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【SG半導体】東南アに照準、2億ドルで工場
テクセンド、世界で先端加速(下)

【SG半導体】東南アに照準、2億ドルで工場
テクセンド、世界で先端加速(下)

半導体フォトマスク(回路の原版)の外販市場で首位のテクセンドフォトマスク(東京都港区)は、世界シェア4割への引き上げを目指し、各地の工場で先端対応を進めている。半導体メーカーによる追加投資が相次ぐシンガポールでは、約2億米ドル(約309億円)を投じて工場を建設中だ。東南アジアの周辺国やインドからの需要も見据える。


Group of executives in formal attire and safety helmets holding ceremonial shovels at the Tekscento Photomask Singapore project groundbreaking ceremony.

テクセンドフォトマスクは、2025年10月末にシンガポール東部タンピネスで工場の起工式を行った(同社提供)

半導体のフォトマスクは、業界構造が寡占的なことで知られる。サプライチェーン(供給網)リスクを回避する観点から、半導体メーカーが複数のマスクベンダーに発注する傾向にあり、競合各社のシェアが拮抗(きっこう)しやすいためだ。

外販市場ではテクセンド、大日本印刷、米フォトロニクスの3社が大部分のシェアを占める。このうち大日本印刷とフォトロニクスは、中国と台湾で合弁事業を運営するなど提携関係にある。

テクセンドの小嶋洋介・事業戦略部統括部長は、「われわれの強みは、グローバルな供給体制を持ち、顧客のすぐ近くで生産できること。これを生かしてシェアを高めたい」と語る。
 

中国はマスクベンダーが20社超に増加

テクセンドは、前身の凸版印刷(現TOPPANホールディングス)が2005年に米デュポンフォトマスクの全株を取得し、海外拠点網を一気に拡大した。現在は日本を含む7カ国で8カ所の工場を運営する。

シェア拡大の焦点は先端対応にある。主要顧客のロジック半導体メーカーが回路線幅を微細化する動きに合わせ、各地のフォトマスク工場でも先端品に対応できるよう能力増強や受注内容の再編成に取り組んでいる。

米国テキサス州ラウンドロックでは、米国での需要拡大を受けて既存工場を拡張中だ。生産能力を40%以上増強するとともに、12ナノメートル(ナノは10億分の1)の先端品に対応する。
 

Group of executives in formal attire and safety helmets holding ceremonial shovels at the Tekscento Photomask Singapore project groundbreaking ceremony.

中国では市場が急速に変化している。旺盛な半導体需要を背景に、現地メーカーのフォトマスクショップ部門が独立し、外販市場に加わるケースが目立ってきた。現地のフォトマスクベンダーは20社以上に増加。プロセスも45ナノから28~22ナノへと微細化が見られる。

テクセンドはこうした中、汎用(はんよう)品向けから先端品向けに受注を移行し、他社との差別化を図っている。もっとも、台頭する中国勢がこの先、世界市場に影響を与えるほどの存在になるかについては慎重な見方だ。

小嶋氏は「現在の中国は、国内の需要を満たそうという局面なのではないか。今後もマスクベンダーの数が増えるのか、整理されていくのか見極める必要がある」と指摘する。フォトマスクは半導体の設計情報を含む性質上、業界では中国勢からの調達に慎重な意見も根強い。
 

東南アジア唯一のフォトマスク工場
 
Two men seated on a sofa in a casual office setting, engaged in discussion, with one speaking and gesturing while the other listens.

テクセンドフォトマスク・シンガポールのジェイソン・チョウ社長(左)と杉山智エンジニアリング・マネジャー=1月、シンガポール中心部(NNA撮影)

現在、テクセンドが最も力を注いでいる地域はシンガポールだ。27年前半の稼働を目指し、約2億米ドルを投じて東部の「タンピネス工業団地」に新工場を建設している。

テクセンドフォトマスク・シンガポールのジェイソン・チョウ社長は、「東南アジアは半導体の需要と生産がともに高まっており、顧客のそばで供給できる体制が不可欠と判断した」と工場の狙いを説明した。「将来的には、半導体産業が立ち上がりつつあるインド市場も取り込みたい」と意気込む。

前工程から後工程まで半導体のエコシステムが構築されているシンガポールでは、過去にデュポンフォトマスクとフォトロニクスが工場を操業していた。ただ、外販市場が低迷期に入ったことでデュポンは08年、フォトロニクスは11年に生産を終了。テクセンドの新工場が完成すれば、東南アジアで唯一のフォトマスク工場になる。

新工場では人工知能(AI)生産管理を活用した自動化ラインを整備し、生産効率や品質、納期管理の向上を図る。まずはロジックを中心に28ナノ向けから製造を始める。現在は日本や台湾からのフォトマスクを顧客に供給しているが、稼働後はリードタイムの大幅な短縮を見込む。

シンガポールはここ数年、台湾積体電路製造(TSMC)系や米グローバルファウンドリーズなど、半導体メーカーによるウエハー製造への追加投資が相次ぐ。今年1月には米マイクロン・テクノロジーがメモリー製造施設の起工式を行い、向こう10年で約240億米ドル規模の大型投資を実施すると発表した。

チョウ社長は「新工場が稼働すれば、よりきめ細かい対応ができるようになる。シンガポールでの操業には、省電力や水使用の削減などで高い水準を求められるが、東南アジアの顧客とともに成長していきたい」と語り、事業拡大への意欲を示した。
 

出典:NNA 2026年2月4日付記事

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