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シンガポールの370億シンガポールドル研究・イノベーション投資が生み出す実社会への影響

シンガポールの370億シンガポールドル研究・イノベーション投資が生み出す実社会への影響

シンガポール政府の国家研究開発新5カ年計画「RIE2030」の下、科学技術研究庁(A*STAR)は、半導体からメドテック(medtech)、デジタル技術に至るまで、先端研究とイノベーションを牽引するシンガポールの能力を強化する。

An illustrated graphic of research and innovation facilities labeled A*STAR, with text highlighting “Research, Innovation and Enterprise 2030” and a focus on strategic research impact.

シンガポールは、激化する世界競争、人口動態の変化、気候変動による圧力、急速な技術革新に対応中だ。住民の健康改善や製造業の競争力維持、脱炭素化の加速、信頼性の高いデジタル能力の構築に至るまで、研究活動をいかに効果的に実用化するかが私たちの未来に大きく影響する。

国家研究開発新5カ年計画「リサーチ・イノベーション・エンタープライズ(RIE)2030」(外部サイト・英語)は、インパクトの大きな分野に重点を置き、研究成果の市場導入を加速させるとともに、長期的な競争力を支える人材基盤を育成している。

科学技術研究庁(A*STAR)はRIE2030に沿い、シンガポールで科学的発見と産業界および社会のニーズを結びつけるための中心的役割であり続ける。A*STARは、共用研究プラットフォームの構築、実用化へのプロセス強化、産官学の連携促進を通じて、研究の卓越性を実社会の課題解決策へと転換させている。
 

半導体:グローバルバリューチェーンの重要拠点としてのシンガポール
 
A technician in a cleanroom suit operating semiconductor manufacturing equipment, carefully handling a component inside a controlled lab environment.

A*STARとシンガポール経済開発庁(EDB)が主導する重点戦略「半導体RIEフラッグシップ」は、付加価値の高い研究開発と先端製造の拡大を通じて、世界の半導体研究開発エコシステムでのシンガポールの役割を強化する。また、半導体イノベーションを通じて、ディープテック系スタートアップや地元企業の事業規模拡大を可能にする。

この分野でのA*STARの機能を示す例として、近年のシリコンフォトニクス技術の進展を目的としたグローバルファウンドリーズとの協業がある。高度な研究開発能力を活用して製造能力の拡大を実現、サプライチェーンの強靭性を強化する。そして次世代半導体バリューチェーンでのシンガポールの地位強化を目指す。
 

バイオメドテック・バイオものづくり:科学を世界的ベンチャーへ展開

シンガポールのバイオメドテック分野のエコシステムは着実に発展している。A*STAR から派生したがんの早期発見技術開発新興企業ミレックサス(Mirxes)やLucence、Respiree、Nuevocorなどが世界市場で商業的な成果を見せている。
 


RIE2030の下、A*STARは研究とその実用化を推進することで、高品質で商業化可能なイノベーションを生み出す基盤強化を進めている。診断技術開発研究所(DxD Hub)、実験的薬剤研究開発センター (EDDC)、核酸医薬品開発構想(NATi)などの基礎研究を実用化につなげるトランスレーショナル・プラットフォームは、開発リスクを低減し、市場投入までの時間を短縮するとともに、研究者と業界パートナーや投資家を結び付けている。
 

人的潜在力:健康と医療の改善への貢献

シンガポールで最大かつ最も包括的な出生コホート研究の「Growing Up in Singapore Towards healthy Outcomes(GUSTO)」は、乳幼児期および家族の健康に関するシンガポール取り組みに役立つ貴重な研究データを生み出している。その研究結果は、妊娠糖尿病検査や幼児のスマホ・タブレット使用時間と食習慣に関する国の政策やガイドラインの基になっている。

これらの研究を基に、A*STARは包括的思春期研究プログラム (IARP)を支援している。これは青年期発達を左右する生物学的、心理社会的、デジタル、環境的要因の理解を深めるため、GUSTOを含む6つの大規模コホート研究を統合したものだ。得られた知見は、より健康的な人生の歩み、就労準備態勢、長期的な社会的成果を支援する、エビデンスに基づく介入策の指針となる。
 

デジタル技術:AIと量子技術の責任ある拡張

AIや量子技術は生産性と競争力の基盤となりつつあるが、その価値は実社会での実装可能性と信頼にかかっている。シンガポール国家量子局(National Quantum Office)と量子コンピューティングの米クオンティニュアムは、2026年からシンガポールに世界最高水準の量子コンピュータ「ヘリオス」を設置するほか、応用研究、人材育成、および産業関連の量子アプリケーションの推進を目的とした新たな研究開発・運用センターも開設する。

RIE2030に沿い、A*STARはAIエンジニアリングと量子技術の実用化能力を強化し、組織が最先端の研究開発成果を安全かつ責任ある形で大規模展開可能なソリューションへと転換できるよう支援する。
 

脱炭素化:研究と実社会への導入をつなぐ

都市課題解決と持続可能性に関する研究は、よりサステナブルで強靭なシンガポールの実現に貢献している。実際の産業環境下で革新的なソリューションを機能させるため、A*STAR傘下研究機関、化学・エネルギー環境持続可能性研究所(ISCE²)が提供するジュロン島の実証基盤「Low-Carbon Technology Translational Testbed (LCT³)」では、企業が炭素利用、水素、持続可能な燃料などの低炭素技術を実際の産業環境で試験・大規模展開することが可能だ。

LCT3は、技術的なリスク軽減や実装までの期間短縮で、シンガポールの業界主導型の低炭素研究開発・イノベーション拠点としての地位を強化している。
 

人材:イノベーションの原動力

人材は常にRIEエコシステムの基盤だ。A*STARは2001年以降、1900人以上の博士研究者を育成し、そのうち80%以上が学界、公共研究機関、産業界を通じてシンガポールのRIEエコシステムで活躍している。
 


A*STARは将来を見据え、量子コンピューティングや半導体などの分野で新たな奨学金を通じて地元人材を育成している。同時に「Entrepreneurial Investigatorship」や「Singapore Research Attachment Programme」などの取り組みを通じて、海外から研究者や起業家人材をシンガポールに迎え入れている。
 

本記事はA*STARのLinkedIn掲載記事(外部サイト・英語)を許諾を得て翻訳したものです。詳細はwww.a-star.edu.sg をご覧ください。

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