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シンガポール半導体業界の展望

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エレクトロニクス業界の成長率がここ最近の高水準から低減していることを受け、一部のアナリストは、世界的に半導体業界で繰り返される浮き沈みのサイクルからシンガポール経済を保護する必要があると考えています。

しかし、高付加価値の半導体業界が消失することを懸念しているわけではなく、むしろ多くのアナリストが、半導体業界はサプライチェーンの変動にもかかわらず存続するだろうと言います。

エレクトロニクス業界製造生産高における半導体部門の割合は、2000年は31.9%でしたが、2017年は72.1%に膨らんでいます。とはいえ、幾分かの不安定さは否めません。最近の工業生産高の実績は、エレクトロニクス業界全体と半導体部門の両方でシンガポールの工場生産高の伸びが低減していることを示しています。2018年第1四半期の電子機器の輸出高は、前年同期比7.9%減でした。米国情報技術調査諮問会社ガートナーは、世界の半導体売上高の年間成長率は前年度の22.2%から7.5%に減速し、4,510億USD(50兆610億円)になると見込んでいます。

RHB証券の中小型株責任者のジャリック・シート(Jarick Seet)氏は「一部の半導体企業は堅調なので業界全体に不況が広がるまでには時間がかかると思うが、確かに世界的に低迷しており、今後1~2四半期は特に収益においてそれがさらに顕著に表れるだろう」と述べています。

INGのアジア太平洋チーフエコノミストで研究開発本部長のロブ・カーネル(Rob Carnell)氏は「幸いにも現時点では他部門が景気の停滞を押しとどめていますが、それが維持できなくなった場合、輸出高とおそらく国内総生産(GDP)も悪影響を受けるでしょう。シンガポール金融管理庁(MAS)は、最近の実効為替レートのわずかな上昇について再検討する必要があるだろう」とビジネスタイムズ紙に語っています。

シンガポールの製造業は、エレクトロニクス、化学、バイオメディカル、精密エンジニアリング、輸送エンジニアリング、一般製造などに分かれています。エレクトロニクスには半導体のほかに、コンピュータ周辺機器、データストレージ、情報通信機器・家電機器、その他の電子モジュールおよびコンポーネントといった部門があります。半導体はエレクトロニクスの他部門よりも周期的に浮き沈みが発生しやすい傾向があり、この変動によるダメージを緩和する1つの方法は、半導体から他の電子部品に生産をシフトすることです。しかし、SIMグローバルエデュケーション校のシニア講師であるタン・カイブーン(Tan Khay Boon)博士は、それは研究開発への多額の投資と長期的なコミットメントが必要となるだろうと注意喚起をしたうえで、「エレクトロニクス業界の変動による影響を緩和するには、医療技術やエンジニアリングなど製造業の他分野に移行する方が効果的かもしれない」と言います。

オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の東南アジア・インド担当チーフエコノミストでシンガポールを拠点としているサンジャイ・マトゥール(Sanjay Mathur)氏は、韓国や台湾などの半導体メーカーを見ると、需要と価格の条件に脆弱であることがわかると指摘し、「安定した成長率を維持するには、雇用をもたらす他の産業が発展する必要があります。両国とも、サービス部門は比較的発展していません」と述べました。

近年のシンガポールの経済成長は、より多くのサービス部門を網羅するようになっています。タン博士は、サービス部門へのさらなる転換は製造業の空洞化を招く恐れがあると懸念しています。

ユナイテッド・オーバーシーズ銀行のエコノミスト、フランシス・タン(Francis Tan)氏は、現在の半導体の低迷は「サービス部門の成長例を見ると、さほど深刻に捉える必要はないように思う」と語りました。しかしながら、半導体部門の長期ブル相場は今後の「構造的な上昇傾向」を予測するものだとし、スマートフォン販売が苦戦したとしても、IoTデバイスなど電化製品に対する需要は依然としてあると述べました。

他の専門家もこれに同意しており、フィリップ証券研究責任者のポール・チュー(Paul Chew)氏は「スマートフォンと暗号通貨の需要が軟化したことにより、半導体の売上高が頭打ちになった可能性があります。しかし、自動車、IoT、電子タバコ、照明、半導体ドライブというように最終需要が幅広い用途にわたるため、構造的な需要は依然として堅調です」と述べています。

DBS銀行シニアエコノミストのアービン・シア(Irvin Seah)氏は「新たな技術が浸透するプロセスとして変化が起こるということは、エレクトロニクス業界だけでなく、シンガポール経済全般に通じることです。特に近年はIoTのような新技術が続々と登場していることから、新しい部品やコンポーネントの需要がより加速されるでしょう。その流れに乗れるかは、メーカーがバリューチェーンをどのように管理したいのか、製造拠点がシンガポールにあるのかなどといった要素によって左右されます」と述べています。同氏は、1970年代の家電部品からその10年後のパソコンの登場まで、エレクトロニクスの生産動向の進化を挙げ、「変化こそが業界、そしてシンガポール経済の発展の要となる」と語りました。

また、タン氏およびシア氏は、昨年の成長は、低迷した2015年と2016年のエレクトロニクス部門のベース効果でもあることも指摘、シア氏は「今は正常化に向かっている」とし、「シンガポール経済を再編する過程で、新たな部門も生まれ多様化が進んでいます。エレクトロニクス業界は衰退するかもしれません。しかし、全体的な成長が実現できるのであれば、懸念する必要はないのです」と述べました。

マトゥール氏は、シンガポールは既に製造業の主軸をエレクトロニクスから他のさまざまな分野へ移してきていると言います。

「しかし、医薬品など他分野では主に2つの問題があります。まずは雇用のポテンシャルが低いこと、そして特定製品の生産量が頻繁に変わるため不安定であることです。このことが付加価値の水準に影響を及ぼしがちです」と同氏は語りました。 エレクトロニクス部門がどのような位置づけになろうとも、製造業自体が廃れることはありません。シンガポール独立時にGDPの14%を占めた製造業は、経済の柱として成長してきました。過去30年間にわたり、製造業は一貫してシンガポール経済の約5分の1を担ってきました。シンガポール経済開発庁(EDB)のリム・コックキアン(Lim Kok Kiang)副次官によると「中長期的に」その割合を維持することに政府としてコミットしているとのことです。同氏は、半導体業界は「輸出志向であり、世界的な需要と業界の景気循環によって活性化される」と指摘しています。しかし、新しい技術の波に乗る用意もできています。

「これらの用途の普及により、長期的には半導体部門の需要拡大とイノベーションの進展が期待されています。シンガポールの半導体企業は、そのような成長を達成するために能力拡張に投資しています」と同氏は述べました。さらに、シンガポールの製造業は、各業界の景気循環がそれぞれの市場動向に応じて変化しても「安定した持続可能な成長」を実現できるよう多様化しているともコメントしています。

いずれにしても、半導体業界における周期的な浮き沈みは緩和される見込みです。シンガポール半導体業界協会会長のCK・タン(CK Tan)氏は「これは半導体業界では普通のことです。この業界は定期的に浮き沈みを繰り返すものですが、昨今はその周期が短く、浮き沈みの度合いも比較的緩やかになってきています」と同紙に語りました。

出典: シンガポールプレスホールディングス(SPH)

1米ドル(USD)=111円(2018年9月12日現在)

主力産業一覧

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  • シンガポールは、アジア市場への玄関口であり、世界トップクラスの消費者向け企業の多くが、環太平洋の拠点としてシンガポールを活用しています。

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