Q:現在の主要産業は。
チュア(以下A):シンガポールは世界の先進製造業で極めて重要なハブであり、半導体、バイオ医薬品、メドテック(医療技術)、精密機器、航空宇宙などの分野に強みを持つ。半導体は世界生産の約10%を占める。航空宇宙産業では130 社超が拠点を構え、世界のMRO(整備・修理・運用)市場の10%に寄与している。
われわれはサービス産業も育成しており、シンガポールはアジアの地域統括本部の立地先として最も選ばれている。研究開発(R&D)拠点も多い。サプライチェーン(供給網)の管理に適した立地にあるだけでなく、サステナビリティー(持続可能性)や人工知能(AI)といった成長分野での機会が豊富なことがその理由だろう。
Q:政府として特にどの分野に投資を集中しているか。
A:新たな成長エンジンであるAIだ。2023 年12 月に「国家AI戦略2.0(NAIS 2.0)」が発表されて以来、50社を超える先進的な企業がAIのセンター・オブ・エクセレンス(CoE)をシンガポールに設置した。
経済全体へのAI導入を加速させるため、政府としても技術基盤の強化や人材の育成、エコシステムの構築を急いでいる。一例を挙げると、シンガポール政府はグーグル・クラウドと「AIトレイルブレイザーズ」という取り組みを実施した。84 の組織がグーグル・クラウドの生成AIツールを無料で使い、AIソリューションを試作・テスト・導入するのを支援する内容で、コンテナ船事業会社オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)は社内の業務負荷軽減を目的にチャットボットを作成した。
また昨年は政府のAI活用促進機関、AIシンガポール(AISG)とソニーリサーチが覚書を締結し、東南アジア諸言語向けの大規模言語モデルの高度化に取り組んでいる。