RIE2030の下、A*STARは研究とその実用化を推進することで、高品質で商業化可能なイノベーションを生み出す基盤強化を進めている。診断技術開発研究所(DxD Hub)、実験的薬剤研究開発センター (EDDC)、核酸医薬品開発構想(NATi)などの基礎研究を実用化につなげるトランスレーショナル・プラットフォームは、開発リスクを低減し、市場投入までの時間を短縮するとともに、研究者と業界パートナーや投資家を結び付けている。
人的潜在力:健康と医療の改善への貢献
シンガポールで最大かつ最も包括的な出生コホート研究の「Growing Up in Singapore Towards healthy Outcomes(GUSTO)」は、乳幼児期および家族の健康に関するシンガポール取り組みに役立つ貴重な研究データを生み出している。その研究結果は、妊娠糖尿病検査や幼児のスマホ・タブレット使用時間と食習慣に関する国の政策やガイドラインの基になっている。
これらの研究を基に、A*STARは包括的思春期研究プログラム (IARP)を支援している。これは青年期発達を左右する生物学的、心理社会的、デジタル、環境的要因の理解を深めるため、GUSTOを含む6つの大規模コホート研究を統合したものだ。得られた知見は、より健康的な人生の歩み、就労準備態勢、長期的な社会的成果を支援する、エビデンスに基づく介入策の指針となる。
デジタル技術:AIと量子技術の責任ある拡張
AIや量子技術は生産性と競争力の基盤となりつつあるが、その価値は実社会での実装可能性と信頼にかかっている。シンガポール国家量子局(National Quantum Office)と量子コンピューティングの米クオンティニュアムは、2026年からシンガポールに世界最高水準の量子コンピュータ「ヘリオス」を設置するほか、応用研究、人材育成、および産業関連の量子アプリケーションの推進を目的とした新たな研究開発・運用センターも開設する。
RIE2030に沿い、A*STARはAIエンジニアリングと量子技術の実用化能力を強化し、組織が最先端の研究開発成果を安全かつ責任ある形で大規模展開可能なソリューションへと転換できるよう支援する。
脱炭素化:研究と実社会への導入をつなぐ
都市課題解決と持続可能性に関する研究は、よりサステナブルで強靭なシンガポールの実現に貢献している。実際の産業環境下で革新的なソリューションを機能させるため、A*STAR傘下研究機関、化学・エネルギー環境持続可能性研究所(ISCE²)が提供するジュロン島の実証基盤「Low-Carbon Technology Translational Testbed (LCT³)」では、企業が炭素利用、水素、持続可能な燃料などの低炭素技術を実際の産業環境で試験・大規模展開することが可能だ。
LCT3は、技術的なリスク軽減や実装までの期間短縮で、シンガポールの業界主導型の低炭素研究開発・イノベーション拠点としての地位を強化している。
人材:イノベーションの原動力
人材は常にRIEエコシステムの基盤だ。A*STARは2001年以降、1900人以上の博士研究者を育成し、そのうち80%以上が学界、公共研究機関、産業界を通じてシンガポールのRIEエコシステムで活躍している。