1. 2025年経済成長率を1.5~2.5%に上方修正
シンガポール貿易産業省(MTI)は、2025年経済成長率予想を1.5~2.5%と発表した。5月の0.0~2.0%からは上方修正となった。
25年第2四半期の実質国内総生産(GDP)上昇率は前年同期比4.4%と、前期の4.1%から上昇した。
25年下半期のシンガポールの経済成長は上半期と比べて鈍化が予想されるが、航空機保守・修理・整備(MRO)産業の高付加価値化への移行が続く交通エンジニアリング分野や、人工知能(AI)関連半導体を生産する半導体製造業への設備投資継続で精密エンジニアリング分野などでは見通しが明るいという。
2. アルケマ、製造拠点大規模拡張計画発表
仏化学大手アルケマは、2000万米ドル(約30億円)を投じて最新鋭の総合製造拠点を拡張する計画を発表した。2026年第1四半期の稼働開始時には、バイオマス由来の透明ポリアミドRilsan Clearの生産能力が3倍になると見込まれる。アイウェア、医療機器、コンシューマーエレクトロニクス分野の市場拡大を目指す。
3. 日本ゼオン、低燃費タイヤ向け高性能合成ゴム生産設備完成
日本ゼオンがシンガポール西部ジュロン島生産施設で建設していたS-SBR(溶液重合スチレン・ブタジエンゴム)の高性能グレード用生産設備が完成した。2026年から市場供給を開始予定。
S-SBRは、自動車の燃費向上に貢献する合成ゴムで、主に低燃費タイヤに使用される。燃費向上だけでなく、粉塵発生を抑制し大気汚染防止に貢献する効果もある。
日本ゼオンはすでに山口県周南市の徳山工場でS-SBR生産を行っているが、シンガポールでも生産を開始することで、年間12万5000トンのS-SBRを市場に供給可能になる。
4. クラレ、アジア市場対象の技術支援拠点を開設
クラレは2025年9月、シンガポールに「Kuraray Asia Pacific テクニカルセンター」を開設した。アジア市場で需要が拡大するポバール樹脂、EVOH樹脂、活性炭の技術支援を行い、材料評価・解析機器を備えて顧客ニーズに対応したソリューションを提供する。顧客との共同開発を通じて新たな価値を創出する場としても機能する。
5. 五洋建設、西部トゥアス地区の大型埋め立て工事を受注
五洋建設は、シンガポール工業団地運営政府機関JTCから、西部トゥアス北部地区の大型埋め立て工事を約335億円で受注した。工事期間は2030年7月までの5年間。
事業名「Proposed Reclamation at Northern Tuas Basin」は、1960~70年代にかけて建設されたジュロン工業団地とトゥアス工業団地の再生プロジェクトの一環として実施。埋め立てにより約172ヘクタールの新たな工業用地を創出し、将来の土地需要に対応する。五洋建設は埋め立て、しゅんせつ、排水溝建設、既設構造物の撤去を担当する。
6. 丸紅、Senoko Energyへ追加出資
丸紅は、発電事業会社Senoko Energyに追加出資し、持ち分比率が30%から50%となった。
九州電力、関西電力、国際協力銀行が保有していたSenoko Energyの持ち株会社Lion Powerの株式を取得する形での出資となる。今後はSenoko Energyの残り株式50%を保有するシンガポール政府系複合企業Sembcorp Industries傘下のSembcorp UtilitiesとSenokoを運営する。
7. 大崎電気工業、次世代スマートメーター海外展開開始
大崎電気工業の海外事業部門でシンガポールの子会社EDMIは、新しい電力計測・監視・制御ソリューション「NEOS Solution」を開発し、受注を開始した。
NEOS Solutionは、各世帯に設置された多数のスマートメーターを遠隔で一元管理するとともに、計測したデータを収集・処理・変換し、電力会社の料金請求、使用状況の監視、設備保守などのシステムと連携する。
NEOS SolutionはEDMIの中核商材で、オセアニアで高い市場シェアを得ている。今後は段階的に欧州、アジアでの市場投入を予定している。
8. NEC、海底ケーブルにシステム供給契約
日本電気(NEC)は、東アジアを縦断する大容量光海底ケーブル「Asia United Gateway East (以下AUG East)」へのシステム供給で、シンガポール通信大手Singtelなど9社からなる企業連合AUG Eastと契約を締結した。日本からは他にも、丸紅やセコムが出資するアルテリア・ネットワークスが参加している。
AUG Eastは、日本、台湾、韓国、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、シンガポールを結ぶ総延長約8900キロメートルの光海底ケーブルで、2029年9月までの完成を目指している。アジア地域内の既存海底ケーブルシステムを補完し、地震や火山活動などの自然災害でも、ネットワークの多様性による安定した通信の確保に寄与する。
9. マイクロソフト、国内300社のAI導入を支援
マイクロソフトと企業デジタル化推進支援のシンガポール政府機関DISGは、国内300社のAI(人工知能)変革を推進する事業「Agentic AI Accelerator Program」開 始を発表した。今後12カ月にわたり、シンガポールに拠点を置く300社に最高25万シンガポールドル分のマイクロソフトのクラウドサービス「Azure」で使用可能なクレジットやAI訓練、ツールなどを提供する。
マイクロソフトはさらに、選ばれた企業がマイクロソフトの技術提携先とエージェント型AI導入ロードマップ(工程表)を共同開発するためとして、最高70万ドルの支援も提供する。
政府はすでに企業のエージェント型AI導入支援「Enterprise Compute Initiative」として1社あたり最高10万5000ドルの助成を発表している。