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高輪ゲートウェイで共創イノベーションセミナーを開催-日本企業の東南アジア進出支援、シンガポールのエコシステム活用法を探る

高輪ゲートウェイで共創イノベーションセミナーを開催-日本企業の東南アジア進出支援、シンガポールのエコシステム活用法を探る

Audience attending a business presentation on Singapore’s Economic Development Board (EDB), with a speaker presenting slides on large screens in a conference room.

シンガポール経済開発庁(EDB)は先般 、高輪ゲートウェイで、東南アジアでの事業拡大を検討する日本企業向けのセミナー「東南アジアの成長を取り込むためのイノベーション戦略とは?-シンガポールをゲートウェイとして」を、経営コンサルティング会社ICMGグループや東日本旅客鉄道(JR東日本)と共催した。

EDBのクラレンス・チュア日本・韓国地域局長は企業のイノベーション(技術革新)にシンガポールを活用する方法を紹介。ICMGシンガポールの羽田大樹グローバル共創事業執行役とJR東日本の代表者はそれぞれイノベーションのエコシステム(ビジネス生態系)をテーマに講演したほか、チュア、羽田両氏にパナソニックホールディングス(HD)技術部門事業開発室エキスパートの原田惇平氏を交えた3人が現地の共創環境についてパネルディスカッションした。
 

Panel discussion with three speakers seated on stools, speaking into microphones in front of screens displaying information about the JCTI launch and partner organizations.

パネルディスカッションに臨むチュア氏(左)や原田氏(中央)、羽田氏

  • イノベーション体制、活用のカギは?

EDBのチュア局長は、日本企業はシンガポールで長年にわたり活動しているが、今後は「ビジネスモデルのイノベーションにも期待している」と強調。シンガポールの利点を生かしながら日本では難しい事業を試して「ディスラプション(創造的破壊)を起こしてほしい」と語った。シンガポール政府は、企業の個別のR&D計画書に基づき、各種補助制度を展開している。

ICMGグループのシンガポール拠点で日系企業の新規事業開発支援を手掛ける羽田氏は、日本企業がシンガポールでイノベーションに取り組む利点として、政府機関のサポートの手厚さを挙げる。政府は明確な戦略を打ち出し、予算を投下するほか、概念実証(POC)を実行する場の提供につながる規制緩和を通じて事業を育てることに注力していると紹介した。また、日本との時差が1時間と小さく、飛行機なら片道6時間半で行き来できる地理面や東南アジアの優秀な人材が集まる場所である点も利点に挙げた。

その上で、シンガポールのイノベーション体制をフル活用するには、事業目的を政府方針と一致させることがプラスに作用すると助言。また、裁量権を持ったエース級人材を厳選して送り込むことや、自前主義から脱却しパートナーのエコシステムを活用する共創マインドへの転換、市況などの変化に対する柔軟な対応もカギとなると力説した。
 

Panel discussion with three speakers seated on stools, speaking into microphones in front of screens displaying information about the JCTI launch and partner organizations.

シンガポールの利点を紹介するICMGグループの羽田氏


  • 自社技術と他社アイデアの相乗効果
Panel discussion with three speakers seated on stools, speaking into microphones in front of screens displaying information about the JCTI launch and partner organizations.

シンガポールでの事業を振り返るパナソニックHDの原田氏

パナソニックの原田氏は、日本企業にとってのシンガポールの魅力に「エコシステムのコンパクトさ」を挙げる。、シンガポールでは事業のグローバル展開を志向する企業同士が間近に集まり、共通の目的に向けた取り組みがしやすいと好感した。

13年に入社し、25年3月までの6年間、シンガポールにある研究開発(R&D)拠点に出向した原田氏は、企業が保有する「技術」と各社が抱える「課題」のマッチング支援を手掛ける現地の政府系NPO法人「IPI」との連携でオープンイノベーションを推進し、24年4月には日本貿易振興機構(ジェトロ)や他社と共同で日系企業有志団体「ジャパニーズ・コーポレーツ・テクノロジー・イノベーション(JCTI)ローンチパッド」を立ち上げた。

パナソニックは事業領域が広く、技術開発も手掛けるが、事業化につなげ切れない点が課題だった。そうした中、保有資産を社外パートナーの資産と掛け合わせるオープンイノベーションに注目。自社技術をはじめとする無形資産をシンガポールに持ち込み、他社の事業アイデアと組み合わせることで実社会での活用を図っている。

これまで40件を上回る技術をIPIのサービス上で公開し、170社余りが関心を表明。30件近くがPOCに進み、数件が社会実装間近の段階に入るなど、成果を挙げつつある。

原田氏は、成果を振り返り「シンガポールのエコシステム活用は有効」と手応えを強調する一方、1社単独でエコシステムを開拓し、その内部で何十年と存在感を維持し続けるのは困難だとも指摘する。こうした課題意識から、多企業が一丸となって外部への技術紹介と内部での知見共有を可能にする枠組みとしてJCTIローンチパッドを設立。創設メンバーは、パナソニックと三井化学、リコー、東洋製缶、日清紡ホールディングスで、後に村田製作所や日東電工が参加、その後も数社から加入の問い合わせが入っている。「グローバルで闘っていこうという共通点を持つ企業同士がシンガポールで集まることで、目的を共通化しやすい」と付け加えた。


セミナーは、JR東日本が開発を手掛ける高輪ゲートウェイシティのコワーキングスペース(共有オフィス)「リンク・スカラーズ・ハブ(LiSH)」を会場に、複合企業や建設・エンジニアリング、金融、医療・バイオテックなど約50社の50人が出席。終了後のネットワーキングセッションでは各参加者が活発に意見交換した。
 

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