税制面では、法人税率が17%と世界的に見ても競争力のある水準となっている。租税条約の締結数も多く、近年では企業による投資額の一部を税額控除や現金還付を通じて補助する「還付可能投資控除(RIC)」制度を導入するなど、企業の資本支出管理を支援する措置も充実している。
柔軟な事業再編を可能にする制度環境
KPMG FASの五十鈴川氏は、ASEAN地域における日系企業の事業再編の先行きを概観した。ASEAN各国の多くでは事業再編が増加傾向にある一方、シンガポールでは経済的安定性もあり、再編増加の兆候はみられないという。また、シンガポールは各種制度が充実し、事業再編に取り組みやすい環境だとも説明した。
シンガポールの国際準拠税制、企業の海外展開を後押し
企業はシンガポールの促進的で競争力のある税制から恩恵を受けることができる。KPMG税理士法人の宮本氏は、主な利点として、シンガポールの法人税制度におけるキャピタルゲインの非課税措置や、一定条件を満たすシンガポール子会社グループ間で同一年度内の損益を通算し納税するグループリリーフ制度などを挙げた。
シンガポールは国際基準を遵守し、国境を越えた脱税や利益移転の防止・対策のための国際税務協力を支援している。OECD包摂的枠組みのメンバーとして、シンガポールは2025年1月1日から、年間収入が7億5000万ユーロ以上の多国籍企業グループを対象に、グローバルミニマム課税制度に沿った所得合算ルール(IIR)と国内トップアップ税(DTT)を実施している。
日本企業の進出を検討する際の主な利点は、シンガポールで経済価値を生み出す正当な事業活動に対して政府の支援を受けられる、コンプライアンスの整った税務環境で事業を展開できることだ。この規制の確実性は、シンガポールの戦略的立地とビジネスに優しい政策と相まって、国際税務基準への完全な準拠を維持しながら本格的な地域事業の確立を目指す企業にとって魅力的な目的地となっている。