの特許出願数は世界全体の7割を占め1、世界的イノベーションのハブの地位を確立した。2019年から2024年にかけても、革新的医薬品開発パイプラインのアジアのシェアは年率7%で拡大し、世界全体の40%を占めるに至っている2。これは米国とほぼ同水準で、うち5分の1は新たなモダリティに注力したものとなっている。

このアジアの躍動的な環境の中で、シンガポールはバイオテック・イノベーションの信頼される拠点として確固たる地位を築いている。ジョンソン・エンド・ジョンソン、ノバルティス、ファイザーなど、大手製薬会社トップ10社のうち8社が地域統括拠点を構えている3。

シンガポールはまた、腫瘍学、心血管疾患、眼科、皮膚病、感染症などの分野を中心に、アジア人の生物学的特性に関する深い研究能力を培っている。これにより活気あるエコシステムが生まれ、2015年以降、国内発のバイオテクノロジー企業数は4倍に増加した4。

このエコシステムは今、医薬品開発を加速し、人々の健康増進につなげるための連携を後押ししている。

中外製薬は、企業がシンガポールのバイオメディカルサイエンス分野のエコシステムを活用して創薬・承認プロセスを加速させた好例を示している。生命を脅かす希少な血液疾患の治療のための次世代型抗C5抗体の開発で、中外製薬のシンガポール研究チームは、A*STARの多分野にわたる科学者と緊密に連携し、創薬プロセスを加速させた。通常10~15年かかるプロセスは、約3年に短縮された。 
 


2.次世代治療の推進 ― 多特異性抗体、コンジュゲート、細胞・遺伝子治療、核酸医薬

シンガポールは、次世代治療 ―すなわち、より高精度で疾患に作用する高度なプレシジョンメディシン(精密医療)の開発を急速に進めている。

例えばアストラゼネカは、シンガポールの高度な製造技術力を活用し、ADC(抗体薬物複合体)施設に15億米ドル(20億シンガポールドル)を投資している。これは抗がん剤を正確にがん細胞に届けるがん治療法、ADCの製造工程を一貫して担う同社初の施設だ。

シンガポールはまた、初期段階のバイオメディカル研究開発(R&D)の、臨床的に有用な製品への転換を支援するため、民間企業との連携に開かれた国家的プラットフォームを設立している。

代表的な例として、グラム単位のmRNA治療薬とワクチンを製造可能なアジア初の施設「Nucleic Acid Therapeutics Initiative (NATi) mRNA Biofoundry」がある。

シンガポールの強固な研究基盤、優れた製造能力、そして域内ネットワークと高い評価は、企業が次世代治療薬の開発・製造のためのエコシステムを活用する上で最適な組み合わせであることを証明している。 
 

3.世界市場での競争力獲得に向けた、上流工程へのディープテック投資と官民連携の推進 

シンガポールでは、産官学連携が相互に価値を生み出し、バイオメディカル分野のエコシステムが活気づいている。

例えば、2900万米ドル規模の統合型トランスレーショナル研究開発センター「National University of Singapore (NUS)-Agilent Hub for Translation & Capture」では、心血管疾患と糖尿病のより正確な臨床診断法の開発が行われている。ジョンソン・エンド・ジョンソンの「JLABS Singapore」は、地元のインキュベーターや戦略的パートナーと緊密に連携しながら、初期段階の発見から革新的な医薬品への実用化を加速させている。

これらのパートナーシップは、シンガポールが企業に国内研究資源へのアクセス機会を提供するとともに、より広範なイノベーション・エコシステムの発展に貢献していることを示している。 
 

シンガポール、安定した拠点。世界市場への玄関口

シンガポールは20年以上前からバイオメディカルサイエンスのエコシステム構築に取り組んできた。現在、90以上の製造工場、80以上の地域統括拠点、30のR&Dセンターを擁している。バイオメディカル製造は多様な国内製造業の重要な柱であり、2024年の生産高は325億シンガポールドルに達している。

シンガポールは、保健科学庁(HSA)の管轄による厳格な規制プロセスのもと、知的財産保護の分野で世界トップ5にランクされている。HSAの先進的な医薬品規制システムは、2022年に世界保健機関(WHO)の規制当局成熟度の最高水準、レベル4に認証された5。バイオテクノロジー企業にとって、シンガポールでの承認取得は世界の主要市場への足がかりとなり、国際共同治験や市場投入までの時間を大幅に短縮できる。

ヘルスケアの課題が複雑化し、次世代治療法にますます高度なアプローチが求められる中、成功の鍵は、各機関間、分野間、そして国境を越えた連携にある。シンガポールのバイオメディカル・エコシステムは、このアプローチに基づいて構築されており、政府系プラットフォーム、多国籍企業、研究機関、スタートアップ企業が相互に連携したネットワークとして機能する実用的な枠組みが整備されている。 
 

本記事はHow Singapore is a hub for global biotech and pharmaceutical companies to access growth | Singapore EDBを翻訳し加筆修正したものです。

 


注釈:

1 World Intellectual Property Indicators 2025: Highlights - Patents highlights. (2025). World Intellectual Property Indicators 2025: Highlights. Accessed 18 November 2025.

2 McKinsey & Company. (2024). Asia Biopharma Innovation – on the cusp of a new era?

3 By FY2025 Revenue

4 Sunderland, S., Sarkar, S., & Wang, W. (2025). Unlocking Growth: Singapore’s role in advancing life sciences and medtech innovations. L.E.K. Consulting. Accessed 18 November 2025

5 HSA Singapore the first national regulatory authority awarded the highest recognition for an advanced medicines regulatory system by the World Health Organization. (2022). HSA. Accessed 18 November 2025.

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