人工知能(AI)の応用と世界の医療機器メーカーの投資
世界人口の6割が集中するアジアは、将来的な高齢化を背景に、メドテック市場の急拡大が予想されている。需要が高まる中、シンガポールはメドテックの主要拠点化を目指し、①技術革新促進②人材育成③インフラ整備④サプライヤー基盤構築⑤サステナビリティの5領域に重点を置いたエコシステム構築を推進してきた。
AIの医療分野への応用も拡大しており、シンガポール国立大学病院(NUH)は2026年3月、新たな技術拠点としてNUH Innovation Hubを開設し、実証を進めている。2025年には公営医療グループSingHealthとデュークNUS医学大学院が人工知能研究所AIMIを設立。医療従事者がAIを活用したイノベーションを生み出し導入できるよう、研究資源や資金を提供。商業化までを支援する拠点として機能している。
グローバル企業もシンガポールをAI開発拠点として活用している。睡眠・呼吸器医療機器大手ResMedはAIを活用した患者・医療従事者の体験向上を目指すDigital Science & AI Lab(DSAIL)を設立。独Merck KGaAは欧米以外では初のデジタルハブを開設し、知的財産を保護しながら安全性の高いAI活用型バイオメディカルデータ基盤の構築を進めている。米製薬大手MSDでは、最新技術を活用した精密医療分野で研究者・科学者を育成するTalent Accelerator Programmeが始まっている。
メニコン—持続可能なパッケージ開発とグローバル展開の拠点として
コンタクトレンズメーカーのメニコンは2005年に販売子会社、2006年に生産子会社をシンガポールに設立した。2011年には技術開発機能を備えた約6000㎡の先端製造工場を開設し、同工場ではメニコンが独自のフラットパック技術により厚さ約1㎜の世界最薄パッケージを開発。1日使い捨てコンタクトレンズ「Miru 1Day Menicon Flat Pack」を生産し、24時間稼働の生産ハブとして機能している。シンガポールは東南アジアのほか、日本、中国、韓国、オーストラリア、欧州連合(EU)、アメリカなど多くの国・地域とFTAや多国間協定を締結しており、グローバル市場にアクセスしやすいことが利点となっている。
同工場で生産するフラットパック製品は、レンズ容器のプラスチック使用量を従来品から8割削減しており、パッケージは製造工程で使用したプラスチックを100%再利用している。使用済みレンズケースの資源循環も目指しており、グループ販売店や自治体、サプライヤーなどにも回収ボックスを設置している。2026年6月には従来、シュリンク包装に印刷していたデザインを外箱に直接印刷する「ダイレクト印刷技術」を導入。シュリンクフィルムを廃止し、プラスチック使用量のさらなる削減を図っている。
2022年にはシンガポールの近視専門研究施設Myopia Specialist Centre (MSC)と、先端研究・教育についての協力体制を構築。近視の進行抑制に関する研究を開始した。2024年にはコンタクトレンズ企業Oculusからシンガポール・マレーシア・インドネシアの販売子会社3社を取得。2025年にはシンガポールの販売子会社二つを合併することで販売網を最適化し、東南アジアでの販売力強化に取り組んでいる。