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シンガポール活用セミナー、東京で開催―日本企業の海外展開を加速する拠点戦略

シンガポール活用セミナー、東京で開催―日本企業の海外展開を加速する拠点戦略

Split image comparing cityscapes: Tokyo skyline with Tokyo Tower on the left, and Singapore’s Marina Bay with the Merlion and financial district on the right.

東京都内で3月、セミナー「シンガポールを拠点とした日系企業の地域戦略と組織再編~ASEANビジネスの再構築~」が開かれた。シンガポール経済開発庁(EDB)協力の下、KPMGジャパンおよびKPMGシンガポールが主催した。

KPMGシンガポールのHead of Global Japanese Practice ASPAC星野淳パートナーの冒頭あいさつに続き、EDBのクラレンス・チュア日本・韓国地域局長が「アジアのビジネスハブとしてのシンガポール」について講演した。他にもKPMG FASの五十鈴川憲司マネージングディレクターが日系企業のASEANにおける組織再編の動向、KPMG税理士法人の宮本健一パートナーが税務上の留意点についてそれぞれ発表を行った。
 

Audience of professionals seated in a conference room attending a presentation, with a speaker presenting slides at the front.

セミナー会場に集まった約100人の聴衆

製造業を中心に約100人が会場に集まり、シンガポールや東南アジアの事業環境について理解を深めた。
 

グローバル展開拠点としてのシンガポールに注目集まる

KPMGシンガポールの星野氏は、地政学リスクや保護主義的な動き、デフレ輸出など事業環境は日々変化していると説明した。こうした中、ASEAN市場の成長を確実に取り込むため、企業の合併・買収(M&A)や事業提携を検討したり、事業ポートフォリオを再構築したりする動きのほか、「ASEAN域内の事業展開を加速させるためのシンガポールの活用方法や、地域統括拠点の機能検討などの問い合わせや議論が多くなってきている」と語った。

JETROシンガポールによると、2024年3月時点で経営実態のある日系企業数は約4500社余りに達するという。

チュア局長は、シンガポールは以前から、企業の地域統括拠点となる場合が多かったが、最近では事業部別の機能が置かれたり、執行役員以上の意思決定者が常駐したりする例が見受けられると説明。「シンガポールで多角的な研究開発(R&D)イノベーションや人材育成などを展開できる」と述べた。

背景の一つに、国家研究開発新5カ年計画「リサーチ・イノベーション・エンタープライズ(RIE)2030」がある。シンガポール政府は5年で国内総生産(GDP)の約1%に相当する総額約370億シンガポールドル(以下ドル、約4兆6000億円)の予算を投じる予定で、半導体製造の後工程やエイジングウェルネスが重点分野に含まれる。

Infographic in Japanese showing Singapore’s research and innovation investment growth across phases from 2000 to 2030, alongside a breakdown of the 2026–2030 budget allocation by category.

リサーチ・イノベーション・エンタープライズ(RIE)2030

シンガポールは現地法人が比較的設立しやすく、書類が整っていればオンラインで15分程で手続きが完了する。物流効率にも優れ、通関手続きのほぼ全てをオンラインで完結できる。
 


税制面では、法人税率が17%と世界的に見ても競争力のある水準となっている。租税条約の締結数も多く、近年では企業による投資額の一部を税額控除や現金還付を通じて補助する「還付可能投資控除(RIC)」制度を導入するなど、企業の資本支出管理を支援する措置も充実している。
 

柔軟な事業再編を可能にする制度環境

KPMG FASの五十鈴川氏は、ASEAN地域における日系企業の事業再編の先行きを概観した。ASEAN各国の多くでは事業再編が増加傾向にある一方、シンガポールでは経済的安定性もあり、再編増加の兆候はみられないという。また、シンガポールは各種制度が充実し、事業再編に取り組みやすい環境だとも説明した。 
 

シンガポールの国際準拠税制、企業の海外展開を後押し

企業はシンガポールの促進的で競争力のある税制から恩恵を受けることができる。KPMG税理士法人の宮本氏は、主な利点として、シンガポールの法人税制度におけるキャピタルゲインの非課税措置や、一定条件を満たすシンガポール子会社グループ間で同一年度内の損益を通算し納税するグループリリーフ制度などを挙げた。

シンガポールは国際基準を遵守し、国境を越えた脱税や利益移転の防止・対策のための国際税務協力を支援している。OECD包摂的枠組みのメンバーとして、シンガポールは2025年1月1日から、年間収入が7億5000万ユーロ以上の多国籍企業グループを対象に、グローバルミニマム課税制度に沿った所得合算ルール(IIR)と国内トップアップ税(DTT)を実施している。

日本企業の進出を検討する際の主な利点は、シンガポールで経済価値を生み出す正当な事業活動に対して政府の支援を受けられる、コンプライアンスの整った税務環境で事業を展開できることだ。この規制の確実性は、シンガポールの戦略的立地とビジネスに優しい政策と相まって、国際税務基準への完全な準拠を維持しながら本格的な地域事業の確立を目指す企業にとって魅力的な目的地となっている。

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