明治、アジア太平洋で食品イノベーション推進―シンガポールに地域統括拠点設立

明治、アジア太平洋で食品イノベーション推進―シンガポールに地域統括拠点設立

明治は1974年にシンガポールに進出し、50年余りにわたって事業基盤を築いてきた。現在は「チョコルーム(きのこの山)」、「ヤンヤン」などの人気商品を生産し、世界40カ国以上の市場へ輸出している。明治はシンガポールをアジア太平洋地域の主要市場へのアクセス拠点として活用しながら、2025年には地域統括本部「メイジフード・アジアパシフィック」も設立。高技能人材活用と地元研究機関との提携を通じて、域内事業統括、新規市場開拓、輸出拡大、現地ニーズに即した製品開発を一体的に推進している。 明治のアジア太平洋戦略について、株式会社明治の海外事業本部海外戦略企画部コーポレートグループの小村知史グループ長にインタビューした。


Collage of Meiji products and branding, featuring Lucky Stick, Apollo strawberry chocolate confectionery, Hello Panda snacks, and Yan Yan treats displayed alongside a Meiji facility in Singapore.

メイジセイカ・シンガポールが販売する商品の一部(メイジセイカ・シンガポールのインスタグラム投稿より)

地域統括と独自の製品開発


Q:シンガポール明治グループ各社の規模と役割についてお聞かせください。

A:現在シンガポール総従業員数は325人です。うち、メイジセイカ・シンガポールには2026年1月現在、313人の従業員が在籍しています。メイジフード・アジアパシフィック(以下、地域統括本部)は12人構成で、今後拡大予定です。

地域統括本部では、コーポレート部門がグループ会社との連携や地域戦略の調整・意思決定を担う一方、営業・マーケティングチームが卸売と各海外市場への輸出に向けた地域マーケティング戦略を策定しています。

一方、メイジセイカ・シンガポールの製菓工場は、製造・流通・経営機能を一体的に備えた事業として運営されています。これまでの設備投資で、チョコレートスナックやビスケットなどの菓子製品、輸出向けの半製品食品原材料などの生産能力が強化されました。社内研究開発と品質管理能力がこれを補完しています。
 

Exterior view of a Meiji facility building in Singapore, featuring the company logo on a white facade under a bright blue sky.

メイジセイカ・シンガポール工場写真(メイジセイカ・シンガポール提供)

Q:シンガポールは、地域統括本部のサプライチェーンとグローバル流通戦略でどのような役割を果たしていますか?

A:メイジセイカ・シンガポールは、明治のグローバルサプライチェーンと製品流通の拡大で重要な役割を担っています。日本国内の製品はハラール認証を取得しておらず、欧州の原材料原産国に関する規制にも対応していないため、シンガポールで製造された明治の製品を中東諸国やヨーロッパへ輸出しています。
 

Q:域内・グローバル市場向けに開発・改良された製品はありますか?

A:メイジセイカシンガポールの開発チームは、「ハローパンダ・砂糖30%オフ」を独自に開発し、2026年4月にシンガポールで発売開始しました。本製品はハラール認証と「Healthier Choice」マークを取得しており、今後は他の市場へも順次展開予定です。
 

Q:「ハローパンダ・砂糖30%オフ」をシンガポールで先行発売された理由をお聞かせください。

A:シンガポールは健康意識の高い消費者が増えており、付加価値型商品への受容性が高い市場であることから、発売の場として最適と判断しました。また、今後の東南アジア各国への展開を見据えた際、消費者からのフィードバックを先行的に得られるテストマーケットとしても位置づけています。
 

Packaging design for Meiji Hello Panda dark chocolate flavoured biscuit treats, featuring a cartoon panda mascot and “30% less sugar” label on a dark blue resealable pouch.

シンガポールで開発され、ハラール認証とHealthier Choiceロゴを取得した独自商品「ハローパンダ・砂糖30%オフ」(メイジセイカ・シンガポール提供)

多様な人材で東南アジア事業拡大を図る


Q:シンガポールは明治の海外事業でどのような位置づけにあるのでしょうか。

A:海外事業拡大は重要な経営課題の一つです。そのため、より適切かつ迅速な経営判断を行う地域統括本部の設置が必要であると考えました。

明治はアジア太平洋地域、特にここシンガポールを今後の事業成長に向けた最も重要な戦略拠点の一つと位置付けています。
 

Q:なぜシンガポールを明治のアジア太平洋地域統括本部(RHQ)として選ばれましたか?

A:明治は当地ですでに51年の歴史があり、多くの海外拠点同様、業務を英語で行っていること、食品・飲料分野の多国籍企業で経験を積んだ優秀な人材を獲得しやすい環境が挙げられます。

シンガポール政府の産業・雇用変革への取り組み「Industry Transformation Map」や「Job Transformation Map for the Food Manufacturing sector」も決定を後押ししました。国際化、イノベーション、持続可能性、そして国内で質の高い人材の安定的確保に関する明確な指針が示されたからです。
 

Q:シンガポールの立地は、地域統括本部の東南アジア事業運営にどのような利点をもたらしますか?

A:シンガポールに地域統括本部を置くことで、グループ各社の中心に位置するだけでなく、域内へのアクセスもより迅速かつ容易になります。シンガポールは都心部から空港へのアクセスが極めて良好であるだけでなく、チャンギ国際空港の接続性も高く、アジア太平洋地域の各地へ迅速に移動できる地の利を有しています。
信頼性の高いビジネスハブとしてのシンガポールの評判と信用力は、域内のサプライヤーやベンダーとの緊密な連携を図るうえでも、地域統括本部設置の目的に十分に応えるものです。
 

Q:地域統括本部は、明治の東南アジア事業でどのような役割を担っていますか?

A:地域統括本部は現在、アジア太平洋地域の人々に健康的で栄養価の高い製品を提供するため、製品カテゴリーを積極的に拡大しています。現在の域内主力事業は菓子部門です。シンガポールとインドネシアに工場を構え、「ハローパンダ」や「ヤンヤン」などの菓子を生産しています。菓子事業に加え、主にベトナムとタイで、乳児用粉ミルクや即飲タイプの経腸栄養製品などの栄養製品も販売しています。タイとの合弁会社は牛乳やヨーグルトなどを製造・販売しています。
 

Promotional graphic showcasing Meiji Yan Yan snack cup flavours arranged in the shape of a shopping bag, including vanilla, hazelnut, strawberry, cookies and cream, chocolate, strawberry and chocolate, vanilla and chocolate, and Tsukebo chocolate varieties.

様々な味で展開する「ヤンヤン」(メイジセイカ・シンガポールのインスタグラム投稿より許可を得て掲載)

Q:地域統括本部は、グローバル機能の集中化にどのように貢献していますか?

A:一例として、地域統括本部は設立から間もないにもかかわらず、調整役として本社人事部門と協議を重ね、東南アジア子会社の人事面の方針と枠組みを段階的に統一しているところです。現地の人材を積極的に育成し、明治の海外事業計画ビジョンを実現するための正しい一歩であると確信しています。
 

地元研究機関との連携、製品開発能力を積極的に強化


Q:明治の地域統括本部は、製品ラインナップや製造プロセスを強化するために、シンガポールのイノベーション・エコシステムとどのように連携していますか?

A:私たちの課題の一つは、単に日本からの輸入品を販売するだけでなく、現地の消費者ニーズに即した製品開発力の強化です。既存の菓子事業研究開発機能に加え、他の製品カテゴリーでも、研究開発機能の拡充が必要です。

EDBからは、FIRC1、FoodPlant2のような連携可能な研究機関を紹介されました。現在、今後の製品開発に向けて、どのように協力するかで検討を進めています。
 


Q:シンガポールは多文化で多様な人口構成の国ですが、地域統括本部はそれをどのように活用し、アジア人の味覚や好みに合った製品を展開しているのでしょうか?

A:FIRCは多様な背景を持つモニターを募集し、特定のコミュニティを対象とした消費者試食テストの実施が可能と聞いています。例えば、シンガポールにいながらベトナム人消費者を対象としたテストを行うといった具合です。近い将来、シンガポールが持つこのような利点を最大限に活用していきたいと考えています。

東南アジア地域は豊かな歴史的遺産と民族的多様性を持ち、食品と技術革新で大きな付加価値創出の機会があることから、現在、域内官民学連携の構築を検討中です。
 

Packaging design for Meiji Chocorooms snack, featuring mushroom-shaped milk chocolate confectionery with crispy cracker stems on a bright yellow wrapper.

ハラル認証を取得したシンガポール製「チョコルーム(きのこの山)」(メイジフード・アジアパシフィック提供)

シンガポール、ASEAN戦略策定・推進拠点に


Q:シンガポールは明治グループ全体の事業拡大計画にどのような付加価値をもたらすとお考えでしょうか。

A:明治にとってシンガポールはASEAN地域の中核拠点の一つです。50年を超える事業展開を通じて、強固な事業基盤を築いてきました。加えて、長年EDBをはじめとする政府機関から貴重な助言や支援を受けており、シンガポールのみならずASEAN地域全体の事業戦略について、多くの知見を得ています。

シンガポールはASEAN諸国の中でも税制、治安、法制度などの面で安定し、競争力を備えたビジネス環境を誇っており、大きな価値をもたらしていると考えています。明治はシンガポールをASEAN全域を対象とした戦略を策定・推進するための理想的な拠点であると確信しています。
 



Footnote:

1 高等専門学校 シンガポールポリテクニック(Singapore Polytechnic)が運営する食品企業向けの技術支援機関。

シンガポール工科大学(SIT)傘下で、食品製造イノベーションを支援する国内初の小ロット食品生産共有施設。

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