荏原製作所
隣国からの水供給を支えるポンプ、マーライオンにも活躍
1962年の水協定に基づき、マレーシアから原水を輸入しているシンガポール。公益事業庁(PUB)が管理するジョホール川水処理施設(JRWW)では、1日最大2億5000万ガロン(約11.4億リットル)を取り込み、処理したうえで国内へ供給している。ここで稼働するポンプの約9割が荏原製作所製であり、その技術が国家の生活基盤を支えている。また、シンガポールの象徴「マーライオン」の噴水にも同社のポンプが採用されている。海水を汲み上げるために特別設計されたポンプが、あの力強い水流を生み出している。
川崎重工
シンガポールMRT開業を支えた日本の車両
1987年のMRT開業時、最初の車両を納入したのは川崎重工を中心とする日本企業連合だった。1986年から1989年にかけて366両、さらに1999年から2001年にかけて126両が納入された。同社はその後も車両供給を続け、約30年にわたり納入および保守を通じて、シンガポールの屋台骨である輸送システムの安定稼働を支え続けてきた。2026年2月には、公共交通運営SMRT Corporation Ltdと鉄道車両の技術および保守最適化に関する協力覚書(MOU)を締結し、900両以上の保守を担う予定だ。
三菱重工
日本に先行した道路課金システムの導入
シンガポールで車に乗れば目にする電子式道路課金(ERP)システムの車載器は、三菱重工が供給している。同社は1995年、陸上交通局(LTA)からERPシステムを受注し、1998年に世界で初めて本格運用が開始された。日本のETCと類似の仕組みだが、日本に先駆けて実用化されたものである。2007年には非接触型カード対応の車載器を受注し、2016年には衛星測位(GNSS)を活用した次世代ERP(ERP2.0)をシンガポールの現地IT企業と共同で受注した。ERP2.0は2027年1月からの本格運用が予定されている。
セイコー
工場開所式には建国の父も出席
セイコーにとって、シンガポールは初の海外生産拠点だ。1976年の工場開所式には故リー・クアンユー元首相が出席。同工場は、ロボット管理を導入した世界初の精密時計工場として当時大きな注目を集めた。リー元首相は後年、日本企業の進出がシンガポールの精密加工産業の礎になったと述懐しており、同社はその象徴といえる。現在もシンガポールのクリーンルーム内の自動ラインで、メカニカルおよびクオーツのムーブメントを生産し続けている。
住友化学
ジュロン島の原点となった、日星政府出資の石油化学プロジェクト
現在、世界有数の石油化学ハブとして知られるジュロン島。その出発点となったのが、住友化学が主導した、シンガポール初のエチレンクラッカーを中心とする石油化学コンビナートである。1970年代、日本政府の海外経済協力基金と民間企業が出資し、シンガポール政府との共同プロジェクトとしてPetrochemical Corporation of Singapore(PCS)が設立された。第一次・第二次オイルショックが続く不透明な経済環境の中で始まったこの挑戦は、エチレンを核に関連産業を呼び込み、現在の化学産業集積の礎となった。このプロジェクトを契機として、日本の化学メーカーの進出が進み、シンガポールは石油化学事業の国際展開拠点の一つとなっている。